金型・部品加工業専門コンサルティング

金型・部品加工業専門コンサルティング(加工コンサル)は、金型メーカーや、マシニングなどの機械加工業を専門とする経営コンサルタント事務所です。

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切削

FAQ

古い加工技術にこそ今使えるノウハウがある

 

私のクライアント企業の中には、加工寸法公差がプラスマイナス0.01ミリといった高精度の部品加工を要求される製造現場があり、それに対応しなくてはならない若手の皆さんは大変苦しんでいます。

 

ワイヤーカットによるセカンドカット、サードカットが使えれば、0.02ミリのレンジへの対応は難しくはないと思いますが(加工歪みの問題は別として)、エンドミルによる切削加工、さらに焼入れ処理された高硬度材が対象となると、非常に厳しいものがあります。

 

使用されている機械や、そもそもの加工形状にもよりますので、一概にバチッと「この手順で」というアドバイスが難しいのが現実なのですが、私のような今主流の超硬エンドミルではなく、ハイス製のエンドミルばかりで加工してた時代も長く経験しているという人間からしますと、それらの工具で泣く泣く加工してきた方法の中に、今こそ使えるノウハウがあると思っています。

 

例えば、先ほど話しに挙がったワイヤーカットですが、熱補正機能なども完備されている最近のマシンにおいては、放電ギャップや径補正、カット回数など、メーカー指定の条件を用いれば、0.02ミリレンジなどの高精度加工はユーザーの技術としてはさほど難易度は高くないものになりました。

 

しかし10年、20年を超える以前からワイヤーカットをやられている加工者の中には、下図にあるように、スタート穴から本来欲しい形状を切り出す反対側に、10ミリ角などのテストピースを切り出し、それをマイクロで測定し、その日の気温や機械の調子などによる精度誤差を確認したうえで、その誤差を補正して高精度の加工に対応するなどの手順を踏んでいました。

(もちろん今でも、厚板加工のタイコ形状確認などで使われています)

ワイヤーカットの事例

これは、ハイスのエンドミルを使った切削加工も同様で、超硬エンドミルが主流になった今でこそ、仕上げ代0.1や0.2ミリを付けた中仕上げ加工の状態から一気に仕上げ寸法を狙う手順が当たり前になっていますが、ハイスのエンドミルを使っていた加工では、どうしても下図のような倒れが出るため、一発で狙い寸法になることはほとんどありませんでした(もちろん狙いの寸法公差によります)。

細いエンドミルで深い立壁を切削加工

しかも、加工ビビリも出やすいため、突き出し長さが長いなど厳しい条件で一発仕上げを狙うと、食い込み寸法になることもありました。

 

そこで、仮で一旦仕上げてみて、その日、その時の傾向を掴み、それを加味したうえで仕上げるという手堅い手順を踏むわけです。

 

具体的には、0.1ミリなど仕上げ代と同じくらいの寸法を残したうえで、一旦「中仕上げ加工→仕上げ加工」のプロセスを踏み、仮の状態で仕上げます。

 

形状や深さによる加工負荷、機械の調子、エンドミルの径・摩耗具合など、そのとき出せる加工精度を認識し、エンドミルの倒れなどで余分に残る取り代を加味したうえで、再度「中仕上げ→仕上げ加工」の手順で仕上げます。

 

この手順は、現在においても、高硬度材をプラスマイナス0.01ミリ精度で仕上げるなど、一発で公差内に仕上げるには厳しいときに使えると思います。

 

こうした厳しい公差の加工は、切り込み深さやゼロカット回数などをパターン化しようとしても、その都度、加工形状や深さ、機械剛性、そのときのエンドミルの状態などにより、加工後寸法の傾向は変わってくるためです。

 

どの方法がベストだと一概には決められませんが、一発で公差内まで狙えない厳しい加工においては、こうした手順もあるということです。

 

もちろん、プラスマイナス0.02ミリの加工公差のときなど、0.04ミリ以上のレンジがあるという加工であれば、剛性のある超硬エンドミルのメリットをフルに活かし、一発で公差内に入れる工程を考えても良いと思います。

 

私も含め、かつて今ほど良くない工具や機械を使っていた現場加工者の皆さんは、何とかあるもので精度を出そうと創意工夫していました。

今の高度になったツールでは必要が無くなったノウハウもあると思いますが、今の若手の皆さんにおいては、こうした経験ができなくなったのも、応用力を育てる観点からは少し物足りない感もあります。

 

社内で加工者の育成カリキュラムを作られている企業におかれましては、あえて整い過ぎた最新の環境ではなく、少し古く精度の出しにくい道具や機械で加工に取り組んでみるというカリキュラムを一部取り入れてみるのはいかがでしょうか。

応用力や危機対応能力の育成につながると思います。

 

もしよろしければ、参考にしてみてください。

 

 

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3D加工における等高線加工と走査線加工、エンドミル条件を使い分けていますか?

 

今回は、CAD/CAMを使った3D加工において、主に仕上げ加工で使われる等高線加工と走査線加工について、同じ工具であっても、それぞれの主軸回転速度(S値)と、送り速度(F値)を別々に使い分けていますか?というテーマです。

 

これは、とあるCAMが等高線加工と走査線加工、同じ工具を使っていても自動で、それぞれ異なるS値とF値が設定されるのを見て、「たしかにそうだよな」と気づいてからは、クライアント企業にこの設定をするよう推奨しております。

 

では、具体的に見ていきます。

 

まず今回のテーマ、等高線加工と走査線加工でのエンドミル条件の使い分けは、主に仕上げ加工を対象としております。

 

そもそも、等高線加工と走査線加工は、下図のように、加工する形状の傾斜部において、それぞれ得意とする角度エリアだけを加工するために使い分けされます。

ちなみに、私は30度~40度あたりで分割するのを推奨しています。

等高線の加工エリア

走査線の加工エリア

逆に、それぞれで加工しない側の角度エリアは、次のように送りピッチに支障がでるため、通常は除外します。

  1. 等高線加工の場合、走査線加工で行うエリアのように角度が緩くなると、どれだけZピッチを細かくしても、加工表面を沿う送りピッチは広くなってしまうため、緩い角度エリアは走査線加工で行うことになる。
  2. 走査線加工の場合、等高線加工で行うエリアのように角度が立ってくると、どれだけXYピッチを細かくしても、加工表面を沿うZピッチは広くなってしまうため、立っている角度エリアは等高線加工で行うことになる。

 

最近のCAMは、等高線加工と走査線加工を一緒にした加工パターンも用意されていて、そういった機能を使うと、上記の1.と2.は気にしなくてもよくなるのですが、原則はこのように形状に応じて、それぞれの加工を使い分けします。

 

さてここから本題ですが、等高線加工と走査線加工、同じボールエンドミルを使う場合、それぞれのS値とF値は同じで良いでしょうか。

 

実は前述したように、加工するエリアを角度で分割した場合は、下図のようにそれぞれの加工でワークに接触するボールエンドミルの箇所が異なります(図は30度で分割した例)。

工具の接触点

この図におけるそれぞれの接触点は、等高線加工と走査線加工、それぞれの加工において、ボールエンドミルの最外周が接触する点を表しています。

 

等高線加工であれば、90度の立ち壁が接触する点、走査線加工であれば、最も角度が立っている30度の部位が接触する点になります。

 

工具の加工条件であるS値は、毎分あたりの主軸の回転数であり、その数値は工具の周速値(毎分あたり可能な切削距離)から計算されます。

S値の計算

この計算によると、分母であるD(工具直径)が小さいほど、主軸の回転速さであるS値が大きくなります。

 

したがって、前述した工具の接触点の図を見ると、等高線加工よりも、走査線加工の方が小さい直径で接触するため、等高線加工よりも走査線加工の方が速いS値で加工できるということになります。

 

最後に、具体的な計算方法ですが、もう一度、先ほどの図を見ると、

A部の計算

赤い線で示した長さは、ボールエンドミルの半径になります。

したがってこの図から、ボールエンドミルの半径R値にSin計算をすれば、Aの長さ、つまり走査線加工で使用する工具半径値が計算できます。

 

