金型・部品加工業専門コンサルティング

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株式会社 建和のコンサルティング事例(型技術2019年6月号掲載)

株式会社 建和のコンサルティング事例

本号で紹介するプレスメーカーは、株式会社 建和(愛知県安城市 TEL 0566-92-6295)である。本企画で同社が登場するのはこれで3回目である。

 

筆者は、定期的に同社の技術者教育を担当させていただいており、今回はトライと金型保全担当者の集合教育と個別指導を担当した。

 

以前紹介したとおり同社の金型製造は、全工程で3次元CADによるペーパーレス化したプロセスが完成しており、機械加工内容や寸法公差などは設計データ内に包括することができている。

 

したがって同社のトライ担当者は、下記の◇印で示す2次元設計を主体とする金型メーカーのトライ担当者に要求されるようなスキルに加え、さらに☆印で示すCADのスキルまで要求されることになる。

◇プレス作業スキル

◇2次元レーザー加工機の作業スキル

◇金型の構造知識

◇プレス加工の全般知識

☆2次元、3次元のCAD操作スキル

 

そこで筆者は、現在のトライ担当者に対し、同社が使用しているCADのVISIを使った個別マンツーマン指導を行った。

図1 トライ担当者によるプレス作業の様子

 

またトライ担当者に加え、金型保全担当者に必要な知識として、金型鋼材や金型構造、金型設計、トラブル対策などの集合教育を行った。ただしこの内容については、2次元設計を主体とする金型メーカーと違いはなく、プレス金型を扱う技術者には必須の基礎知識であると考えている。

 

今回トライ担当者に行った個別教育の内容

3次元CADのVISIの操作及び、金型のトライ作業に必要となる2D及び、3Dモデルの編集作業スキルを習得するための指導を行った。

 

具体的には、次のような指導を行った。

  1. 2D作図とその変更修正操作
  2. 3Dモデリングとその変更修正操作
  3. プレス製品の3Dモデルから冶具の設計をする演習
  4. パンチ・ダイの3Dモデルから金型の構造設計をする演習

 

この指導のポイントは、設計データを変更修正するスキルを中心に行った点である。

 

すでに作図された2Dデータや、モデリングされている3Dデータの意図を読み解き、変更してはいけない重要な箇所の寸法は崩さず、必要な箇所のみを調整するための手順と操作について指導を行った。

 

また「事例研究」という方法により、同社で扱っているプレス製品や金型の事例を用いて、ケースバイケースで異なる状況に応じたセオリーを学習してもらった。

 

4.の「パンチ・ダイの3Dモデルから金型の構造設計をする演習」については、同社の設計プロセスである、①同社社長がモデリングし、②解析ソフトを使って調整したパンチ・ダイの3Dモデルを受け渡され、③その後の構造設計を行う、といったところまでの技能を習得する計画である。

 

この教育については、現在実施中であるが、6か月の習得期間を見込んでいる。

 

今回行った集合教育の内容

トライ工程と保全担当者合わせて3名に行った集合教育について、同社から下記内容の基礎知識を習得させたいという要望があり、その内容に沿った教育を全5回で行った。

  • 金型で使用する鋼材の基礎知識
  • 焼入れ熱処理の基礎知識
  • コーティング技術の基礎知識(窒化を含む)
  • 硬度表記の意味について
  • 現場担当者も必要な金型設計の基礎知識
  • 切削加工の基礎知識
  • 面粗さの基礎知識
  • 三角関数の使い方

 

この指導項目の中で、「金型で使用する鋼材の基礎知識」と「現場担当者も必要な金型設計の基礎知識」について、保全作業との関連について見てきたい。

 

金型で使用する鋼材の基礎知識と保全作業

内製された金型や、協力会社である金型メーカーから調達した金型を量産で使用していく中で、金型鋼材の選定が原因となる金型トラブルが発生する事例は多く存在する。

 

例えば、上型パンチの下に配置されるバッキングプレートが、コスト削減のためSS400を使用しているなどである。

 

同社のプレス製品は、590Mpa以上のハイテン材が使用される部品が多く、特に抜き加工においては、金型に強い荷重がかかる加工が多い。

 

この場合、生産ロット数に配慮した金型鋼材が選定されるべきで、同社の金型保全担当者としては、こうした問題点を見抜く見識が必要になる。

 

このような知識を身に付けるため、今回の集合教育において、「SS400とS50Cの違いは?」「SK3(現SK105)とSKD11の違いは?」など、鋼材の使い分けを中心とした指導を行っている。

 

現場担当者も必要な金型設計の基礎知識

一見、保全担当者には不要な設計知識と思われるかもしれないが、保全担当者は金型に起こったトラブルについて、再発防止のために設計へのフィードバックという作業が必要になる。

 

量産加工中に、もし金型トラブルが発生すれば、事は急を要するためまずは応急的な処置がとられる。例えばパンチが折れたり、ダイスが割れたりといったトラブルに対する処置がある。

 

また順送プレスであれば、跳ねあがりや腰折れ、吊り上がり防止のための追加部品を取り付ける応急処置もある。

 

そういった金型は、設計上の問題であれば、生産計画のロット数が打ち終わり次第、プレス機から降ろされるタイミングなどで、再発しないよう恒久的な対策が取られる。

 

さらにもう一段階、この先の「標準化」プロセスが必要である。

 

例えば、金型A、金型B、金型Cなど、個々の金型(製品)それぞれに対してとられる対策が応急処置や恒久処置だが、発生するトラブルごとにカテゴリーを分け、複数の金型で共通の対策を設計段階から盛り込んでいくのが「標準化」の対策になる。

 

例えば、順送プレスであれば、カス上がり対策としてストリップレイアウトの外形トリムや分断パンチ形状に引っ掛かりを設けるとか、吊り上がり対策で上型に、板厚や形状に応じた一定のルールで払い機構を設けるなどの標準化がある。

 

こうした標準化のプロセスに保全担当者も参画していくため、設計の基礎知識が必要となる。

 

そこで筆者の集合教育においては、保全担当者にも設計の基礎知識を習得してもらっている。

 

集合教育の効果

昨年、筆者は同社の管理者を中心に、同様の基礎内容及び、中級レベルの集合教育を行っている。

 

以後その教材を使ってもらい、筆者が指導した管理者が次は講師となる、社内教育体制の循環を作ってもらう流れを想定していたが、今回は、外部の専門家による教育も加えることで、受講する若手に一定の緊張感を持たせ勉強に取り組ませていきたいという方針になった。

 

集合教育の途中及び、最後回には、講義全般の内容を取り入れたペーパーテストにのぞんでもらい、一定の成果を確認することができた。

 

今後の同社の取り組み

2019年は年明け早々、2次元ファイバーレーザー加工機を導入するなど、同社は積極的な設備導入を図る中、人材の技術力強化にも余念がない。

 

同社の構内通路には、全社員共通のスキルマップが掲示され、計画的な社員教育を行っている。

図2 同社構内のスキルマップ

 

今回のトライ・保全担当者への集合教育も、その社員教育計画の中での取り組みである。

 

