現場の意識が変わる?「ミクロ視点」の労働分配率で生産性を向上させる方法

現場の意識が変わる?「ミクロ視点」の労働分配率で生産性を向上させる方法
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現場の意識が変わる?「ミクロ視点」の労働分配率で生産性を向上させる方法

生産性改善の現場において、私が以前から繰り返しお伝えしている指標の一つに「労働分配率」があります。

加工現場や検査部門などの生産性を高める際、スタッフのモチベーションをどう引き出すかは永遠の課題です。その解決策として、私は労働分配率を「マクロ」と「ミクロ」、2つの視点で使い分けることを提唱しています。

今回は、特に現場の「目の色」を変えるのに効果的な、私オリジナルの「ミクロ視点での労働分配率」の活用法について解説します。

「マクロ」と「ミクロ」 2つの労働分配率

一般的に知られている「労働分配率」は、会社全体の経営状態を把握するためのマクロ視点のものです。

  • マクロ視点の労働分配率 = 人件費 ÷ 付加価値額(売上 ー 外部購入費・外注費)

これに対し、私がコンサルティング現場で活用しているのは、より現場に近いミクロ視点の労働分配率です。

ミクロ視点では、工数で出来高金額を計算しやすい加工現場や検査部門を対象とする場合、分母に「売値チャージ × 予定工数(標準工数)」を据えます。

ここで言う「予定工数」とは、実際に加工に要した工数ではなく、ベテラン社員や部署リーダーが案件ごとにあらかじめ取り決めた標準工数のことです。実績工数ではなく、あらかじめ決めた予定工数を使うのは、作業が遅い人ほど付加価値が高くなってしまう矛盾を防ぐためです。

なお、もし案件ごとの「実際の受注金額」が明確に把握できる環境であれば、チャージ計算よりもその受注金額を直接利用する方がより正確で望ましいと言えます。

いずれにせよ、これらを1か月分集計したものを分母とし、分子にはその現場で働く人たちの「月次の総人件費(例:賞与を含めた年収の1/12)」を当てはめます。

この指標を月次ベースでモニタリングすることが、現場の意識を変える大きなポイントとなります。

分母に「営業利益」を加えるべきか?

ミクロ視点での運用を始めると、経営層や管理職ではなく、むしろ当事者である部署リーダーなどから「分母の計算に営業利益を含めるべきではないか」といった議論が生じることがあります。

当然ながら、分母が少しでも増える方が労働分配率は低く抑えられ、数字としては「良好」な状態になります。現場としても、自分たちの頑張りを少しでも良い数値として反映させたいという心理が働くのは、至極当然のことと言えるでしょう。

通常、見積もりや売値を算出する際には、管理費や利益を上乗せした「見積工数」を使います。現場の実工数だけで計算すると、会社が本来得るべき利益分が考慮されず、部署の労働分配率が厳しく(高く)出てしまうのではないか、という懸念です。

これに対し、私は次のように説明しています。

「分子(人件費)には、営業や総務の方々、そして経営層の役員報酬は含まれていません。あくまで“現場で生み出された付加価値”を基準にしているため、間接部門の維持費や会社全体の利益を示す『営業利益』を分母に加える必要がないという考え方になります。」

この説明をすると、多くの方が「なるほど、現場の純粋な貢献度を見る指標なのだな」と納得してくださいます。

なぜ「ミクロ視点」が現場に効くのか

私のコンサルティングでは、まずは毎月の出来高(売値チャージ × 工数)の集計の推移をモニタリングし、改善の切り口を探ります。

しかし、改善活動が停滞したり、スタートが切れなかったりする場合には、あえて「分子(人件費)」を組み込んだ労働分配率の計算へと踏み込みます。

自分たちの給料が具体的な数字として計算対象に出てくると、現場の意識は一変します。

「自分たちがこれだけの価値を生み出し、そのうちの何割が自分たちの給料になっているのか」 この事実が可視化された瞬間、ほぼ全ての会社でスタッフの目の色が変わっています。

具体的には、現場が「売上」を自分たちのこととして強く意識するようになります。私が以前のコラムでもお伝えしている通り、売上は営業部門だけのものではなく、現場にも大きく関係しています。

特に金型や部品加工の業界では、製造現場が動かなければ「商品」は生まれません。つまり、製造部門のキャパシティこそが売上に直結しているのです。

労働分配率を意識し始めると、現場は「分母(付加価値額)を増やすためには、そもそも製造キャパを空けなければならない(=効率を上げなければならない)」と自発的に考えるようになります。

ただし、現場がどれだけキャパを空けても、そもそも「弾(受注案件)」がなければ分母を増やしていくことはできません。この指標を追うことで、現場からも「もっと案件(弾)が必要だ」という声が上がるようになり、営業部門との連携の重要性もより鮮明になってきます。

抽象的な言葉で発破をかけるよりも、こうした「納得感のある数字」を共有することが、結果として現場を動かす大きな原動力になると実感しています。

業務特性に合わせた柔軟な適用

設計や組み立てなど、単に「チャージ × 工数」で付加価値を測るのが馴染まない業務もあります。

その場合は、本来のマクロ視点での計算方法である、その部署での「売上 ー 外部購入費 ー 外注費」を分母にすることを推奨しています。

いずれにせよ、会社全体ではなく「その部署」に閉じた付加価値で計算する点は、やはりミクロ視点だと言えます。

経営者・管理職の皆様へ

もし『現場の意識がなかなか変わらない』『もう少し危機感がほしい』と感じておられるようでしたら、この“ミクロ視点での労働分配率”を一度取り入れてみるのも有効かもしれません。

数字を単なる管理の道具ではなく、現場との『共通言語』として使うことが、結果として組織を良い方向に変えていく近道になると実感しています。

本コラムが、皆様の現場改善の一助となれば幸いです。

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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