また、F値ですが、計算は次のようになります。

F値の計算

この計算式を見ると、S値が大きくなれば、比例してF値、つまり送り速度が速くなり、加工が早くなります。

 

このことによれば、緩い角度しか加工しない走査線加工については、接触する最外周の工具径でS値を計算し、できる限り速い送り速度で加工した方が効率が上がるということになります。

 

そういった意味では、最近のCAMで等高線加工と走査線加工が一緒になった加工設定ができる機能があったとしても、あえて等高線加工と走査線加工を別々に分け、走査線加工を速い送り速度で加工するという意義はあると思います。

 

最後になりますが、私が見てきたCAMオペレーターの中で、腕の良いオペレーターは、下図のようなCAMの加工設定の中で、同じ工具を使っていても、パスの形状や今回のような工具の使われ方によっては、エンドミル条件(S値、F値)を使い分けています。

CAMの加工設定

 

恥ずかしながら、私は現役でCAM作業をしていたときは、この使い分けをしていませんでした。

ぜひ今現役のオペレーターの方々には使っていただきたいと思います。もしよろしければ、参考にしてみてください。

 

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

 

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型技術2018年3月臨時号コラム「金型加工用NCデータ作成における省力化のポイントと実例」

 

今回は金型製作における機械加工用NCデータ作成の省力化をテーマに執筆させていただいた。NCデータとは主に、NCフライス、マシニングセンター、ワイヤー放電加工機、型彫り放電加工機などを動かすための動作プログラムを指す。

 

このNCデータ作成作業においては、工作機械に直接人間が打ちこむ場合もあるが、近年CAD/CAMを使うことが多くなった。したがって今回、CAD/CAM作業を前提にした省力化を中心にまとめている。

 

今回、NCデータ作成の省力化にあたり、金型製作における様々なNCデータ作成の状況に応じ、どのようなアプローチで省力化を図っていくべきか、またそれを実現するソフトウェア技術にはどのようなものがあるかなど、実際に運用している企業の事例を織り交ぜながら紹介していきたい。

 

状況に応じたNCデータ作成作業のパターン

まずは、普段行われているNCデータ作成作業のパターンを整理してみよう。

 

パターン

ここ数年、多くの金型メーカーで取り組まれている3次元の金型設計も、かつては2次元設計であったことから、現場に提供されていたのは、紙仕様の金型図面や部品図であった。

 

これにより現場では、金型構造部を構成するプレート類の加工について、紙の図面を見ながら工作機械に直接プログラムを打つか、2次元用のCADデータであるDXFデータを設計担当からもらい、2次元用CAD/CAMにそのデータを取り込み、NCデータを作成していた。今も2次元設計が主体の金型メーカーは、このパターンで作業している。

 

パターン

また、金型構造部は2次元設計であっても、例えばプラスチック成形金型やダイカスト金型における製品意匠面の機械加工においては、立体的な自由曲面に対応できる3次元加工が必要になるため、意匠面のあるキャビ・コアの3Dモデリングを行い、3次元CAD/CAMを使ったNCデータ作成を行う。それ以外の構造部(主にプレート類や小物部品)は、紙図面や2次元CAD/CAMを使ったNCデータ作成を行っている。

 

パターン③

近年、金型構造部においても設計の3次元化が普及してきたため、上記パターン①②とは異なり以下のような方法がとられている。

 

(ア)金型全体設計は3次元で行うが、各部品については、加工現場で従来の手順が踏めるように2次元図面を作図するパターン。金型全体図は3次元データで現場に提供するか、もしくは紙図面で作図する。NCデータ作成作業については、前述したパターン①②とほとんど手順は変わらない。プレート類や小物部品については、従来の2次元加工の手順で行い、自由曲面が存在する金型意匠面についてのみ、3次元CAD/CAMを使ってNCデータを作成する。

 

(イ)金型全体設計は3次元で行い、加工現場に対しても3次元データで提供するパターン。この場合、現場で扱うCAD/CAMは3次元に対応している必要がある。このパターンは、主に金型メーカーから、他の機械加工業者に加工依頼する場合にとられることが多い。この場合のNCデータ作成作業において加工現場は、2次元図面に変換するか、3次元モデルのまま扱うかで手順は異なる。2次元図面に変換した後の手順は、前述したパターン①②と同じである。しかし、3次元モデルのままNCデータを作成する場合では、Z方向の情報を人間が手入力しなくて済む。

 

(ウ)金型構造部の設計を行う際、設計者がボルトやノックピンなど標準部品を配置する場合に、穴加工や切削加工などの加工属性まで割り付ける「フィーチャー設計」を行うパターン。
このパターンは、金型メーカーの社内プロセスにおいて、設計と加工現場で同じCAD/CAMを使用している場合にとられることが多い。

 

省力化で取り組むべきこと

ここまで色々なNCデータ作成のパターンをみてきたが、それぞれの作業パターンにおいて、省力化のために取り組むべきことを見ていこう。

 

パターン①(2次元の紙図面もしくは、2次元CADデータでNCデータ作成する場合)

このケースにおいては、目新しいソフトウェアの機能開発も少なくなってきているが、パターン③に出てきた3次元のフィーチャー設計は、2次元設計でも行うことができる。

具体的には金型構造設計の際に、キャップボルトやノックピンなどの標準部品を平面図に配置すると、例えばプレス金型であれば、ストリッパー、パンチプレート、バッキングプレートなど、各階層のプレートそれぞれに加工定義(タップやキリ穴、ザグリ穴など)が付与される。またその部品と加工に対応した断面図が、側面図や正面図などに自動作図される。

 

こうした機能を使うことで、改めて加工現場にてゼロからCAM定義を行うことなく、加工担当者は加工ワークの向き、加工原点の設定、加工定義の調整などで済む。

 

CAM上の加工定義においては、従来手作業で行っていた操作を可能な限りマクロ化することが望ましい。また、操作マクロや加工条件を担当者間でシェアすることで、全体の効率化につながる。

 

パターン②(プレートや小物部品は2次元加工、金型意匠面のみに3次元加工を行う場合)

プレートや小物部品に対する2次元加工の省力化の方向性は、上記のパターン①と同じである。

 

金型意匠面に行う3次元加工のCAM作業省力化については、まずはやはりマクロ化は必要である。

例えば、荒取り→部分荒取り→中仕上げ→仕上げ加工→狭小部の削り残り加工といったプロセス・使用工具・加工条件は、標準化できることが多く、データ作成の都度定義するのは時間の無駄と言える。

それぞれのCAMが実装している加工プロセスの保存と呼び出し機能をフル活用すると共に、最も安定したプロセス・条件を社内でシェアするべきである。

 

また、かつては3次元加工のCAM作業において、前工程で仕上がっている面に工具軌跡を触れさせたくない、凸のピン角形状にダレを発生させたくないといった理由から、本来の加工形状にはない、工具軌跡を制限するためだけの、通称ダミー面と呼ばれる一種の蓋のような役目をする形状を作成しながらNCデータ作成することもある。しかし近年、CAMによってはダミー面と同等の機能もあり、活用したいところである。

 

パターンケース(イ)(金型設計から3次元設計を行い、加工現場に3Dモデルで渡す場合)

この場合において、2次元CAMを使ってデータ作成を行う場合は、3次元モデルを一旦2次元の状態に変換しなければならない。NCデータ作成省力化のためには、こうした事前準備を迅速に行うことも重要である。

 

3次元に対応できるCAMを使って2次元加工を行う場合、CADモデルをCAMに取り込む際、フィーチャー設計に近い状態で取り込むことができれば、人の操作で行う加工定義を省力化することができる。

例えば、モデル上の各面の色で加工種類を認識する機能がある。穴であれば、タップ穴やリーマ穴の認識などがあり、ポケット加工などのエンドミル加工においては、▽の粗い加工面で良いのか、▽▽や▽▽▽の仕上がり面まで必要なのかの認識がある。

 