3次元設計によるペーパーレス化と共に、機械設備面の充実も図り、それを操る技術者の強化により、独自の競争力を高めていこうとする同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

 

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ユーアイ精機株式会社のコンサルティング事例(型技術2019年5月号掲載)

ユーアイ精機株式会社のコンサルティング事例

本号で紹介する金型メーカーは、ユーアイ精機株式会社(愛知県尾張旭市 TEL0561-53-7159)である。本企画で取り上げるのは3回目となる。

 

筆者は毎年、同社で採用される新卒社員の技術教育を担当させていただいており、今回は同社の若手社員2名に行ったプレス金型設計におけるサーフェースモデリングの教育について紹介する。

 

同社の現状

同社は自動車向けのプレス製品について、試作向けと量産向け、それぞれで用いる金型を製造する事業を行っている。試作向けの金型については社内で設計を行う体制がとれているが、量産向け金型は社内設計体制をとることができず、これまで外注対応で行ってきた。

 

そのため、外注の設計事業者が対応できる納期に依存する形となり、量産向け金型においては同社の武器である短納期対応がとれずにいた。

 

そもそも、それぞれの金型設計の違いとして、顧客から支給される3次元の製品モデルから行うモデリング作業の複雑さに違いがある。

 

試作向けの金型は通常1工程の成形で行われることが多いため、製品モデルを金型サイズまで伸ばすというモデリング作業が中心になるが、量産向け金型は多工程で成形するため、製品形状を多段階にアレンジしてモデリングするという創造的な作業が必要になる。

 

また同社の金型はハイテン材など、工程数が多い成形難易度の高い製品が多く、これが設計人材の育成において同社を悩ませる要因になっていた。

 

そのため同社では、クリエイティブな3Dモデリングに対応できる社内人材を育成したいと考えていたが、その教育ノウハウがなくこれまで苦慮していた。

 

サーフェースモデリングに焦点を絞った指導

今回教育を行った若手社員の適正を考慮し、構造部及び意匠面まで視野に入れた設計業務ができるよう育成したいと考えた同社は、その方針で筆者にマンツーマン指導を依頼した。

図1 Solidworksで金型設計を行う伊藤一樹氏

 

実際の指導においては、3次元CADの未経験者である彼らが、基本操作の習得から実務として設計を行う直前までを想定した教育カリキュラムで行った。

 

具体的には、CADの基本操作は市販図書を使った自主トレーニングを中心に行ってもらい、実践的なプレス製品モデルを使ったサーフェースモデリング研修については、筆者が直接指導で対応するという形式で行った。

 

創造的なサーフェースモデリングを行うにあたり重要となるポイントは、ルールや作業標準を作ることではなく、モデリング上級者が遵守している作法に沿いながらモデリング作業を行うことである。

 

ここでいう作法とは、CADの操作手順をマニュアル化することではなく、対象となる製品形状に応じ、ケースバイケースでモデリング方法を標準化していくことである。

 

金型意匠面をモデリングする際の作法の例として、曲げ型や絞り型などにおいて、顧客から支給された製品モデルを使って、サーフェース面を金型サイズまで引き延ばす作業で使う作法がある。

 

具体的には、①まずトリムを解除して製品面を伸ばす、②面が伸びなければ元々ある面を再現する、③再現ができなければ自動隙間埋め機能などで面を創生するといった順番でモデリング作業を行うものである。

 

家電製品などに多い平たいプレス加工品やシンプルな直角曲げの製品では、製品モデルから金型モデルまでサーフェース面を引き延ばすようなモデリング作業は少ないが、自動車部品に多い、ほとんどが自由曲面で構成されている製品モデルでは、金型の意匠面も自由曲面がほとんどを占めるため、元々の製品モデルにあるサーフェース面を延長して引き伸ばしていくといったモデリング作業が中心になる。

 

①の「まずトリムを解除して製品面を伸ばす」というのは、このとき使う手順で、製品モデルから必要な金型サイズまでの足りない部分を作る際、やみくもにサーフェース面を作ってつなげるのではなく、できるだけ製品モデルに忠実な形状で金型モデルを作成するため、トリムでカットされているサーフェース面のトリムを解除し、それを延長して引き延ばす方が忠実に形状を再現できる。

 

②の「面が伸びなければ元々ある面を再現する」は、サーフェース面を延長しようとすると、小さい曲率半径でカールしてしまう場合や、面の延長機能が効かないため必要な金型サイズまでサーフェース面を引き延ばせないようなときに使う操作である。

 

こうした場合仕方がないので、延長が効かない元々のサーフェース面に対し、出来る限り忠実な曲率で再現することになる。

 

ちなみに、複数のフィレットが重なりあった結果、延長したいサーフェース面が消えてしまっている場合もこの手順によることになる。

 

③の「再現ができなければ自動隙間埋め機能などで面を創生する」は、②の手順の際、複数の曲面の間に接する隙間を埋めるようなモデリングを行う場合に、曲率が複雑すぎてモデリング困難なため、埋めようとする隙間の外周ラインからダイレクトにサーフェース面を作成するといった機能を使うケースのことである。

 

最近の3次元CADはこういった機能の充実が見られるが、CAMに渡す際に中間ファイルに変換されると、こういった自動隙間埋め機能により作成されたサーフェース面は、私の経験上、面が化けたり、消えてしまうことがある。

 

したがって金型の意匠面モデリングにおいては、出来る限り①や②の手順の中で、ルールドやスイープなど標準機能を使ったモデリングを推奨している。

 

このような作法を守らず、各設計者が思い思いのバラバラな操作でモデリングを行うと、別の設計者がそのモデルを引き継いで変更や修正を行う際、うまく編集ができず、ひどい場合にはイチからモデリングをし直すなどのロスが発生することもある。

 

今回受講した2名の若手社員はそうした作法を学ぶため、市販図書によるCAD操作を習得した後は、同社の扱うプレス製品の題材を用いた「事例研究」というカリキュラムによって、様々な製品形状に応じた作法を学習した。

 

同社の今後の狙い

昨年同社は、C&Gシステムズ社のCG Press DesignというSolidworksにアドインする3次元のプレス金型設計システムを導入している。

図2 CG Press Designを操作する今本智之氏

 

当面は、このソフトウェアをレイアウト設計で用いていく計画だが、このソフトウェアは3次元の構造設計を行うことができるため、現在2次元設計データで行っている量産向け金型の製作を、3次元化することを視野に入れている。

 

現状は、2次元で設計されたCADデータを、同じくC&Gシステムズ社のEXCESS-HYBRIDⅡというソフトウェアにより、部品図を作ることなくプレート加工用のNCデータを作るという効率的なプロセスで行っているが、今後はCG Press Designを用いたフィーチャー設計機能により、加工属性を付与した3次元設計データを用いたCAM作業の効率化を図ることが可能になる。

 

部品バラシ図の必要ない2次元CAMデータ対応と3次元のフィーチャー設計、製造現場がいずれにも対応できるという金型メーカーは、筆者が知る限りでは存在していない。

 

若手設計人材の育成カリキュラムの整備と、最新ソフトウェアの導入の両面で、高度な製造現場の構築を図る同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

