金型・部品加工業専門コンサルティング

金型・部品加工業専門コンサルティング(加工コンサル)は、金型メーカーや、マシニングなどの機械加工業を専門とする経営コンサルタント事務所です。

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株式会社 新美利一鉄工所のコンサルティング事例(2017年7月号掲載)

株式会社 新美利一鉄工所のコンサルティング事例(2017年7月号掲載)

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本号で紹介する加工メーカーは、創立は大正15年から続く、老舗の溶接製缶メーカーの(株)新美利一鉄工所(愛知県岡崎市 TEL0564-46-2955)である。同社は、永年培った職人技術と、最新のレーザー切断やレーザー溶接などを駆使し、二百を超える多くの顧客の要望に応えるものづくりを行っている。

写真1 同社で製作している溶接板金製品の一例

写真2 昨年同社が導入した機械設備の一例

 

同社の強み

同社の強みは次のようなものがある。

  1. 図面で数値化されていないような、曖昧で漠然とした顧客の要望についても、形にできる柔軟なものづくり技術がある。
  2. 職人によるアナログ技術をベースとしながらも、その時々で近隣の同業他社がまだ導入していない加工設備を、常に先行して導入している。
  3. 極めて短納期の要望に応えていける体制を持っている。

 

上記3つに代表される同社の強みにより、同社を仕入先とする発注顧客の「困りごと」を解決するようなものづくりを日々行っている。

これは、先代社長である新美広治会長の理念でもある。

 

ところで筆者は、加工サプライヤーには、次の3つの戦略が必要だと考えている。

  1. 海の向こうの半分の値段で加工するメーカーに対抗できる強い顧客メリットを持つ。
    例えば、超がつく短納期対応など。
  2. 顧客の手配業務負担を軽減させるワンストップ受注を行う。例えば、材料手配から機械加工、熱処理、表面処理、塗装など、部品の完成まで一貫対応で受注する。
  3. できるだけ多くの顧客を持つ。需要の波の谷間を埋められる多くの受注窓口を持つ。

 

こうした方針がとれるかどうかで、筆者の拠点である中部地方では、仕事が集まる会社と、そうでない会社の2極化が起こっている。

 

この点、同社はまさに上記の全てを実行しており、顧客の数は実に二百を超えている。

 

事業承継による変革

平成28年9月、現社長である新美剛一氏へ事業承継が行われ、3代目の代表となった。

 

また、これまでフラットな組織で事業を行ってきたが、現在、従業員は27名と増え、納期管理など経営層が個々の全ての従業員までコントロールを行うには無理が出てきた。

 

そこで今年4月、2つの管理職を設け、日下石 智彦氏を工場長、兵藤 至氏を工長として任命、これまでのフラットな職人集団から、チームとしての成果を目指す企業体へと変革させている。

 

新たに管理職となった2名についても、プレーイングマネジャーとして、これまでのイチ職人としての技能だけなく、管理職としてのマネジメント能力も期待されるところである。

 

同社ならではの課題(コンサルティング前の課題)

同社のものづくりは、そのほとんどが一人完結方式であり、製造現場の個々の従業員は、自分が受け取る製品図面に基づき、材料の切断から溶接、最後の仕上げまで、全て自分で受け持つ。

 

作り手の従業員が直接、顧客の発注担当者と打ち合わせやクレーム対応をすることも珍しくない。こうした点にやりがいを感じている者も多い。

 

こうした点は、ここ最近、分業化が進む金型メーカーとは異なるところである。とかく金型の短納期・低コスト化に対応するため、積極的に効率化を図る金型メーカーとは、ある意味、相反するスタイルでもある。

 

しかし、金型メーカーが抱える悩みと同様、個々の従業員に求められる技術スキルが高いため、まともに一人前に仕事ができるようになるには多くの時間がかかる。

 

また、採用活動については地域性の問題もある。一般的に景気が良いとされるここ中部地方でも、三河地域は大手有力メーカーが多く存在し、営業活動には事欠かないものの、逆に採用活動については、企業の大小にかかわらず激戦区になってしまう。

 

そうした問題もあり、これまで同社は、採用・育成については計画的な活動を行うことができず、場当たり的になっていた。

 

コンサルティングで取り組んだこと

先代社長である広治会長は現役の職人としてプレーイングマネージャーの面があり、今も現場に立つことも多い。逆に、現社長の剛一氏は、日々のトップセールスに余念がない。

 

そのため同社は、その事業規模の割には、経営層が集まり会社運営について話し合うといった、いわゆる経営会議といえるような場はこれまでは無かった。

 

そこでまずは、筆者とともに毎月1回の経営会議の場をつくり、組織体制、採用者への安全教育・技術教育、管理職へのマネジメント教育などについて整備していくことにした。

 

特に採用者については、本来必要となる安全教育を行い、業務に必要な知識・技能については、スケジュールと内容を取り決めた計画に沿って習得させるべきである。

 

しかしながら、同社ではこれまで、短期的視点のOJTに留まっていた。

 

この点は多くの金型メーカーも同様で、新規採用者はマシニングなど機械加工の担当者になることが多いが、金型全体の製造スキルまで習得するのは一体いつになるのか、本人自体、全く把握していないことが多い。

 

こうした方針のうえでは、働く本人が長期的視野で、ものづくりに取り組むことができず、他の業種や、雇用条件の違いによって簡単に転職してしまうことも少なくない。

 

同社においても同様で、こうした課題に対応していくためには、これまでの職人集団としての風土を変革させ、会社組織として計画的に、採用・育成・定着の3活動を行っていく必要がある。

 

今年新たに管理者となった2名も同様で、「管理職」という役割の勘違いについて勘違いさせてはならない。

 

勘違いとは、人に命令できる、指示ができるといった、何か権限が与えられるものと勘違いしている場合があり、そもそもマネジメントというものを理解していないことが多い。

 

こうした勘違いは、生産性の低下や、部下のモチベーション低下・不満につながり、組織としての問題の一因になることが多い。

 

まるで部下を使い走りのように扱うような管理職はすでに過去のものであり、部下の1人あたりの生産性をいかに高めていくかのコントロールを行うことが本来の管理の在り方である。

 

同社で新しく管理職となった2名についても、これまでのプレイヤーとしてのスキルに加え、マネジメントに必要な心構えと知識が必要となる。この点についても同社は、筆者と共に計画的な管理者教育を行っていく。

 

また、従業員への技術教育についても、これまでのOJTに加え、OFF-JTも活用しながら、同社の強みである溶接職人の育成を図っていく。

 

これにより同社は、新人からベテラン、管理職まで幅広く、階層に応じた包括的な教育体制を構築することができ、同社で働く者は長期的な視野で、技術者としてのやりがいをもって働き続けることができる。

 

今後の同社の戦略

同社で作られている製品から、ソフト面である職人技術がクローズアップされがちであるが、経営層はハード面である機械設備も同じくらいにセールスポイントだと考えている。

 

同社は、近隣の製造業者の中でも、いち早く新しい設備を先行導入することにこだわっており、開発が積極的に行われているレーザー加工技術の動向を見定めながら、次の導入設備を検討している。

 

筆者との取り組みにより、ソフト・ハードの両面で、業界を先行して進もうとする同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

 

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