パターンケース(ウ)(金型設計で3次元のフィーチャー設計を行う場合)

この場合のプレート類の加工においては、最も省力化できる余地が大きい。

 

フィーチャー設計された部品のCADモデルを受け取った加工現場のCAM上では、各プレートをフィーチャー認識させると、例えば穴加工であれば、タップ穴やリーマ穴など穴種類をモデルから認識させることができ、センター穴→ドリル穴→タップ加工といった、連続した加工プロセスが自動で定義される。

こうした機能を使うことで工数削減はもちろん、現場での加工ミスや漏れを減らすことも可能になる。

 

取り組み指針に沿ったCAM機能の選び方

では、先ほどまで挙げてきた「省力化で取り組むべきこと」を実現するCAD/CAMの機能にはどのようなものがあるのか、具体的にみていこう。

 

2次元設計でのフィーチャー設計機能(パターン①での対応)

2次元設計の効率性と3次元モデルの利便性を合わせ持ったシステムとして、(株)C&Gシステムズ社のEXCESS-HYBRIDⅡが知られている。こちらのCAD/CAMを使用することで2次元ベースのフィーチャー設計が可能になる。

その他には、キャムタス(株)社のSpeedy mill/winの「プレート分解」機能などが使われている。

 

フィーチャー設計の導入にあたり使用するCAD/CAMを選ぶ際には、運用までの立ち上がり期間をできる限り短縮できるソフトを選ぶべきである。

筆者が聞く限り、フィーチャー設計に取り組んだ全ての企業がうまくいっているわけではない。うまく立ち上がらずに、従来の方法に戻ってしまうことも少なくない。

失敗する理由の多くが、運用前のデータベース登録作業の大変さがあり、普段の金型業務と並行しながら行わなければならない場合が多い。

 

そこで、CAD/CAM選定にあたっては、①販売ベンダが深い金型の知見をもっていること、②ミスミ部品など初期設定で大半のデータベース登録が済んでいるといった要件を満たすシステムを選ぶべきである。

 

試作板金と量産用プレス金型の外販を両立し事業を行っているユーアイ精機株式会社(愛知県尾張旭市 TEL0561-53-7159)では、EXCESS-HYBRIDⅡを駆使し、3次元でモデリングする製品意匠面と、2次元で加工する金型構造部をそれぞれ切り分け、効率的なNCデータ作成を行っている。協力メーカーに設計を外注する際も、同じEXCESS-HYBRIDⅡを持つ金型メーカーに依頼しデータベースを共有することで、フィーチャー設計システムを活かせる外注政策をとっている。

 

3次元CAMでの省力化(パターン②での対応)

  • 加工プロセスの保存・呼び出し

3次元CAMでの省力化においては、まず加工プロセスの保存・呼び出し機能は活用したいところである。筆者が使っているOPEN MIND社のhyperMILLにおいては保存した加工プロセスを呼び出すことで、加工対象のモデルを変えても、使用工具・加工条件・加工定義(等高線荒取り・走査線仕上げ加工など)を使いまわすことができ、迅速なCAM作業を行うことができる。

こうした機能を使い、被削材種、ワークサイズ・特徴、部品種類によって、保存プロセスを多数用意しておき、CAM作業者間でシェアすることが望ましい。

 

筆者がサポートさせていただいた(株)瑞木製作所(愛知県尾張旭市 TEL 052-771-8410)では、AUTODESK社のHSMWorksを使用しているが、このCAMは荒取り加工パスに定評があり、加工に関する細かなパラメーター調整ができる点も特徴である。

 

半面、部品によって細かく定義されたパラメーターや、同社が扱う航空機部品に多い薄肉形状の加工においては、膨大な数の加工プロセスになることも多いが、CAM作業の都度、新たに定義していては、加工条件のばらつきリスクはもちろん、作業時間のロスも大きい。

そこで同社は、HSMWorksのプロセス保存機能を活用し、効率的なNCデータ作成作業を行っている。

 

  • ダミー面作成作業を無くす

ダミー面の作成については、古くから当たり前の作業として行われてきたが、その作業を不要にできる機能がCAMに実装されている。 筆者の経験では、(株)牧野フライス製作所のFFCAMが持つ「パス作成補助機能」が便利であった。

 

例えば、加工するワークと同じサイズでモデリングされた3Dモデルを加工現場が受け取った場合、加工軌跡を若干はみ出させたいときがあり、こうした際に使えるパスの「延長」機能や、3Dマシニング加工の前工程、例えば研削加工などで仕上がっている面に触れさせないパスを「面から離す」機能などがある。

 

また、モデル上は凸のピン角になっていても、工具の加工軌跡が円を描き、ダレができてしまう部位においても、きれいなピン角が出せる加工軌跡が出力できる「等高線角だし・投影角だし」機能がある。

 

3次元設計データを他システムで扱う場合の省力化(パターン③ケース(イ)での対応)

2次元CAMを使用する加工現場において、3次元CADデータを受け取った場合、(A)三角法による2次元図面に変換する、(B)2次元図面に変換することなくCAMに取り込みデータ作成作業を行うといった方法があるが、やはり(B)の方法が省力化には望ましい。

 

筆者も使用している(株)エリジオン社の2次元CAD/CAMキャメストには、「3D活用エンジン」という機能があり、3次元CADモデルをDXFデータなど2次元用のCADデータに変換することなくそのまま取り込むことができ、CADモデルが持つ面の色情報、Z深さ情報などをダイレクトに加工定義に反映させ、CAM作業の大部分を省力化することができる。

 

また設計からのCADデータを、加工現場が3次元データで受け取り、3次元のCAMでNCデータ作成を行う場合、キャメストの3D活用エンジンのように、モデルの面の色情報、穴やポケットなどの深さ情報を、ダイレクトにCAMに反映させることができれば、作業の省人化につながる。

 

hyperMILLには、フィーチャー認識機能があり、マクロ機能と併用することで、3Dモデルを取り込んだ状態から、プレートに必要な加工定義を一気に自動で作らせることができる。現状の機能では、ポケット加工などエンドミル切削については、狙いの表面粗さに応じた加工手順まで完全に自動で反映させることは難しいが、穴加工については設定次第で、かなりの自動化を行うことができる。

図 hyperMILLによるフィーチャー機能を使用したところ

 

3次元設計でのフィーチャー設計機能(パターン③ケース(ウ)での対応)

3次元設計の本来のメリットを出すことは、設計作業単体だけでは難しく、後工程、特にデータ作成やトライ作業を設計段階に取り組むことで効果を発揮できる。

 

3次元のフィーチャー設計を行うことの加工現場でのメリットは、2次元のフィーチャー設計と同様に、加工定義が済んだ状態でCAM作業に入れる点である。残る加工現場の作業としては、実際に加工するワークの向き、加工原点、実際に使用する機械に応じた工具設定・加工定義の調整などで済む。

 

筆者がコンサルティングを行っている株式会社 建和(愛知県安城市 TEL 0566-92-6295)では、ペーパーレスの3次元設計のメリットを最大限に活かしたフィーチャー設計を行っており、プレス金型において、特にリードタイム短縮にこだわった取り組みを行っている。

 

まとめ

ここまでNCデータ作成における省力化の例をみてきたが、CAM作業はいかに効率化できても、実際に加工した金型自体が必要品質を確保できてようやく要件を満たすことができる。

そのためには、被削材の種類や使用工具、加工に使う工作機械、加工形状・クランプ状態など、様々な要因がからみ、従来は加工技術者の判断なくしては対応ができなかった。

 

しかし一気に全部ではないが、それらのノウハウは徐々にデータ化され、標準化されてきている。例えば、Mashining cloudやcim sourceといったインターネットを介したサービスでは、加工形状、被削材、加工プロセスに応じた推奨工具と条件をダウンロードできる。

 

こうしたサービスによって、従来技術者の経験によって蓄積されてきた「引き出し」も、公開された情報として標準化されていくのかもしれない。

 

こうした知識・情報の標準化やCAMの機能向上によるNCデータ作成の省力化が進んでも、筆者も含め、加工技術者の個性は発揮できるよう切磋琢磨していきたいところである。