 

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株式会社オオタ精密のコンサルティング事例(型技術2019年4月号掲載)

 

本号で紹介する機械加工メーカーは株式会社オオタ精密(愛知県豊川市 TEL0533-65-9572)である。本誌にて登場するのは今回で2度目である。

 

同社はマシニングセンターや汎用フライスなどを使って、中部地方の機械設備メーカーなどで使用される機械部品などのフライス加工を主力事業としている。

 

昨年からは、前回の本誌登場時に紹介したように、3次元CAMであるhyperMILLの導入により、それを用いた3D加工にも力を入れている。

図1 同社の加工した鋳造用金型

 

図1は鋳造用の金型の写真であり、この事例では製品モデリングから対応し、抜き勾配を付けた金型モデリングとその加工まで自社で行っている。

 

同社の強み

同社の加工の強みとして、コストと品質のバランスに配慮した、最適な機械の使い分けを行っている点がある。

 

補助金の活用などにより、同社はマシニングセンターの増設を行っているが、フライス加工全てをマシニングセンターだけで行っているわけではない。

 

使用する工具の本数、加工する穴の数、使用するエンドミルの本数などによって、汎用フライスとマシニングセンターを適切に使い分けており、これによって最適な工数で加工を行うことを徹底している。

 

昨今の金型メーカーの課題

筆者が金型メーカーをコンサルティングさせていただいている中で、まさにこの点について課題だと思うことがある。

 

その課題とは、CAMデータ作成とマシニングセンターのオペレーション業務の分業化が進み、例えば、片手サイズのプレートにキリ穴を2、3か所加工するような内容のフライス加工についても、CAMオペレーターが加工プログラムと加工指示書の作成を行い、それを受け取ったマシニングオペレーターがワークとプログラムを機械にセットして加工を行うといった、コスト面からはやや過剰とも思えるプロセスを踏んでいる点である。

 

こうしたプロセスはミスの発生防止には効果は高いが、図面を見ながら汎用フライスで手早く済ませてしまう場合の工数と、CAMデータを作成し加工指示書まで作って加工者に渡す分業での工数とを比較すると、圧倒的に汎用フライスの方が早いと思われる。

 

もちろん汎用フライスはうっかりミスのリスクがつきまとう。しかし両者の工数の差を考慮すると、例えば片手サイズのプレートであれば、ミスした時のために材料を余分に買っておいたとしても、加工部品によっては汎用フライスの方が安くできるかもしれない。そのくらい両者の工数には差があると考えている。

 

したがって加工コストの最適化のためには、CAMとマシニングオペレーターの分業について、その程度を少し抑えていくことが望ましいと考えている。

 

具体的には、マシニングセンターの手動機能を活用し汎用フライスのように利用する。簡単な穴加工や切削加工についてはハンドル送りで対応するなど、過度にCAMに依存しないことが、金型メーカーのフライス加工の工数削減につながると思われる。

 

もちろん、こうした作業を行うためには、これまでの段取り作業には重要視されなかった加工や工具に関する知識が必要になってくるため、教育によるオペレーターのスキルUPが必要になる。

 

汎用フライスとマシニングセンターのあるべき使い分け

では、汎用フライスとマシニングセンター、それぞれの持ち味を活かす使い分けとしてどのように考えれば良いのか。

 

そもそも、マシニングセンターの強みを発揮できる場面は、次のようなケースである。

  • 同じものを複数個加工するとき。
  • 使用する工具の本数が多い加工のとき。
  • 荒取りの切削体積ボリュームが多い加工のとき。
  • 高送りカッターや超硬ドリル、チップ式ドリルなど、市販の高能率工具が使用できるとき。
  • 自由曲面など3次元の加工を行うとき。
  • 長時間の無人加工を行うとき。

 

逆に、上記のマシニングセンターの強みが発揮できるケース以外の加工では、汎用フライスの強みが発揮できると場面だと言える。

 

例えば、次のようなケースである。

  • 試作品など、少量の加工のとき。
  • 多くても2、3本の工具で済む加工のとき。
  • 手動ハンドルによる手送りでエンドミル加工を行うとき。
  • 強くクランプできない異形ワークの加工などで、切削負荷を調整しながら加工したいようなとき。

 

これら汎用フライスの良さは、加工を始めるまでの時間がとても短いという点である。ハンドル送りによる加工などは、段取りしてすぐに加工を始めることができる。

 

また手送りによるエンドミル加工では、とかくマシニングセンターでは送り速度やロードメーターなど数値でしか判断できない切削負荷について、実際に手に負荷としてかかってくる切削抵抗を肌で感じとりながら、送り速度の調整を行うことができる。

 

こうした点についても、汎用フライスの経験のない最近の若手加工者が加工条件の限界がわからないといった弊害につながっていると筆者は考えている。

 

同社では昨年、未経験の若手社員が入社したが、いきなりマシニングセンターを担当させるのではなく、あえて汎用フライスから担当させることで、加工限界を理解した伸びしろのある加工者に育てる配慮をしている。

 

同社へのコンサルティング

前述したように同社は現在、金型加工に力を入れている。しかしながら、そのノウハウはまだ持っていなかったため、同じhyperMILLを使用している筆者がサポートを行うことになった。

 

コンサルティングのポイントは、微細な溝加工など金型加工特有の特殊な加工についてであった。特に微細な溝加工は、用いるボールエンドミルの加工条件の選定が難しい。

図2 鋳造用金型の微細な溝部を加工しているパス

 

筆者が金型メーカーのCAMオペレーターの作業を拝見させていただくときに気になるのが、パスの形状に関係なく、一律に工具カタログの条件どおりの送り速度を使っている点である。

 

今回の鋳造用金型にあるような微細な溝部では、工具カタログにあるような、推奨速度までは出ない。したがって機械の動作速度に配慮し、機械が追従できる送り速度に設定するのがCAMオペレーターのテクニックである。

 

一般的な機械部品の3D加工には慣れている同社であったが、今回のコンサルティングではこのような金型特有の形状加工への配慮を中心にアドバイスを行った。

 

今後の同社の成長戦略

同社は昨年、3次元測定機の導入を行い、従来よりもさらに精密で複雑な部品の加工についても保証できる体制を整えることができた。

 

今後同社の成長戦略として、これまでに受託してきた部品とは異なる機械加工に対応するため、これまで導入してきた立形マシニングだけではなく、横型マシニングや5軸マシニングなどの導入も視野に入れている。

 

同社の用いるhyperMILLは、5軸加工を最も得意とするため、今後同社が5軸マシニングを導入すれば、その強みを最大限に発揮することもできる。

 

これらの設備計画により、溶接製缶品や鋳物部品などの機械加工へも力を入れていく検討をしている。

 

最新のCAD/CAMやマシニングセンターを設備しながらも、それを扱う加工技術者の能力をフルに活かす機械の使い分けにより、競争力を高めていこうとする同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

 

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株式会社 近藤製作所のコンサルティング事例(型技術2019年3月号掲載)

 

