金型・部品加工業専門コンサルティング

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株式会社 新美利一鉄工所のコンサルティング事例(2018年5月号掲載)

株式会社 新美利一鉄工所のコンサルティング事例(2018年5月号掲載)

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本号で紹介する加工メーカーは、以前登場した溶接製缶メーカーの(株)新美利一鉄工所(愛知県岡崎市 TEL0564-46-2955)である。

 

同社は、図面で書き表せないような抽象的な形状の製品であっても柔軟な対応ができ、また同業他社が受注を断るような短納期の依頼であっても対応ができるといった技術力に強みを持つ。

 

そのような同社がここ最近力を入れているのが、フライス加工を中心とする機械加工である。同社の扱う製品は、CO2アーク溶接で組み立てた後、他部品と組み合わせるなどの用途のため、フライス加工やキリ穴、ねじ穴などを追加工する。

 

これまで同社の機械加工は、そのほとんどが外注対応であったが、従来を超える短納期対応や品質確保を目指すため、2年ほど前からその内製化を強化している。

 

そのためのフライス加工設備の充実を進めているが、その導入設備が溶接製缶業界では非常にユニークであるため、本号ではそのあたりの戦略などについて紹介をしていきたいと思う。

 

同社の機械加工の強み

他の機械加工メーカーと比較した同社の強みとして、前工程から一貫して社内対応できる点がある。

 

溶接製缶メーカーから見ると、フライス加工は全く異なるノウハウであるため、簡単な追加工程度であれば自社で行うが、大きな製品やある程度の精度を要する製品のフライス加工まで自社対応しているメーカーは少ない。

 

また、機械加工メーカーから見ると、溶接作業そのものは技能資格もありOFF-JTなどで習得することも可能であるが、仮付けによる組み立てから、熱変形・収縮まで考慮した本溶接までといった作業は、経験に裏付けされた実績がなければ一朝一夕にできる作業ではない。

 

こうした事情から多くの中小メーカーでは、両方を高いレベルで行っている企業は少ない。

 

同社は、2年前のマシニング加工技術に長けた小坂 伊佐三氏の入社をきっかけに、急速にフライス加工の生産体制を整備、拡大している。

 

また、溶接製缶業での同社の強みである、5台のレーザー加工設備をフライスの前工程に活かし、特に、溶断後にフライス加工を行うような製品については、同業他社には真似できない短納期化と低コストを実現している。

 

同社ならではの特殊機械の導入

そもそも溶接製缶品のフライス加工には、次のような難しさがある。

  • 段取り:6面フライスした鋼材のように、溶接製缶品にはバイスでしっかり挟める製品が少ない。溶接製缶品は10ミリ前後の板を箱状に組み合わせた筐体であるため、油圧バイスなどの段取りが不可能であり、しかも、いびつな形状の製品が多いため、加工そのものよりも段取りや冶具製作の方が難しい。
  • 加工ビビリ:板を張り合わせた製品が多いためワーク剛性が弱く、加工ビビリが起こりやすい。また前述したように、いびつな形状が多いため、しっかりとクランプできない場合にはやはり加工ビビリが起こりやすい。
  • 突き出しの長い工具:いびつな製品のフライス加工は、ワーク上面から深く入りくんだ場所への加工を余儀なくされることが多く、細く突き出しの長い工具で加工することも多い。突き出しの長い工具のフライス削りは、工具たわみや振れなどが起こりやすく、加工精度や面粗さを確保することが難しい。

 

こうした難しさがある溶接製缶品のフライス加工であるが、被削材の硬さとしては、そもそも炭素の多い鋼材は溶接自体が厳しくなるため、業界として硬い高炭素鋼はほとんど使われてこなかった。

しかし昨今は、硬い高マンガン鋼も使われることもあり、切削抵抗の高さという点においても、従来よりも難しさは増している。

 

溶接製缶品のフライス加工の難しさに対応した機械選び

こうした加工上の背景から同社は、溶接製缶を扱う同業他社では持っていない、ユニークな機械を導入している。

 

元々、NCフライス盤は持っていた同社であるが、自動機としてまず、一般的な立形マシニングセンターを導入した。そして次に導入したのが、横幅6,050ミリの極めて横長なテーブルを持つイワシタ社製の長尺NC加工機である。

図1 同社が導入した長尺NC加工機

この設備は、同社が得意としている長い角パイプ材の溶接品への対応に強く、またニッチなテーブルサイズを持つため、ピンポイントでこの機械でしか加工できない加工需要も多くあるはずである。

 

また今年新たに導入したのが、ヤマザキマザック社の5軸マシニングである。 同社が扱う製品に多いいびつな加工品に対応しやすく、フレキシブルなクランプのやりやすさ、多方面からの切削・穴加工など、溶接製缶品の加工でこの機械を使えるメリットは非常に大きい。

図2 同社が今年導入した5軸マシニングセンター

 

同社は、こうした同業他社や協力メーカーにはない設備を導入することで、短納期、難加工品への対応で差別化を図り、競争力アップを図っている。

 

同社のコンサルティング前の課題

こうした取り組みを行う同社であるが、経営上の課題として、こうした新事業の採算性や、人事面での評価・育成をどのように進めるべきかよくわからないといった悩みがあった。

 

同社はこれまで溶接製缶一本で事業を行ってきており、溶接技術であれば、事業性や従業員の技能も評価ができるが、これまで自社で経験がない機械加工については、業界相場の利益率や、技術者の基準となる技術とそれに伴う給与相場などがわからなかったため、事業拡大当初はこのまま進めていって良いものか不安をぬぐえなかった。

 

同社のコンサルティング内容

そこで同社のコンサルティングを行っている筆者は、①事業の採算性評価、②従業員の評価・育成、③新事業のPR戦略について、アドバイスを行った。

 

  • 事業の採算性評価:部門別で損益を評価する案をアドバイスした。機械加工で発生する主な変動費は、材料費や治具費、消耗工具などがあり、固定費は人件費や電力費、ツールホルダーなどの工具費がある。これらを月次で管理し、事業単体での採算性を評価する。
  • 従業員の評価・育成:要素技術ごとに分解した項目を使ってスキルマップ表を作るアドバイスをした。また、1年後、3年後、5年後などを想定した中期スキルマップ表を合わせて作ることで、教育計画を作ることができる。
  • 新事業のPR戦略:同社のユニークな機械設備を外部に発信する方法として、動画によるわかりやすいPRを行うアドバイスをした。なお、同社のホームページは筆者の事務所がサポートさせていただいている。

 

今後の同社の取り組み

同社の経営上の課題として、溶接技術者の新陳代謝の促進がある。同社の強みである、柔軟性の高い溶接技術は、個人技能への依存が大きく、一人前の技術者に習熟するまでに時間がかかる。

 

そうした事情からこれまで経験者を中途採用することが多かった同社であるが、本年度から初めて工業高校を卒業した新卒者(中根 聖氏)を採用する。

 

代表取締役である新美 剛一氏から高い期待をかけられている中根 聖氏であるが、素質があるとはいえ一人前になるには、長い年月をかけ積み重ねた実績が必要になるのも、溶接技術の大変なところであり、面白いところでもある。

 

大正15年からはじまった同社の歴史に、新たな流れを作ろうと取り組む同社に、筆者は大きな期待をしている。

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