 

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CAMを使った3D加工における工数に配慮したパスの作り方

 

今回は、CAMを使い、ボールエンドミルを使って自由曲面などの3次元加工を行う際に、工数を少なくすることに配慮したパスの作り方についてみていきたいと思います。

 

なお、自由曲面などの3次元加工というのは、例えば、下図のようなボールエンドミルでないと加工できない形状を指します。

 

では、さっそく手順をみていきたいと思いますが、当事務所のクライアント先には、5軸マシニングを使っている事業者もみえるので、下記のそれぞれに分けてみていきたいと思います。

  • 3軸加工の場合
  • 5軸加工の場合

 

ポイントは、次の2点です。

  1. 形状に深い部位があり、ホルダー干渉を避けるため、工具突き出し長さが長くなっても、1本で全ての部位を加工しない。1本で加工すると、工具のカタログ加工条件よりも何割か下げた送り速度で加工せざるを得なくなる。
  2. 工具突き出し長さが長くなる場合は、工具のカタログ加工条件が出せる突き出し長さまでの工具と、送り速度を下げざるを得ない長い突き出し長さの工具とを分けること。

 

① 3軸加工の場合

  1. 目安として突き出し長さ4D以内で加工できる部位・エリアを抽出して加工する。

    理由:最もカタログ値に近い送り速度が出せるため。
    φ10ボールエンドミルにおける工具突き出し長さ等高線加工における加工エリア

  2. 次に、突き出し長さ6Dを目安に、この長さで加工できる部位・エリアを抽出して加工する。

    理由:ステップ1.の送り速度の10~20%減ていどで加工できるエリアを確保するため。
    工具突き出し長さ6Dの様子突き出し長さ6Dの加工エリア

  3. 突き出し長さ8D以上で加工する部位を抽出する。

    理由:残った部位を、やむなくステップ1.の30~50%以上減の速度で加工するため、出来る限り少ない範囲にしたい。
    工具突き出し長さ8Dの様子

 

② 5軸加工の場合

  1. 3軸加工と同じく突き出し長さ4D以内で加工できる部位を抽出し、まず5軸機能は使わず、3軸加工における「等高線加工」を行う。

    理由①:5軸加工は便利である反面、主軸やテーブルなど、精度や各軸同期速度のベースとなる旋回軸・傾斜軸が同時駆動する加工であるため、寸法確保・加工時間への影響が大きい。そこでまずは、出来る限り動かす軸が少ない加工を行い、加工品質・送り速度の安定を優先する(特に金型部品など)。

     

    理由②:3軸加工の仕上げ工法については、一般的に「等高線加工」と「走査線加工」があるが、品質優先のために「等高線加工」をまずは採用する。

     

    「走査線加工」はXYZ、3つの軸が同時に動くことが多いが、「等高線加工」は基本的にZ軸位置を固定したあと、XY軸のみで軌跡をつくる。そのため「走査線加工」よりも「等高線加工」の方が寸法精度を確保しやすいため。
    理由③:突き出し長さ4Dまでであれば、最もカタログ値に近い送り速度が出せるため。

  2. 突き出し長さ4Dで加工できる部位を抽出し、5軸機能は使わず、3軸加工における「走査線加工」を行う。

    なお、「等高線加工」と「走査線加工」では、「等高線加工」が先で「走査線加工」は後に行う。これは「走査線加工」における壁面付近に接近した際の安全を確保するためであり、必ず「等高線加工」を先に行っておく。

  3. 突き出し長さ4Dと同じ工具のまま、5軸機能を使って干渉回避機能を使った加工を行う。

    5軸加工よりも3軸加工の方が加工精度を出しやすいため、まず4D以内の工具突き出し長さで加工できるエリアを3軸加工で先に加工しておき、次にその工具で届かないエリアを5軸加工で行う。
    5軸加工を使った加工エリア

  4. 突き出し長さ4D以内の同じ工具で加工できても、狭い凹部が存在すれば、そこを抽出し、広く開けたエリアを加工する際の1/3くらいの送り速度まで下げた加工を行う。

    3次元加工の狭小部位
    なおそれにあたり、前述した手順①~手順③において、当該エリアの加工パスは除外しておくことで、手順①~手順③ではカタログ値の送り速度を出せるようにする。

    理由①:最もカタログ値に近い送り速度が出せるエリアを出来るだけ多く確保するため(あらかじめ狭い凹部を除外しておく)。

    理由②:狭い凹部は加工負荷が高く、ゼロカットによる再仕上げ加工の頻度が高くなる。そういった部位の加工パスをあらかじめ分けておくため。

 

以上、CAMを使った3D加工における工数に配慮したパスの作り方をまとめてみました。

加工目に配慮した加工パスの演算ができるようになった次は、やはりビジネスとして、加工時間に配慮したパスが出せるようステップアップしてみてはいかがでしょうか。

 

もし実際の加工モデルを見ながら、具体的なアドバイスが欲しいという場合は、お気軽にお問い合わせください。

 

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

 

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング

代表:村上 英樹(中小企業診断士)

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【マシニング加工のいまさら聞けないシリーズ】リーマの下穴加工について

 

普段当たり前に加工されているリーマの下穴加工ですが、いろんな会社さんを回っておりますと、実は皆さんバラバラな方法をとっていることが多いです。

 

そこで、今回は、リーマの下穴加工についてまとめてみたいと思います。

 

私の拠点であります、ここ中部地方の加工屋さんでは、主に下記の4つ、いずれかの方法で、リーマの下穴加工を行っているようです。

 

例えば、φ10リーマの下穴加工を例にとってみると、

 

  1. φ9.8ハイスドリル→φ10リーマ
  2. φ8ハイスドリル→φ9.8ハイスドリル→φ10リーマ
  3. φ8ハイスドリル→φ9.8エンドミル縦突き加工→φ10リーマ
  4. φ8ハイスドリル→φ9.8仕上げ狙いエンドミル輪郭加工→φ10リーマ

 

上記4.の方法までやっているところは稀ですが、何とか高い位置精度を出したいとき、苦肉の策で何とか対応している加工メーカーを見たことがあります。

 

やはり最も多いのは、上記1.のパターンではないでしょうか。

 

この方法で怖いのは、ハンドリーマよりも切削性の良いブローチリーマを使ったとき、しかも下穴ドリルの穴が曲がって加工されているときに、それに倣いリーマの位置精度がズレて加工されてしまうことです。

 

そのドリル穴の曲がりを矯正するために、上記2.や3.の方法がとられています。

実際に、それを行っている方から、そうした意図だと聞いたこともあります。

 

特に上記3.は、上記2.のように、矯正するためのφ9.8の穴加工を続けてドリルで行ってしまうと、曲がった穴がまっすぐ矯正されず、追従して曲がったまま追加工をするだけになってしまうことを懸念し、切削機能を持つエンドミルの方で追加工するという意図があります。

 

では、下穴の矯正加工をドリルとエンドミルで行うことに違いはあるのでしょうか。

 

近所の公設試に確認したところ、ほとんど違いはないとのことでした。

ただし、ドリルよりもエンドミルの方が、芯の太さが太い分だけ、径方向の加工負荷による工具たわみが少なく、下穴曲がりが少なくなるのではないか、とのことでした。

 

実際には、ハイスドリルの場合118°の先端角があり、軸方向と径方向の負荷をバランスしているドリルと、フラットエンドミルで縦突きして行う穴加工の場合では、切削負荷のかかり方も異なります。

 

直進的な穴加工について、フラットエンドミルによる穴加工は、ドリルよりも直進方向の切削機能は劣ると思いますが、下穴曲がりの矯正という点においては、ドリルよりも縦方向(軸方向)の負荷(背分力)を中心に加工する分、先に加工されている下穴の曲がりに追従していくことは少なくなると思われます。

 

これは、旋盤の内径の中ぐり加工においては、ワークの軸方向に直角な刃先形状で切削したほうが、バイトの倒れ・ビビリが少ないことと同様の考え方だと思います。

(外形旋削のように、45°形状の刃を使うと、背分力が大きくなり、ワークやバイトのビビリが起きやすくなる)