本号で紹介する機械装置メーカーは、株式会社 近藤製作所(愛知県蒲郡市 TEL0533-67-1111)である。同社は、自動車メーカーや工作機械メーカーなどで使用される、自動装置の設計製造を行っている。

 

元々同社はストッカーなど自動装置を、標準ラインナップの中からカタログ販売する製造販売メーカーであったが、現在は顧客ユーザーのニーズにより、材料の供給からストック、搬送、加工、検査などを全て自動化するシステム一式で請け負う事業の方が多くなっている。

図1 同社が製造販売する標準自動装置の一例

図2 同社が製造するシステム一式のCGイメージと写真の一例

 

同社において、そのシステム一式の請け負い事業を支えているのが、設計部・開発部の存在である。

 

同社の強み

同社の強みとして、次のようなことが挙げられる。

  1. 幅広い顧客ユーザーに対応できる技術・設計力
    同社の顧客は、自動車メーカーやそのティア1、ティア2メーカー、また工作機械メーカーなど幅広い分野に渡っており、自動装置に要求される細かな仕様は、各社・各分野それぞれに異なっている。
    同社は、そうした幅広い技術分野に対応できる技術力・設計力がある。
  2. 顧客ユーザーごとの細かな要求に対応できる小回りの良さ
    同社の顧客ユーザーからは、直接口頭や文書などで顕在的に求められる仕様ニーズもあれば、機能や概念など潜在的なニーズとして、設計担当者が打ち合わせの中でくみ取らなければならない仕様ニーズもある。
    そうした顧客ユーザーの細かな要求をくみ取り、対応できる小回りの良さも同社の強みである。
  3. 細かなユーザーのオーダーメイド受託に対応できる設計職人集団
    前述した強みは、まさに同社を支える設計部隊の努力であり、顧客ごとの担当設計者が自律した機能を持ち、顧客からオーダーメイドで発注されるそれぞれの仕様を細かくくみ取り対応している設計職人の集団であるからこそ成り立っている。

 

強みゆえのウィークポイント

同社では、幅広い顧客ユーザーごとのオーダーメイド発注に対応してきたため、設計職人ごとの構造・ユニット・市販部品選定において自己流に派生した図面が、社内に根付いてしまった。

自律した設計職人集団であることは、同社の強みでありメリットこそ大きいが、このようなデメリットもある。

 

このため、後工程である購買・組み立て部門の効率低下を招く事態が起きていた。例えば、設計者ごとに異なる構造を採用したり市販部品を用いたりすることで、購買部門ではまとめ発注により安く購入するなど、規模の経済を活かせない不効率などである。

 

改革のためのプロジェクト発足

そこで、開発部・設計部主導による「設計改善研究会」を筆者と共に発足した。これにより、設計部門の強みを活かしつつ、会社全体としてのウィークポイントを改善できる設計管理の仕組みの構築を図ることを目指すことになった。

 

またこれまでの同社において、外注設計を含めた2D設計主体から、すでに導入を進めていた3次元設計を主体とすることへの変革も図ることにした。この研究会によって、そのための下地を1年で構築することを目標とした。

 

これまでのプロジェクトの成果

ここまで半年間続けてきたプロジェクトの進捗成果として、次の方向性が固まった。

  • 3D設計でも応用できる設計管理方式の構築
  • 自社の部品規格として、重複しない固有名称と仕様の標準化
  • 設計要件仕様書の確立(機械・電気仕様など要件定義を、詳細設計前に見える化する)

 

同社が導入する設計管理とは

ここで同社が導入していく(ア)の設計管理方式について見ていきたい。

 

これは社内で継続的に、同じかアレンジした図面を継続的に再利用していく図面の管理方法についての話である。ただし前提条件として、複数の設計者で管理・更新していく場合に限定される管理方法である。

 

というのは1人で管理していくのであれば、他者に申し伝えることは必要なく、自分のパソコンで管理するなど個人管理だけで済むためである。

 

一見、アレンジ設計した図面はそれぞれ個人管理のように見える。しかし、社内で締結方法を統一したいとか、市販部品の種類や購入先を統一し購買部門のムダ削減を図りたいなど、本来、企業の全体最適としては統一ルールを共有していかなければならない。

 

具体的に、複数設計者で図面データを管理していく方法としては、①テンプレート方式と、②データベース方式の2つがある。

 

テンプレート管理方式を採用するケース

テンプレート管理方式は、顧客ごとや、製品ごとで、図面の種類がさほど多くない場合に採用される。

 

具体的には、機械装置ごとに、アレンジ設計の基礎となる親図面(これをテンプレートを言う)を定義し、それをサーバーに保存、設計者はそこからコピーして再利用設計を行う。

 

運用上のルールとして、新たに採用したサブアセンブリや市販部品があれば、テンプレートに盛り込んで更新する。

 

ただし、それは誰でも好き勝手にやっていいものではなく、社内でそれが許されるテンプレート管理責任者を選任するなど、そのテンプレートを再利用する設計者全員に編集権限を管理していくことが必要になる。

 

データベース管理方式を採用するケース

データベース管理方式は、顧客ごとや、製品ごとの仕様により、管理・保存する図面の種類が多いときに採用される。

 

具体的な運用方法としては、設計者が自分の設計が終った時点で、どの親図面を使ったか、またその親図面にどのような変更を行ったかをデータベースに登録していく。

 

新たにアレンジ設計を行う際、設計者は過去にさかのぼって親図面を検索し、その子や孫となる派生図面に登録されている情報(過去に修正・変更した内容)を参照しながら、それらの修正を盛り込んだ新規の設計を行う。

 

データベースはこのように活用しながら、複数の設計者で最新情報を共有していくために利用される。

 

この方式のメリットとしては、一番祖先の親図面(テンプレート)を最新の状態に更新する必要がない。

 

顧客ごとや、製品ごとの仕様により、管理・保存する図面が多い場合、テンプレートを作っても、管理するテンプレート図面が多くなるだけで、せっかく更新してもそれぞれのテンプレートは使う頻度が少なく、手間をかけるほどメリットが出ない。

 

そこでどの世代の図面を使っても、最新の状態にするための情報を、別途データベースから参照することで、設計者全員が最新情報を参照できる方法を採用する。それがデータベース管理方式である。

 

同社独自の管理方式構築と今後の方向性

このプロジェクトによる外注設計も含めた一元管理体制を構築し、これまでに設計職人集団が蓄積してきたノウハウを、同社の設計資産として全員で共有していける仕組みを完成させる。

 

またその設計資産を活かしつつ、2Dから3D設計に段階的で直線的な移行を図っていく。したがって、2D・3D設計、両方に適用できる設計管理方法が必要になる。

 

それら条件に合致するのがテンプレート管理方式であり、今後管理ルールの整備と共に同社独自の仕組みとして構築し、根付かせていく。

 

高度な設計管理方式の導入により、設計職人の強みを活かした自動装置事業のさらなる強化を図る同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

 

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株式会社 近藤工作所のコンサルティング事例(型技術2019年2月号掲載)

 

本号で紹介する金型メーカーは、株式会社 近藤工作所(愛知県安城市 TEL0566-97-9551)である。

 

