金型・部品加工業専門コンサルティング

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(株)愛工金型製作所のコンサルティング事例【前編】(6月号掲載)

(株)愛工金型製作所のコンサルティング事例【前編】(6月号掲載)

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今回取り上げる金型メーカーは、愛知県にある(株)愛工金型製作所(愛知県小牧市 TEL 0568-54-1981)である。同社は、主に自動車の燃料タンクやブレーキの油圧等で使用されるプラスチック製品の金型製造から量産成形まで行っている、従業員40名の射出成形金型メーカーである。

今回筆者は、ラベルシール・カードで有名なエーワン合同会社とタイアップし、同社のラベルを活用した5Sコンサルティングを行った。今回、特に中小企業に適した5Sに取り組むことができたのでぜひ紹介したい。

そもそも中小企業の5Sは難しいと言われているが、それは次のような理由がある。

1. 人的資源に余裕がないこと
本業に加え5Sまで行う時間がなく、仮に整理整頓ができたとしても維持していくための管理が難しい。教科書どおりにやろうとすると間接人員が余分に必要になるため、改善後しばらくすると元に戻ってしまうことも多い。

2. 工場内のスペースが限られていること
中小企業は多品種生産が多く、使用する道具や仕掛かり在庫が増えやすい。このため、モノが乱雑に置かれやすく置き場所が足らなくなる。

3. 問題意識を持つ必要がないこと
工場はとびきり汚いが、作る製品は絶品という会社もある。こういった会社は一人親方や家族経営が多い。詳しくは後述するが、5Sを起因とする問題は、そもそも複数メンバーが同じ場所・同じ道具・同じ機械を使用するために発生する。場所や道具を共有してなければ5Sの問題は意識しないものである。

4. 新入社員や非正規雇用が少ないこと
中小金型メーカーは元々人材確保が難しく、さらにルーチンワークも少ないため、パート社員で対応できる業務が少ない。業務に慣れていない者が多い職場では、道具や治具置き場に何丁目何番地と明記する等、定置化の改善を行うことで、探す・戻すロスを減らすことができる。しかし、人の新陳代謝が進んでいない職場では、この改善効果は出にくい面がある。

そうした中、筆者は中小製造業を対象に「売上・粗利益アップにつながる5S」を意識したコンサルティングを行っている(図)。

図 5Sの目的

売上とは「単価×数量」であるが、まず「単価」UPへの取り組みとして、「安心」を売る現場づくりをする。自分が治療を受ける診療現場をイメージしてほしい。

もし、自分のカルテを探し回る、自分の予約が抜けていた、順番が回ってこない、自分に打つ注射を探し回る、といったことがあった場合、自分が受ける外科的治療や注射などに信用がおけるだろうか。私なら「ちょっと待って。もう一度確認し直してほしい!」と言いたくなる。製造現場もこれと同じと考えている。

「自分たちは知っている」「わかっているから大丈夫」ではなく、客観的に「当社は安心」を納得してもらえる現場づくりが重要である。「これだけの管理をしているために他社よりも単価が高い」を納得してもらい客単価のアップを図りたい。

「受注量」UPへの取り組みとして作業稼働率を高める。探す・待つロスの削減、計画どおり確実に着手できる仕組みを作る。これにより、機会損失の削減や前倒し生産の促進を図り、生産と販売の数量アップを図る。

これらの5S導入にあたっては、常に粗利益への貢献度を意識して検討することがポイントであり、こういったメリットがなければ導入は進まない。

会社が最も強みとしているポイント

1. 短納期で金型製作できる技術を持っている。
設計者が樹脂の流動予測をしっかり行うことで、適格なゲートやランナー等の設計を行っている。これにより、トライ工数を徹底して減らす取り組みを行っている。なお、設計人材の育成のため、あえて解析ソフトを使わない方針をとっている。樹脂流動を自ら考え設計し、結果とのギャップをフィードバックし、設計能力を高めている。

2. 成形・出荷まで一貫して行っている。
プラスチック製品の金型製作・量産・出荷まで一貫して行うことで、費用対効果の高い金型製作ができている。今年1月に移転した新工場は動線に配慮され、製品の移動距離を最小化できる効率性の高いレイアウトになっている。

コンサルティング以前に粗利益を下げてしまう要因となっていた課題

部門間連係に配慮した工場レイアウトは、製品(モノ)の移動最小化には寄与しているが、部門ごとにある5S上の問題により、ヒトの移動最小化までは実現できていなかった。

一見すると新しい工場であるため、整理・整頓ができているように見える。しかし、実際に作業を行っているヒトの動きに着眼すると、さまざまな問題が見えてきた。前述したように、多くは複数メンバーによる作業に起因したものであった。

一方、プラスチックやダイカスト製品を扱う金型メーカーに多いのが、型彫り放電加工で使う電極管理の問題である。緻密に更新型の履歴管理を行うことで、最小限の数の電極製作で済ませることは金型メーカーの腕でもある。

しかし、あまりに管理が複雑すぎると、実際の加工現場では人的ミスの発生確率が高まる。ミスの発生は、①材料・時間のロス、②ミスを巻き返す時に本来着手できた仕事ができなくなる機会損失発生や外注費増、③製品品質や納期遅延に影響があれば顧客からの信頼低下、といった3重のロスが起こる。

これらの要因により同社の製造現場では、(a)共有道具を探す・待つロス、(b)材料・購入部品の入荷状態が見えづらく欠品リスクがある、といった問題が起こり、設備・ヒトの稼働率に影響し、粗利益を引き下げる要因となっていた。

課題となっていた部分をどのような方策で改善したか、成功した改善策

同社は、筆者とエーワン合同会社によるラベル活用5Sコンサルティングにより、前述した売上アップにつながる5S導入に取り組んだ(写真1)。

写真1 同社金型部門での5Sコンサルティングの風景

この改善のポイントは、(ア)粗利益効果に着眼した整理・整頓、(イ)色や言語による情報の視認率向上であり、さらに継続的に5Sを行うための仕掛けとして、利便性の高い表計算ソフトデータを活用したラベル運用の仕組みを構築したことにある(写真2)。

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これにより、「探す」「待つ」の削減による稼働率向上、材料や部品入荷の「見える化」による欠品防止・前倒し生産促進など、金型製造や型メンテナンスの回転率を高める取り組みを行った。詳しい内容は次号で紹介する。

今後の事業拡大に向けて

同社は、昨年のものづくり補助金に採択され、今年の夏には新型のマシニングセンターが導入される。テーマは、アルミ金型を使用する試作品製作であり、よりトライ回数の少ない迅速な金型製作にチャレンジする。これまでの正確・迅速な金型づくりが評価され、より短納期の試作品製作まで要請をいただいたことがきっかけである。

金型から量産まで一貫生産する同社は、今後、上流の試作工程まで対応することで、受注の幅をさらに広げることができる。厳格な品質管理や成形サイクルタイム向上などの量産技術は、多品種一品生産である金型製造技術とは異なるものであるが、意欲あるスタッフ全員で幅広い技術の高度化に取り組む同社に大きな期待をしている。

 

 

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