 

 

できるだけ位置精度に配慮したリーマの下穴加工はどのように行うと良いのか、まとめてみますと、

 

  • まず、リーマ径よりも1ミリほど小さい径で、ドリル加工を行う。
  • 次に行う下穴曲がりの矯正のための追加工は、できるだけ芯の太いフラットエンドミルで穴加工を行う。この場合の工具径は、使用するリーマが推奨するものを使う(通常は直径でマイナス0.2~0.5ミリ)。

 

ここで使っているフラットエンドミルは、2枚刃よりも4枚刃のエンドミルの方が、芯は太いので、切りくずの出方、刃が多くなることによる過度な切削抵抗の問題がなければ、下穴曲がりの矯正の点では、優れているということになります。

 

しかし、超硬のドリルがよく使用されるようになった現在、上記2.の工程は、超硬ドリルを使用することで、上記1.の工程に集約できると考えられます。

超硬ドリルのヤング率、巧折力を考えると、ハイスドリルと比較して、圧倒的に下穴曲がりが少なくなると考えられるためです。

 

いきなり上記1.の加工で済ませるということですので、φ10リーマの下穴ということなら、φ9.7もしくはφ9.8の超硬ドリル一発で済むということになります。

 

複数の工具を使わない分、加工時間、段取り時間、マシニングセンターのマガジン数の制約などについて、多くのメリットがあります。

 

 

リーマ加工の品質は、下穴で8割決まると言った工具メーカーの方もおられましたが、実際、特に位置精度については、下穴加工の影響は大きいと思われます。

 

そもそもリーマは、バニッシュ効果や、穴をきれいな形で仕上げる機能を重視しており、下穴の曲がりを切削で直しながら、ガシガシ切削していくものではないと思われます。

ですので、下穴の加工の段階で、しっかり位置精度と穴形状を出しておくことは重要だと思います。

 

もしよろしければ、参考にしてみてください。

 

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

 

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【CAM活用で起こる疑問】エンドミル仕上げの際のZ切り込み量はどう考えるべきか

 

ここ最近、マシニング加工においては、CAMや対話システムが当たり前のように使えるようになり、かつてGコードプログラムや手動操作では、わずらわしかった立壁加工が、今では不自由なく加工できるようになりました。

 

垂直な立壁をエンドミルで仕上げる際、Z切り込み量を細かく分割して切削する手法があります。

Z切り込みのイメージ

 

例えば、工具径の2倍を超えるような、そこそこ深い立壁の仕上げ加工の場合、一回のZ深さで加工してしまうと、切削抵抗のため、下図のように工具がたわみ、切削面の直角度が確保できないことがあります。

細いエンドミルで深い立壁を切削加工

そこで、手動のハンドル送りで加工したり、Gコードプログラムで加工する場合は、Z切り込み量を細かくし、Z深さを何回かに分けて最終深さまで切削するわけですが、

 

同じ動作のプログラムを何度もコピーしたり、サブプロを使った場合は念入りなチェックが必要になったりと、何かと面倒なこともあり、結局送り速度を下げ、一回か2回くらいに分け、倒れを最小限にするよう送りを下げながら、何とか無理やり加工するといったことがよくありました。

 

しかし、CAMを使ったり、マシニングに付属している対話システムを使うことが当たり前になってきた今現在、Z切り込み量を細かく分割して、切削負荷をかけない立壁の仕上げ加工が簡単にできるようになりました。

 

さて、ここで出てくる疑問が、

「じゃあ、何ミリずつ切り込むのが正しいの?」です。

 

立ち壁を細かなZ切り込み量で切削加工

 

結論から申しますと、使う工具の種類ごとに異なります。

 

その「工具の種類」とは、工具径や刃数、リード角などによる違いです。

 

では、今回のテーマであるエンドミル側面を使った立壁を仕上げる際、Z切り込み量を何ミリずつにするかを検討するにあたり、何を考慮すべきか。

 

考慮すべきこととして、切削抵抗に影響を与える「同時切削刃数」があります。

 

同時切削刃数とは、2枚刃、4枚刃、6枚刃など、複数の刃を持つエンドミルを使い、壁の側面を仕上げる際、同時に接触するエンドミルの刃の枚数のことです。

 

ストレート刃でない限り、一般的に使われるエンドミルの多くは、下図のように、刃にリード角があるものです。

リード角とは、エンドミルの側面刃にある「ねじれ」のことです。これによって、切削抵抗が分散される効果があります。

エンドミルの刃のねじれ

 

下図のエンドミルによる切削加工時の模倣図を見ると、切削面には同時に2枚の刃が、当たっているように見えます。

同時切削刃になっている状態

 

これが、側面仕上げ加工時に発生する「同時切削刃」です。

 

ざっくり言えば、この同時切削刃が多いほど、切削抵抗は大きくなり、ビビリなどの振動、エンドミルの倒れなどが起こりやすくなります。

 

ですから、せっかくCAMや対話システムを使って、簡単にZ切り込み量を細かく分割できるのであれば、

  • 同時切削刃をできるだけ少なくする。
  • Z切り込み量を細かくし過ぎて加工時間が長くならないようにする。

この2つが両立する、Z切り込み量を選定すべきです。

加工時間を短くしたいために、Z切り込み量を多くとれば、同時に接触する刃の数が多くなるのは、容易に想像できると思います。

 

では、同時切削刃が起こらない、つまり1枚の刃で切削できる最大のZ深さは、どのように計算すればよいのでしょうか。

 

その計算は、エンドミルの直径1周分を1枚の平面に引き伸ばして考えます。

まずは、1枚の刃だけで考えてみますが、リード角がありますので、φ10のエンドミルの場合、その平面の状態は下図のようになります。

エンドミルの周長とリード角

 

これを、2枚刃と4枚刃、それぞれの状態で見てみると、下図のようになります。

2枚刃・4枚刃のエンドミルの周長とリード角による平面図

最近使われることも多い、不等分割エンドミルではなく、等分割エンドミルの場合の図になりますが、前述した1枚刃の状態の図と比較して、図の中に同じ角度の線がそれぞれ、刃の枚数に応じて追加されています。

 

この追加された斜めの線が、2枚刃・4枚刃、それぞれ増えた分の刃の線になります。

1枚刃の図にあった斜めの線のすぐ右隣にある線が、エンドミルが回転している際、次に切削面に接触する刃になるわけですが、例えば、上図(左)の2枚刃の場合、27.19ミリよりも深いZ切り込み量で立壁の仕上げ切削を行うと、縦の一点鎖線が示すように、同時に2枚の刃が接触することになります。

 

上図(右)の4枚刃の方は、2枚刃に比べると4枚の刃の間隔が狭いため、同時切削刃になるまでのZ切り込み量が浅くなり、13.6ミリよりも深くなると、同時に2枚の刃が接触します。

 

ここから読み取れることは、例えば、

  • ワークやクランプの剛性により、切削振動が起こりやすい。
  • BT30のツールホルダーを使用しているなど、機械剛性があまり強くない。
  • ±01公差などかなり高精度な仕上げ加工を行いたい。

といったような場合において、よりデリケートに切削したい場合には、同時切削刃が起こるZ切り込み量よりも浅く切削した方がよく、また4枚刃よりも2枚刃の方が、同時切削刃が起こるまでのZ切り込み量は深くとれるということです。

ただし逆に、4枚刃や6枚刃など多刃エンドミルは、

  • 芯厚が太い。
  • 送り速度を上げられる。

といった理由により、加工生産性を高めることができますので、仕上げ加工においては積極的に使っていきたいところです。

 

さて、では次に工具径の違いによる、Z切り込み量の違いを見た場合の状態が、下図のようになります。

上図のそれぞれを見てみると、φ10よりも、φ6エンドミルの方が、同時切削になるまでのZ切り込み量が浅いです。

 