同社は、鍛造金型の設計・製造を行う金型メーカーであり、筆者は同社の5S活動や人事制度、QC活動などを中心にコンサルティングを行っている。

 

5S活動やQC活動は、量産系の製造メーカーでよく行われている活動であるが、個人技能への依存度が高い金型製造の分野では、これらの活動がほとんど行われていないというメーカーも多い。

 

市販書籍による5SやQC活動の教科書も、量産系メーカーを題材にしたものが多い中、金型メーカーとしてはどのように活動を行うべきか、同社の事例を元に紹介したいと思う。

 

同社の特徴

愛知県三河地区の自動車部品メーカーは、水平分業型のメーカーも多く存在し、鍛造金型を専門とするメーカーであっても、マシニング加工やワイヤーカット加工など、機械加工のみを行うというメーカーもある。

そのような中、同社は鍛造金型を専門に扱うメーカーとして製品設計から対応している点に特徴がある。

 

鍛造金型の設計工程としては、①鍛造加工の成形性を考慮した製品設計、②後加工である切削加工で仕上げる取り代を見込んだ鍛造形状の設計、③その鍛造形状を踏まえた荒型・仕上げ型・抜き型などの工程設計、④それぞれの金型のモデリング・製図を行うといった手順で行うが、同社は①の製品設計から対応できる点で顧客である鍛造メーカーから頼りにされている。

 

同社のコンサルティング前の課題

同社の金型製作にあたっては、設計~CAM~機械加工~仕上げ・磨き、溶接肉盛りなどいくつかの工程で分業体制となっており、それぞれの工程で専門とする担当者が決まっている。

図1 同社の横型マシニングと平面研削盤の作業の様子

図2 同社の溶接肉盛りした金型と放電加工機の作業の様子

 

専門作業の分業体制でありがちなのが、道具や工具など共有することもあるが、多くが個人管理になり、整理整頓の状態はその作業者自身が問題ないと考えればそのまま放置され、また改善活動も社内全体でというよりは個人任せになりがちになる。

 

同社においても、個人管理の状態が強く、5SやQC活動においても停滞していたため、筆者のコンサルティングにより改革することになった。

 

同社のコンサルティング内容【5S活動】

同社においては、まず2Sを徹底的に行うことからはじめた。2Sとは、整理・整頓をアルファベット表記した際の頭文字のSを2文字並べたものである。

 

整理とは、工場内の道具や工具を要るもの・要らないものに分け、要らないものを捨てることで、整頓とは、要るものをすぐに取り出せる状態に棚などに整然と並べることを言う。

 

前述したように、金型の製造現場など個人技能による職人の多い職場は、2Sがおろそかになりがちである。個人で完結させなければいけない分業工程が多く、複数人の流れ作業によるライン生産とは異なるところである。

金型作業では他人に配慮することが疎かになり、2S状態が悪くなりがちである。

 

通常2S活動は、赤札と呼ばれる廃棄期限を記入した小さな用紙を、在庫材や未使用道具などに貼り付け、期限が来れば、使用せず赤札が貼ったままになっている未使用品を廃棄したり倉庫に移動する。

 

同社においては、この赤札活動を行いながら、台や棚の上に置いてある道具や工具などについて、水平直角に置くといった基本的な心構えから指導していった。

 

工場内の色々な場所で写真を撮り、指導要領を作りながら何度も何度も指導とその改善を繰り返すうちに、基本的なことが製造現場に浸透してきた。

これについては、同社社長及び、2名の取締役の粘り強い説得と指導もあった。

 

こうした基本的な点を押えた2S状態が出来れば、次は「管理されている状態」を作る。

 

5S活動は、作業者自身の効率化も重要な目的の一つであるが、顧客へ納入する製品の品質を充分に確保できる整った体制があることをPRする活動でもある。

 

そのため、整った2Sの状態を維持するための管理活動を「見える化」することが重要になる。同社においては、各種の掲示物によって「管理されている状態」を作っていった。

 

さらに次のステップとして、製造現場における作業者の動線を最適化するための改善を行った。

 

具体的には各作業者が使用する道具や工具について、手元化したり、逆に共有化することで、動線距離を最小化する現場レイアウトの改善である。

 

これについては、4メートルという距離を基準にして、作業に入った状態から、道具を取りに行くなどの理由で4メートル以上の移動があるかどうかのアンケート調査を行い、4メートル以上の移動があるとされた作業から優先的に、棚などのレイアウト見直しを行った。

 

同社のコンサルティング内容【QC活動】

多くの製造現場では、小集団で行う改善活動としてQC活動を行っているところは多い。

 

QC活動では、よく使われるツールとして、QC7つ道具というものがあるが、量産型の製造現場向きのものが多い。

それとは別に、新QC7つ道具というものもあり、都度製作するものが異なる多品種型の製造である金型製造ではこちらの方が使いやすい。

 

筆者は、そもそもQC活動は問題解決の順序を学ぶ機会だと考えている。

 

そもそもQCの流れは、①テーマの選定、②現状把握、③要因分析、④解決策の立案、⑤対策の実行、⑥効果の確認、⑦標準化と歯止めといった順序で進めるが、いざ製造トラブルが発生すると、現場をよく知るベテランになるほど、要因を深く分析する前に、解決案を考えてしまいがちである。

 

また、着手するべき優先度なども、深く考慮せず、手に付けやすい問題から着手してしまうこともある。

 

QC活動は、決められた手順で進め、各手順で検討・意見するべきことをきちんと守って活動することが原則で、これにより発生した問題を徐々に絞り込みながら解決していくことができる。

 

この進め方を何度も練習することで、QC活動による問題解決の進め方を身に付けることができる。

 

QC7つ道具のうち、筆者のオススメをいくつか紹介すると、次のようなものがある。

①のテーマ選定ではパレート図を使い、優先度を持ってテーマを決める。③の要因解析では連関図を使って、自由度の高いなぜなぜ分析を行う。④の対策案の検討ではマトリックス系統図を使って、系統的に複数出した対策案の中から定量的に評価を行って選定する。

 

同社でのコンサルティングでは、実際に同社で発生した不具合事例を取り上げ、筆者も一緒になって連関図を使って要因分析を行い、対策案を考えるなどのサポートを行った。

 

今後の同社の取り組み

 同社の今後の取り組みとして、金型以外の機械部品などの、溶接(TIG、CO2アーク)・マシニング加工など、これまでとは違った仕事の受注を進めている。

 

マシニングセンタや平面研削盤、大型の放電加工機など、多くの工作機械を有する同社において、金型加工の間の隙間時間を利用して企業の収益をより高めていこうという思惑がある。

 

こうした新たな販路を開拓する際には、既存の顧客を含め、製造現場の5Sの状態や、改善活動による品質向上の取り組み状況は、顧客からよく見られて評価されるところである。

 

これまでの職人体質の良くなかった点を改革し、鍛造金型の専門メーカーの持つ技術を活かした販路開拓を進めている同社に筆者は大きな期待をしている。

 

 

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング

代表:村上 英樹(中小企業診断士)

愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

 

矢作産業 株式会社のコンサルティング事例(型技術2019年1月号掲載)

 

本号で紹介する加工メーカーは、矢作産業株式会社(愛知県豊田市 TEL0565-31-0650)である。

 

同社は自動車部品製造において、量産から試作まで幅広く携わっており、プレス、切削加工、部品アセンブリなど、多岐に渡って対応している点が技術面の強みである。

 

筆者は、同社が事業拡大を図っている5軸マシニング加工の技術者研修を担当させていただいている。

 

今回の5軸加工研修は、CAM操作主体の研修とは異なり、同社の強みである複数タイプの5軸マシニングの特性に対し、それぞれ異なった5軸加工の手法を、5軸加工用CAMであるhyperMILLでどう実現していくか、そこに着眼した内容で行った。

 

本号では、各種5軸マシニングを活かしたデータ作成方法と共に、今回の研修の取り組みを紹介したい。

 

同社の5軸加工の強み

同社の5軸加工の強みとして、大型の門型5軸、トラニオンタイプの中型5軸、旋盤主軸を持つ複合加工機タイプと、様々な形の5軸マシニングを設備している点がある。

図1 同社の門型5軸マシニング

 

図2 同社のトラニオンタイプの5軸マシニングと複合加工機

 

新日本工機(株)製の門型5軸マシニングは、5000×2500ミリの大型テーブルを持ち、主軸ヘッドが旋回および傾斜する5軸加工を行う。これにより、ワークは常にXY平面のみ移動することで、高い平面精度の加工を行うことができる。

 

三井精機工業(株)製の5軸マシニングは一般的なトラニオンタイプであり、ワークを置くテーブルが旋回および傾斜する。ワークの置き方によっては、5軸動作の際、同社の機種の中では、最も旋回距離の少ない5軸加工を行うことができる。

 

ヤマザキマザック(株)製の複合加工機は、NC旋盤にエンドミル工具を用いた5軸加工ができる機構を持ち、旋盤主軸の回転と、工具主軸の傾斜によって5軸加工を行う。同社の5軸マシニングの中では、最も大きなアンダーカット加工を行うことができる。

 

3機種の異なる構造に合わせた削りかた

3機種の長所短所に応じたCAMデータ作成が必要であり、それぞれの機種における留意点と加工ポイントは次のとおりである。

 

主軸ヘッドが旋回・傾斜する門型5軸マシニング

主軸ヘッドが5軸動作を行うため、長い工具を用いた派手な動きの旋回動作を行うと、激しくワークも追従して動くことになるため、CAMデータは注意が必要である。

したがって、仕上げ加工に5軸動作を用いる際は、同機の高い平面精度を活かした、割り出し5軸加工にて、広範囲の仕上げ加工を行う点がポイントである。

トラニオンタイプの中型5軸マシニング

5軸加工の旋回動作を行う際、ワークと工具の移動を少なくするためには、テーブルの中心にセットすることがポイントである。
工具主体で見た場合、他機種よりも安定した動きをとることができ、機械精度への配慮をそれほど気にせず同時5軸加工を用いることができる。

ただし、背の高いワークにおいて傾斜角度を可変しながら行う5軸加工を行う際には、大きく頭を振りながらの動作になるため、その際は割り出し5軸加工で対応するなど配慮が必要となる。

旋盤主軸を持つ複合加工機タイプ

旋削加工がベースとなっているため、3機種の中では、最も高い旋回精度を持っており、仕上げ加工で5軸動作を用いる際には、割り出し5軸よりも、むしろ傾斜軸を固定した同時4軸加工を積極的に活用する。

また、工具主軸の旋回角度においては、他の2機種は90~110度ほどが限界であるが、2スピンドルの旋盤加工に対応するため180度まで旋回させることができる。これにより、他の2機種には対応できないアンダーカット部の5軸加工が可能となる。

 

5軸加工における荒取り、仕上げの削りかたと機種ごとの考え方

そもそも5軸加工には、割り出し5軸と同時5軸という加工があり、割り出し5軸は、ワークに対し工具を傾けた加工を行うが、4軸目・5軸目は固定したまま同時3軸加工を行う方法を言い、同時5軸は、XYZの3軸に加え、4軸目・5軸目も可変させながら加工する方法を指す。

 

同時5軸加工を用いると、短い工具でも高い壁や深い溝においても、自由な動きでホルダー干渉を避けながら加工することができ、非常に便利である反面、工具やテーブルの旋回中心位置精度の管理や、ツール長さなどの段取り精度が、積み重ね誤差として仕上がり加工精度に影響するため、±0.01~2ミリといった寸法精度で加工することは非常に難しい。

 

割り出し5軸加工であれば、工具やテーブルの傾斜を固定したまま加工を行うため、その旋回角度精度は事前にセッティングすることもでき、同時5軸加工よりも加工寸法は出しやすい。

 

同社が扱うプレス金型のような加工寸法を要求される加工においては、派手な動きの同時5軸加工は荒取りにこそ使うことができ、仕上げ加工では割り出し5軸を用いるべきである。

 

コンサルティングでの取り組み(hyperMILLの3D加工、5軸加工での活かし方)

5軸加工においては、CAMの活用が欠かせないが、同社は、筆者と同じくhyperMILLを使っている。

 

hyperMILLは、高い壁やアンダーカット部、深い溝など、工具の侵入が困難な部位を加工するために便利な機能が色々盛り込まれている。

 

今回の研修では、実際の金型部品や機械部品を題材として取り上げ、そういった困難な部位をどういった機能で加工するかを中心にカリキュラムを組んでいる。

 

例えば、3軸加工においては、標準の送り速度が出せるレギュラー長さ工具で可能な限り多く除去加工を行い、同じ径で、段階的に長い工具を使っていく。

 

hyperMILLは、こうした工具長さによる加工エリアの分割が簡単にできる。やむを得ず工具突き出し長さが長くなり、送り速度を下げなければいけない加工をできるだけ少なくするプロセスを簡単に組むことができる。

 

また、5軸加工においては、同社の3機種に適した題材の加工ワークを選定し、それぞれの機械の持ち味を活かすための研修を組んでいる。

 

門型マシニングにおいては、荒取り加工でフレキシブルに同時5軸加工を用いて使用工具の長さの種類を少なくし、仕上げでは動作の安定した割り出し5軸加工を使って仕上げる。

 

トラニオンタイプの中型5軸マシニングにおいても、やはり仕上がり精度を気にしなくてもよい荒取りは同時5軸加工を使うべきところには使い、仕上げ加工においては、レギュラー長さ工具は、最も速い標準の送り速度が出せるため、レギュラー長さ工具で行う3軸加工と、ホルダー干渉が発生するエリアを分割し、3軸加工で届かないエリアで同時5軸加工をフル活用する。

 

複合加工機においては、円筒ワークを中心に、同時4軸加工をフル活用し、外観品質と仕上がり寸法精度の良い加工を行う。

 

今回の研修では、こうした点を押さえた実践カリキュラムを行った。

 

同社における今後の5軸加工の活用

今回の研修により、同社の加工オペレーターは、強みである複数タイプの5軸マシニングそれぞれの持ち味を活かすスキルを習得することができた。

 