ここから読み取れることとして、

  • 工具径が大きい方が、同時切削刃になるまでのZ切り込み量が深い。

ということですから、そもそも工具径が太い方が切削負荷による倒れに対しての剛性が強いということもあり、加工生産性の点からも太い工具を使った方が送り速度を上げることができ、精度・工数削減、いずれの観点からも良い結果が得られます。

 

参考として下図に、φ10とφ20ミリでの違いも掲載しておきます。

太い工具の方が同時切削刃までのZ切り込み量は深くとれる

 

 

最後に、エンドミルのリード角の違いによる、同時切削刃までのZ切り込み量の違いを見ていきたいと思います。

エンドミルのリード角の違いによる同時切削刃までのZ切り込み量の違い

これを見ると、まず上図の真ん中と左の図の違いとして、同じ径のエンドミルでも、リード角の違いによって、同時切削刃になるZ切り込み量が異なってきます。

ここから読み取れることとして、

  • リード角が大きい方が、同時切削刃になりやすく、許容されるZ切り込み量が浅くなってしまう。

ということになります。

同じ工具径であってもリード角が大きくなると、同時切削刃までのZ切り込み量は浅くなりZ切り込み回数は多くなってしまいますが、そもそもリード角を大きくすることは加工負荷を低減することを目的としていますので、その分、リード角の小さい工具よりも送り速度を上げることができ、切り込み回数が増えるデメリットは相殺できるとも考えられます。

 

したがって、デリケートに立壁を仕上げたいときは、

  • リード角の大きい工具を選ぶ。
  • 同時切削刃にならないZ切り込み量を選ぶ。

という方向性がよろしいのではないでしょうか。

 

さらに、上図の真ん中と右の図を比較すると、リード角が大きくても、やはり刃の数が多い4枚刃の方が、同時切削刃になるまでのZ切り込み量が浅くなります。

 

この件も踏まえ、デリケートな立壁仕上げを行うときには、

  1. 切削抵抗の少ないリード角の大きなエンドミルを使う。
  2. 送り速度が上げられる刃数の多いエンドミルを積極的に使う。
  3. 同時切削刃にならないZ切り込み量を選定する。
  4. Z切り込み量が細かくなり過ぎると、Z切り込み回数が増え、加工時間が伸びるため、その際の工具選定は慎重に行う。

という順で考えるのがよろしいのではないでしょうか。

 

ただし、あくまでも加工品質と加工工数は、相反するものですので、過剰品質にならないよう、充分にお気を付けください。

 

一段上の加工技術者を目指す皆さんには、一つひとつの加工条件に根拠を持って取り組んでいただきたいと思っております。もしよろしければ、参考にしてみてください。

 

 

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マシニング加工における荒取り加工条件の標準化の重要性

荒取り加工条件の標準化

当事務所のコンサルティングにおいては、特に標準化という点を重要視しております。

 

その標準化を行ううえで、特に多いのが、マシニング加工における荒取り加工条件の設定があります。

 

なぜ、このテーマにおいて、標準化が必要になるかというと、例えば、スローアウェイの工具を使って荒取りを行う際、そこで必要になるS値・F値について、多くの方が使用する工具カタログに記載されている推奨条件をそのまま使用しているという理由があるからです。

 

しかし、この推奨条件は万能でしょうか?

 

 

例えば、下図のように、荒取りする前提が異なる場合、それでも、推奨値としてS値・F値は同じでしょうか?

マシニングの荒取り加工の断面積

 

実際のところ、変えることはなく毎回同じ設定にしているオペレーターも多いと思います。

 

しかしながら「削り屋」としては、下図のように、少なくとも「送り速度」については、変えたいところです。

マシニング切削の断面積の小さいとき

マシニング切削の断面積の大きいとき

その目安は何になるのでしょうか。

これは、上の2つの図に記載されている面積×工具の進行距離(長さ)、つまり切削する体積になります。具体的には、工具が1回転するときに切削する体積です。

 

マシニング加工における切削体積

 

この考え方を使って、切削体積から工具の送り速度に換算する条件式に当てはめるといった標準化を行うと、効率的かつオペレーターごとの個人差がない荒取り加工ができるようになります。

 

当事務所では、そのベースとなる計算式をご提供して、マシニング加工条件の標準化をサポートしております。

 

ご興味がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

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【OJTにおける教え方のポイント】CAM作業での事例にて

 

普段、製造現場で行われているOJT、もう何回も教えているという先輩方もいらっしゃると思いますが、気を付けなければいけない点があります。

 

そもそも、金型製作や機械加工の仕事が難しいという理由として、作業するために必要となる知識と技能を、まず身に付けなくては、そもそも仕事自体ができないということがあります。

これが手順書などで決まった作業を行うサービス業や小売業の現場とは違うところです。

 

この知識と技能が、先輩から後輩へ教えられていくのですが、その教え方が曖昧になっているため、せっかく教えたことが、正しく現場で使われていないという状況をよく見かけます。

 

先日、このような話がありました。2次元CAMを使った切削加工についてです。

 

下図の中の、赤い線の部位の貫通形状の切削加工を行うにあたり、当事務所でも使っているhyperMILLの2D加工の機能を使い、どのように加工したらよいかという初歩的な質問を、まだCAMに慣れていない加工者さんから受けました。

切削加工部品の一例

 

 

この形状を、CAMを使って荒取り加工(貫通)するにあたり、次の選択肢があると思います。

  • ポケット加工の機能を使う。
  • 輪郭加工の機能で対応する。

 

それぞれを試したところ、下図のようなパスが出ました。

 まず、ポケット加工機能で出したパスが、こちら(切削距離の合計:542.4ミリ)。

ポケット加工機能で出したパス

 

次に、輪郭加工の機能で出したパスがこちら(切削距離の合計:431.3ミリ)。

輪郭加工の機能で出したパス

 

 

結局どちらの機能でも、問題なく荒取り加工ができることがわかりました。

 

ここでもう一つ、質問の回答に補足をしました。

「こういった加工のとき、どちらを優先して使うべきか」です。

 

「基本的に輪郭加工を優先に考え、次に輪郭加工で対応出来なかったらポケット加工を使う」と、回答しました。

 

つまり、輪郭加工の機能を優先して使うことを、まず先に検討するべきだということです。

 

理由は、先ほどのパスの出方にあります。輪郭加工と比較すると、ポケット加工は一筆書きになっているため、同じところを再度回ることで軌跡の総距離が長くなっています。

 

ポケット加工の機能は、パス軌跡は基本的にオートマチックにCAMに計算させるため、人間がコントロールできる余地は少ないです。

そのため、今回の事例においては、必要最小限の軌跡で加工している輪郭加工よりも、ポケット加工は、複雑に細かく動き、無駄のある軌跡になっています。

本来、2Dの切削加工においては、ポケット加工で荒取りを行い、輪郭加工で壁面を仕上げるというのが、CAMソフト側の思惑だと思いますが、ことユーザー側の加工効率を考えた場合、その限りではありません。

 

特に、一品だけの加工ではなく、数ロット加工するとなった場合、ムダな軌跡は、その数量分だけロスが多くなります。

 

やはり、一歩上を目指す技術者としては、パスを自分でコントロールできる機能を優先的に選ぶべきでしょう。

 

私が使用しているhyperMILLの2D切削においては、なるべく輪郭加工を使った方が、加工効率のよい荒取り加工のパスを出力させることができます。

 

加工範囲が広いなどの理由で、輪郭加工では対応が厳しいという場合、次の手段としてポケット加工の機能を使うという順番で考えると良いと思います。

 

ところで、今回のコラムの本題は、この機能についての解説ではありません。

 

OJTで教えるときに重要なこと」についてです。

 

今回の、輪郭加工とポケット加工のように、対象とする課題について、①対処方法の選択肢と、②どのような優先順位で考えるべきか、理由と共に教えてあげないといけないということです。

 

これについては、企業ごとに、優先順位が変わっても構いません。それが会社の持つノウハウです。

 

前述した輪郭加工とポケット加工についての考えが、必ずしも唯一の正解というわけではありません。

 

要はその優先順位が、教える人のなかで明確になっていて、それをきちんと後輩に教えることが出来ているかどうかがポイントです。

 

そういった教え方でなければ、知識だけ増え、頭でっかちになり、適材適所で知識を使うことができない加工者に育つか、そもそも覚えることができず教えたことがいつも素通りしてしまうか、どちらかになってしまいます。

 

やはり、金型製作や機械加工業は、応用力があってナンボなので、この応用力をどう育てていくか、ここが難しいところです。

 

普段行っている先輩から後輩へのOJT、ぜひ実のあるものとして、よい教育活動を行っていただきたいと思います。

 

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エンドミル加工の仕上げ送り速度をどこまで上げてよいかわかりません。どう考えたらよいですか?