昨今、5軸加工は自動車部品だけに留まらず、様々な分野で活用されており、同社も今後さまざまな分野でその技術・設備を寄与させていく計画がある。

 

応用性の高い5軸加工技術を用いた今後の同社の事業戦略に、筆者は大きな期待をしている。

 

 

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金型・部品加工業 専門コンサルティング

代表:村上 英樹(中小企業診断士)

愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

 

株式会社 建和のコンサルティング事例(2018年11月号掲載)

本号で紹介プレスメーカーは、以前登場した株式会社 建和(愛知県安城市 TEL 0566-92-6295)である。同社は、自動車部品において60tプレスから300tまでのプレス量産加工を行い、最新のサーボプレスも有効に活用している。

 

同社で発生している問題とその発生原因

440Mpaから980Mpaといったハイテン材を扱う同社では、特にショット数の多い順送型などにおいて、メンテナンス頻度が従来よりも多く発生しているという問題が生じている。

図1 破損したパンチの事例

 

特に、社内で設計製作した金型よりも、協力メーカーの金型メーカーに設計製作を依頼した金型に多く問題が発生していた。

 

その原因の一つとして、プレスメーカーにて1万、10万ショット以上打った後の金型の状態を、金型メーカーが詳細に把握できておらず、必要な強度で金型を設計できていないためだと筆者は考えている。

 

金型メーカーでは、どこまでの強度の構造を持つ金型を設計すればよいか、どれだけの強度の金型材料を用いればよいか、考慮することが難しくなっていると考えられる。

 

また昨今は、金型にかけられる予算が限られており、厳しいコストで金型製作をしなくてはならないため、金型メーカーとしても過剰な品質の設計は避けたいところである。

 

とはいえ、金型メーカーの力量が劣ってきたとか低下しているということではなく、590Mpaを超えるハイテン材の順送プレスなど、大ロットのプレス加工において、未知なることがまだまだ多く、金型メーカーとしても情報を蓄えきれていないのが実情なのだと筆者は考えている。

 

具体的な問題事例

同社で発生している金型破損・故障の多くは、①応力集中・座屈、②金型材料の選定、に起因している。

 

例えば、応力集中を起因とする破損例として、抜きや曲げのパンチに多く発生している。

 

応力集中とは、パンチなどにある凹形状部において、ピン角やごく小さな凹R形状があると、プレス加工時にかかる負荷により、パンチにかかってくる荷重が分散されず、そのピン角部や小さなR部に集中して負荷がかかってくる現象である。

 

これにより、強度計算上、折れない太さ・長さのパンチであっても、応力集中がかかってくる部位で破損してしまう確率が非常に高くなってしまう。

 

こういった形状を持つパンチは、協力メーカーで製作された金型に多かった。この傾向は現場経験のある筆者もよく理解できるが、角部にわざわざ大きな凹Rをつけるためには、エクエアエンドミル加工にくわえ、ボールエンドミル加工も追加する手間が発生する。もしくは大きなR形状を持つラジアスエンドミルを使わなくてならず、加工形状によっては使えない場合も発生する。

さらに、せっかく5Rなど応力集中を緩和するための適切な大きさを持つ凹R部を、ボールエンドミルを使って加工しても、先行して加工しているスクエアエンドミルとの境界部に微小なピン角が残っているため、そこから破損しているという事例もみられた。

図2 ボールエンドミルとスクエアエンドミルとの境界部

 

またせっかくボールエンドミルにより、大きな凹R形状が加工されていても、その切削加工面が粗いと、その粗い面の凹凸が微小な凹形状となってしまい、そこへの応力集中によって破損が発生することもある。

 

もう一つ、②の金型材料の選定による故障も発生していた。

 

例えば、抜き加工を行う金型において、パンチを保持するパンチプレートの材料について、安価なSS400を使って製作する金型メーカーは多いが、1万ショットを超える量産に使った金型をメンテナンスのため分解すると、パンチを保持するインロー部がグラグラになってしまった状態をよく見かける。

 

これについては、ハイテン材ではない普通材や、薄板の小ロット生産であれば問題ないかもしれないが、ハイテン材や厚板の順送プレス加工においては、最低でもS50Cや焼入れ処理した硬いプレートを使わないと、前述したようなグラグラな、きちんと保持できない状態になってしまい、抜き加工時に発生する衝撃により一気にパンチの摩耗・破損が進んでしまう。

 

パンチの下にあるバッキングプレートに焼入れが入っておらず、やはりSS400が使われている金型も多く見かけるが、ハイテン材をプレスする金型においては、SK105を焼入れしたプレートを使うか、パンチの下に焼入れ処理した入れ子プレートを入れるなどの対応をとりたいところである。

 

こうしたハイテン材などの難加工材を扱ううえでの諸問題のデータベースは、今現在、金型メーカーよりもプレスメーカーの方に多く蓄えられており、プレスメーカーにとってこれは大きな財産であると言える。

 

プロジェクトの立ち上げとコンサルティングの取り組み内容

そこで、代表取締役である山本道典氏は「壊れない金型づくり」をテーマに、プロジェクトとして立ち上げ、筆者と共に、自社で扱う金型を根本的に見直していく取り組みを行った。

 

具体的な取り組みステップは、次のとおりである。

  1. 基礎学習
  2. 実践応用

 

まずは、設計と製造の主要スタッフが、金型に要求される強度や、金型が壊れるメカニズムなどの基礎知識を持つための研修を行うことから始めた。

 

例えば、金型で使われる主要パーツの強度はどのように計算するべきか、金型材料の特性の違いはどのようなことがあるのかなどを学習した。

 

実践応用のステップでは、実際に破損した金型やプレス製品を事例として取り上げ、学習した基礎知識と照らし合わせ、そもそも必要であった金型要件からどのようなギャップがあったのかという視点から原因を調査した。

 

とかく金型修理については、長時間プレス生産を止めることができないことから、早急な応急処置対策を取ることが多くなるが、本来あるべき金型構造・金型強度とのギャップ分析から金型改修を行うべきである。

 

そのためには、金型設計者だけではなく、保全に関わる者も、金型構造・金型強度に関する基礎知識を持っておくべきと筆者は考えている。

 

コンサルティングの効果と同社の今後の取り組み

今回のプロジェクトにより、同社の金型改修は、応急対策・恒久対策を切り分け、計画的に進めていく体制を作ることができ、今現在、筆者と共に着手している。

 

今後の同社の取り組みとして、前回登場の際、書かせていただいたように、以前はアウトソースしていた金型製作を3年前より内製化できる体制を構築しており、解析技術や全工程の3次元データ活用、自動スケジューラーなど、積極的に最新技術を導入している。

 

その最新技術の進化形である次なる取り組みとして、3次元設計の自動化・高効率化や、プレス解析の最適化技術などの活用も、大学やITベンダとも連携しながら進めている。

 

最新技術の導入に加え、プレスメーカーとして日々蓄えている実績・経験のビックデータを、ハイテン材プレス金型の質向上という形で新たな強みとし受注競争力UPを図っている。