底面仕上げの加工条件についての指導会

 

「エンドミル加工の仕上げ送り速度をどこまで上げてよいかわかりません」

 

先日、クライアントの金型メーカーさんから、このような質問を受けました。

マシニング加工を担当している加工者さんからです。

 

そのときの状況を細かく説明しますと、そのクライアント企業さんでは、CAMでNCデータを作成する人と、マシニングのオペレーターさんは、きっちりと分かれていて、マシニングのオペレーターさんは、機械に材料と工具、プログラムをセットする段取りが主な仕事です。

 

その弊害として、単なるドリルの穴あけ加工や、エンドミルによるフェース面加工においても、CAM専任者がNCデータと指示書や段取り図を作っているため、間接コストが大きくなっているばかりか、CAM専任者は機械から離れているいため、工具のカタログどうりでしか加工条件を設定することができない状態になっていました。

 

しかし、加工に詳しい方でしたら、お気づきかと思いますが、実際にエンドミル加工を行う際には、取りしろがガッツリと多い荒取り加工から、サラサラとしか削らない仕上げ加工など、加工の状況は多岐にわたります。

しかし、工具のカタログに書いてある条件表は、被削材(ワーク)の種類と、加工深さ(ap)・加工幅(ae)を前提条件とした、1種類もしくは2種類の主軸回転数とテーブル送り速さしか記載されていない場合が多いです。

 

まさにそのクライアント企業さんでは、荒取りも仕上げも、カタログ記載の加工条件でしか使っていませんでした。

当事務所の現場診断により、その点に気づき、これはまず、マシニングのオペレーターさんに、しかるべきスキルを持ってもらう必要があるということで、テスト加工する題材を取り上げ、切削加工をしてもらっていたところ、タイトルの質問を受けたというわけです。

 

具体的には、被削材(ワーク)材種はS50C、加工する深さは35ミリ、取りしろとなる加工幅は0.1ミリ(ae)であり、φ16の超硬フラットエンドミルによる側面切削の仕上げを行っている最中でした。

 

深さ方向の加工は、7回に分けてスライスしていましたので、1回あたりの切り込み深さ(ap)は、5ミリでした。

使っているOSG社のフラットエンドミルのカタログ条件値は、主軸回転数は、S800、テーブル送り速さは、F200でした。

 

仕上げ加工中の様子を見ていたところ、機械の振動もなく、主軸のロードメーターもほとんど振れていない様子でしたので、加工時間の短縮は、製造コストの削減につながると、オペレーターの方に説明し、送り速度を上げるよう助言しました。

 

しかし、カタログ推奨条件は、S800とF200となっており、これまで、この条件以外で加工したことがないとのことで、どこまで条件を上げられてよいかわからないといった相談を受けました。

 

そこで私は、逆に質問しました。

そもそも図面には、今加工している部位の加工面粗さは、▽▽となっているが、今の加工条件だと、どのレベルを狙っているのかと。

 

それについてもわからない状態でした。

そこで、次の簡易計算式を紹介し、実際に使用している工具と加工条件で、切削しているワーク側面の理論仕上げ面粗さ(下図におけるRy部)を算定してもらいました。

エンドミルによる理論仕上げ面粗さ

エンドミル加工による理論仕上げ面粗さ

西 嶢祐 (著)  (2006/11/1)「続 現場で役立つ切削加工の勘どころ―「削り屋」からのモノづくり提言」より

 

簡易計算式

理論仕上げ面粗さ(山の高さ(Ry)、単位ミリ)の簡易計算式③

 =(①工具1回転あたりの送り量(ミリ)の2乗÷②8×工具半径)

 

①計算式の分子:「工具1回転あたりの送り量(ミリ)の2乗」について

テーブル送り速さは、F200ということで1分間に200ミリ進み、主軸回転速さは、S800ということで1分間に800回転します。

したがって、同じ1分間に工具は、800回転まわり、200ミリ進むので、この200ミリを800で割ってあげれば、工具が1回転まわるとき、何ミリ進むのかが決まります。

200÷800=0.25ミリ

ということで、工具が1回まわるごとに、0.25ミリ進んでおり、ちょっと乱暴な表現ですが、これが理論的な切りくずの厚みのようなものです(実際は他の要因も影響します)。

この数字を2乗したものが、0.0625となり、今回の加工条件における、分子側の計算結果です。

 

②計算式の分母:「8×工具半径」について

今回使用している工具は、φ16でしたので、計算式には、下記のように代入されます。

8×(16÷2)=64

 

③計算結果:「理論仕上げ面粗さ(山の高さ(Ry)、単位ミリ)」について

①の結果:0.0625÷②の結果:64≒0.00097

ということで、計算結果は、0.00097ミリ (=0.97ミクロン)となります。

 

ということで、現在の加工条件では、計算によるRy部の高さは、0.97ミクロンでした

 

ここで、▽▽相当の仕上げ面粗さとは、どの程度を指すのでしょうか。

下の表の「算術平均粗さ(Ra)と従来の表記の関係」を見ますと、▽▽に該当する「最大高さRy」は、12.5s~25sとなっています。

 

算術平均粗さ(Ra)と従来の表記の関係

http://jp.misumi-ec.com/maker/misumi/fs/tech/30.html

「 〔技術データ〕表面粗さ| 株式会社ミスミ」サイトより (最終閲覧日:2016年5月1日)

 

 

これは、▽▽相当の仕上げ面粗さ(最大高さRy)は、12.5ミクロンから25ミクロン相当だということを表しています。

 

代表的な表面粗さの求め方(最大高さ(Ry))

http://jp.misumi-ec.com/maker/misumi/fs/tech/30.html

「 〔技術データ〕表面粗さ| 株式会社ミスミ」サイトより (最終閲覧日:2016年5月1日)

 

 

今回、OSG社のφ16エンドミルで使用した加工条件で計算した理論仕上げ面粗さ(Ry)は、0.97ミクロンでしたので、12.5ミクロンから25ミクロンと比較すると、かなり過剰品質となってしまう条件だったことがわかります。

 

前述したように、工具メーカーのカタログに記載している加工条件は、ある意味、工具のセールスポイントである、「どこまで過酷な条件に耐えうるか」といった、主に荒取り加工の限界条件を記載していると考えられます。

ですので、仕上げ時の加工条件としては、むしろ遅い条件になってしまう場合があります。

 

そこで、先ほどの簡易計算式を変形して、どこまで送り速度を上げられるかを計算してもらいました。

 

先ほどの簡易式

③理論仕上げ面粗さ(Ry、単位ミリ)の簡易計算式

 =(①工具1回転あたりの送り量(ミリ)の2乗÷②8×工具半径)

 

変形式

①工具1回転あたりの送り量(ミリ)

 =√(ルート)(②8×工具半径×③理論仕上げ面粗さ(Ry、単位ミリ))

 

ポイントは、③の理論仕上げ面粗さ(Ry)に、新たな狙い値となる、12.5s相当の12.5ミクロン(=0.0125ミリ)を代入することです。

早速計算してみると、

8×(16÷2)×0.0125=0.8

となり、これをルート計算すると、工具1回転あたりの送り量(ミリ)が計算されます。

√(ルート)0.8≒0.894ミリ

 

今回のφ16フラットエンドミルの1分間あたりの工具回転数は、S800なので、先ほどの0.894×800を計算すると、1分間あたりにテーブルが何ミリ進むかといった、「テーブル送り速さ」が計算できます。

0.894ミリ×800≒715ミリ

 

この計算により、今回使用した工具において、工具の回転速さを変えずに、必要な仕上げ面粗さを▽▽までで良いということであれば、テーブル送り速さF値は、F715まで上げてよいということがわかります。

削りしろであるae値は、0.1ミリ程度と、ほとんど切削負荷のない状態の加工なので、2倍の送り速度であるF400で加工しても、加工後の寸法値と面粗さには、全く問題ありませんでした。

なお、F715まで上げた場合に、切削負荷がどこまで上がってしまうかという問題は別で考慮する必要はあります。

 

このように、実際の加工においては、荒取りと仕上げなど、さまざまなケースがあるので、画一的にカタログ記載の条件値だけで加工してしまうと、本来上げられる条件値まで上げられず、無駄に加工工数を増やしてしまうことになります。

 

今回のような理論仕上げ面粗さの計算は、それほど難しくないので、ぜひ使ってみて、根拠のある送り速度を実現してください。

 

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

 

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング

代表:村上 英樹(中小企業診断士)

愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

 

【技術ワンポイント】エンドミルのリード角の強弱の使い分けについて(ハイヘリカル・エンドミルなど)

 

エンドミル側面の刃のねじれの角度のことを、「ねじれ角」とか「リード角」と言います。

また、下図のように、ねじれ角度の強いエンドミルと、弱いエンドミルがあります。

エンドミルのねじれ

http://jp.misumi-ec.com/maker/misumi/fs/tech/monoq/basic/detail/detail29.html

「ものづくりQ&A 基礎編 エンドミル加工 | 株式会社ミスミ」サイトより (最終閲覧日:2016年4月17日)

 

ねじれの強いエンドミルを、ハイヘリカル・エンドミルと呼ぶこともあります。

今回は、このねじれ角が違うことにどんな意味があり、どう使い分けるかに触れてみたいと思います。

 

まず、ねじれ角のあるエンドミルのねじれ角度は、30度くらいが一般的です。

そして、ねじれ角度が大きくなると(上の図で言う「強ねじれ」)、大工さんが使うカンナのように、切削の切れ味はどんどん良くなります。

 

その理由は、同じ切削送り量ならば、切りくずの厚みが薄くなることで、切削抵抗が下がるためです。

切削抵抗の影響要因の中で、切りくずの厚みの影響は非常に大きく、その厚みを薄くできることで切削時の抵抗が下がります。

横切れ刃角と切りくず厚みの関係

http://carbide.mmc.co.jp/technical_information/tec_turning_tools/tec_hsk-t/tec_turning_technical/tec_turning_cutting_edge

「横切れ刃角/前切れ刃角/切れ刃傾き角 | 三菱マテリアル株式会社」サイトより (最終閲覧日:2016年4月17日)

 

上図の一番左のケースが、ねじれ角度が0°の場合、一番右が30°の場合です。

着目したいのが、hで示されている切りくず厚さであり、0°よりも、30°の方が、hの切りくず厚さが薄くなっています(0.87hとなっているので、0°の場合の87%の厚さになっている)。

 

このねじれ角度がもっと大きくなれば、さらに切りくず厚さは薄くなります。

その最たる例が、数年前に一世を風靡した、下図のような「高送りカッター」です。

http://www.sandvik.coromant.com/ja-jp/knowledge/milling/application_overview/face_milling/high_feed_milling

「切込角が小さなカッター | サンドビック株式会社」サイトより (最終閲覧日:2016年4月17日)

 

これら「高送りカッター」などと呼ばれる工具は、横方向の刃の角度を15°など、極端に寝かせ、同じ送り量であっても、ねじれ角度の少ない工具よりも、5倍以上、切りくず厚さを薄くできます。

言い換えると、同じ切りくず厚さであれば、ねじれ角度の少ない工具よりも、5倍以上、送り量を上げることができます。

もし興味があれば、図を描いてみると、よくわかります。

 

さて、エンドミルのねじれ角について、前述したように切れ味、切削性に影響があるわけですが、加工品質にどのような影響があるのでしょうか。

切削性にとても良い影響のある、強ねじれエンドミルですが、加工品質において、一つ注意点があります。

 

0°のものと、下図の「工具」のような、ねじれ角の強いものを比較すると、わかりやすいのですが、強ねじれのエンドミルは、下図のような「側面切削」において、各側面の刃が材料に接触するタイミングに、時間差が生じるので、ねじれが強いほど、うねりが生じやすくなります。

エンドミルの側面切削

http://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/110600014060/

「XACシリーズ超硬ハイヘリカルエンドミル 高硬度鋼加工用・多刃・45°ネジレ/レギュラータイプ | 株式会社ミスミ」サイトより (最終閲覧日:2016年4月17日)

http://jp.misumi-ec.com/maker/misumi/fs/tech/monoq/basic/detail/detail30.html

「ものづくりQ&A 基礎編 エンドミル加工 |  株式会社ミスミ」サイトより (最終閲覧日:2016年4月17日)

 

まとめると、ねじれが強い工具は、切削性、切れ味は上がるので、仕上げ面粗さは良くなりますが、例えば、立ち壁の深いポケット切削などの場合、加工面にうねりが出やすくはなりますので、留意したいところです。

 

それと、もう一つ留意点があります。

薄板ワークの加工に使用すると、弱ねじれのエンドミルに比べて、ワークのビビリが発生する可能性があります。

 

下の右図のように、横方向の刃に角度がつくと、切削時に上下方向に力が分散します。

横切れ刃角による力の分散

http://carbide.mmc.co.jp/technical_information/tec_turning_tools/tec_hsk-t/tec_turning_technical/tec_turning_cutting_edge

「横切れ刃角による影響 | 三菱マテリアル株式会社」サイトより (最終閲覧日:2016年4月17日)

 

つまり、エンドミルを引き抜いたり、押し込んだり、はたまた、ワークを上下方向に押したり、引き込んだりする力が発生します。

 

昔、ハイス製の太いラフィング・エンドミルの重切削加工において、エンドミルが抜けるというのがよくありましたが、最近はそういった工具の使用も減ってきたので、工具が抜け落ちるというのは少なくなったようですが、ワークに対する影響は考慮しなくてはいけません。

 

まとめると、ハイヘリカル工具などの強ねじれのエンドミルを使用するにおいては、薄板ワークや、剛性の強いクランプの出来ないワークにおいては、ビビリの発生確率が高まります。

 

最後に、刃持ち、工具寿命の影響についてですが、強ねじれのエンドミルの特に、先端部においては、下図のような刃先の先端角度が鋭利になるため、欠損しやすくなります。

エンドミルのシャープコーナー部

http://nachi-tool.jp/blog/index.php?e=37

「ギャッシュランドとシャープコーナの比較 | 株式会社不二越」サイトより (最終閲覧日:2016年4月17日)

 

したがって、基本的には、ねじれの弱いエンドミルよりも、硬い材料には向かないと言えます。

ただし、最近では、靭性を改善し、高硬度用のハイヘリカルエンドミルも販売されているので、全てに当てはまるわけではありません。あくまで原理・原則です。

しかし、工具を使い分ける・使いこなすためには、原理・原則を知っておくことは重要です。

 

ここで、ねじれの強弱によるエンドミルの特性を、各評価指標ごとに比較するとこのようになります。

  • 送り方向の切削抵抗
    • 弱ねじれ<強ねじれ(良)
  • 上下方向の切削抵抗
    • 弱ねじれ(良)>強ねじれ
  • 仕上げ面粗さ
    • 弱ねじれ<強ねじれ(良)
  • 加工面のうねり
    • 弱ねじれ(良)>強ねじれ
  • 刃先先端の欠損リスク
    • 弱ねじれ(良)>強ねじれ

 

加工形状や求める精度、品質、コストなどを勘案し、使い分けたいものです。

 

 

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

 

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング

代表:村上 英樹(中小企業診断士)

愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054