 

ソフトウェアの最新技術のみならず、技術者の基礎・応用能力UPとの両面で、同業他社との競争力向上を図っている同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

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愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

 

株式会社 スズキプレス金型のコンサルティング事例(2018年6月号掲載)

 

本号で紹介するプレス金型メーカーは、以前にも登場したことのあるスズキプレス金型である(愛知県愛西市 TEL0567-25-6900)。同社は、自動車のシート部品などの絞り型などを手掛けるプレス金型メーカーであり、創業から64年に渡る長い歴史がある。

 

同社が今取り組んでいること

同社は、昨年から金型構造設計の3次元化に取り組んでいる。それに伴い、以前から外注で対応していた解析業務の内製化にも取り組んでいる。

 

今回同社は、自社で使用する3次元CADとしてシマトロンを導入している。2名のオペレーターに導入教育を受けさせ、6ヶ月間の実習期間を経て、今年から徐々に設計実務での活用をはじめている。

図1 シマトロンを用いた金型設計の様子

 

同社が選定したシマトロンは、パラメトリックという機能に特徴を持つ3次元CADであり、その他プレス金型設計の省力化をサポートする様々な機能が搭載されている。

 

本号では同社の設計3次元化の導入事例をとりあげ、プレス金型メーカーが自社の金型製作に応じた3次元CADの選定について、どのような視点で選ぶべきかを見ていきたいと思う。

 

プレス金型設計で使われている3次元CADの種類

金型の構造設計に用いる3次元CADは大別して2つの種類がある。①ヒストリー型と②ノンヒストリー型と呼ばれる方式である。

 

ヒストリー型のCADは、パラメトリック方式とも呼ばれ、設計していく過程が履歴として記録される。

 

これにより、はじめは大雑把に設計し、徐々に履歴の中にある細部の寸法や位置を微調整していくという設計手法をとる。

 

これによるメリットは、まずはイメージから形にしていくといった迅速な設計ができ、モデルを作り終わった後でも自由に編集ができ、パーツや構造を微調整し、のちに使いまわすといったリピート設計にも寄与する点である。

 

プレス金型設計で使われている代表的なヒストリー型3次元CADとしては、CATIAやNX、SolidWorks、シマトロンなどがある。

一方、ノンヒストリー型は、ヒストリー型の逆のような機能を持ち、設計操作の履歴を持たない。そのため、部品のサイズや位置を後から寸法要素で動かす操作はせず、ダイレクトに寸法を直接指定しながら部品要素をモデリングする。

 

これにより、部品を構成する要素間の依存関係を意識することなく、自由な操作でサクサクとモデリングを進めることができる。

 

したがって、同じような形状を繰り返しリピート設計する金型よりも、新しい構造や形状の金型を新たに設計する際には、軽快に作業を進めることができる。

 

プレス金型メーカーによく用いられている代表的なノンヒストリー型3次元CADとして、VisiやSpeedyMILLnextなどがある。

 

同社は今回導入したシマトロンに先駆け、以前からVisiを使っていたが、主に現場で用いるCAMデータ作成用として使っていた。

 

プレス金型における3次元CADの選び方

3次元設計をはじめる際のハードルとして、細かく表現する必要のない箇所まで詳細にモデリングする必要があり、そのため作業負担が重たくなるということがよく指摘される。

 

例えば、構造部に配置される市販部品などが例に挙げられる。そこでまずは、市販部品などの標準部品を簡単に呼び出して配置ができるかが最低限求められる機能となる。

 

また最近では、部品配置を行うと共に、ザグリ穴やタップ、リーマ穴などの機械加工定義まで合わせて付与するフィーチャー設計を行うことも一般的な作業手順になっている。

 

前述した各3次元CADについては、ヒストリー型、ノンヒストリー型問わず、フィーチャー設計が出来るシステムがある。

 

ではどのような視点で、3次元CADを選ぶべきか、それは自社が製作する金型が、ヒストリー型、ノンヒストリー型、どちらの長所が活かせるかで判断すべきである。

 

例えば、金型を用いて量産する製品が大抵決まっており、寸法は微妙に変わるが形状は大きく変わらないといった場合、製作する金型の構造やレイアウトは大きく変わらないとする。

 

その場合、部品サイズや配置、数量などを編集していく作業がメインになる。こうした場合は、リピート設計に強いヒストリー型の3次元CADが強い。

 

逆に、全く新しい形状の製品の金型を設計する場合、例えば、以前は5工程で成形していたものが、3工程になったり7工程に増えたりといったように工程設計から変更がかかり、個々の金型構造も全く新しい構造になることがある。

 

こうした構造設計を行う場合、以前作った部品ユニットを流用したり、部品同士の位置関係の計算式を流用することはかえって手間がかかり、設計工数が増加してしまうことも考えられる。

 

そのため、自社で製作する金型について、新しいパターンの構造をイチから設計していくことが多いといった金型メーカーは、ノンヒストリー型の3次元CADの方が適していると考えられる。

 

同社は、自動車のシート部品の金型を主に製作しているが、強みである絞り加工技術を活かした類似形状の金型を製作していることが多い。

図2 同社の金型で作られた製品

 

これであれば、以前導入したノンヒストリー型のVisiよりも、ヒストリー型のシマトロンの方が同社には適しており、今回はスムースに設計での活用が進んでいると思われる。

 

同社のコンサルティング前の課題

このように設計の3次元化を進めている同社であるが、会社組織としてはかつての同社の主力であったベテラン技術者の高齢化が進み、企業の新陳代謝促進が急務となっている。

 

そもそも金型製造は、設計や機械加工、組み立て、トライといったいくつもの専門職から成り立っているが、それぞれの工程において一人前の技術を得るには通常何年もかかる。

 

とりわけ設計職においては、製造現場のノウハウも知らなければ、適正品質・コストでの金型設計ができないため、一般的には一通り現場の仕事を経験してから入ることが多い。

 

同社ではこれまで、このようなジョブローテーションの仕組みがなく、主に社員の入退社をきっかけとした不定期なタイミングでの業務異動が多かった。

 

コンサルティングの内容

そこで同社では、個々の技術者が長期な視点でキャリア計画を持てるようにするため、入社から10年後までに一通り経験する仕事、またその後、自ら希望する業務について申請できるなど、中長期のキャリアプラン制度ともいうべき仕組みを、筆者と共に考案した。

 

これにより、金型技術者として自分の長所を活かしたり、出来る限り希望する業務を担当することについて、今後は会社の制度・仕組みとしてフォローしていくことができる。

 

今後の同社の狙い

今年の春、同社では新たに高校生の新卒社員を採用し、さっそく新たなジョブローテーションの制度を活用して本人のポテンシャルを引き出すと共に、長期的な視点で現代的な金型技術者を目指してもらうスタートをきっている。

 

同社では今回のコンサルティングに加え、技術面などの評価制度も整備しており、ますます難易度が上がっている自動車部品に対応できる技術者の育成・底上げを図ると共に、企業の新陳代謝を図っている。

 

金型製造の3次元化により、これまでのベテラン技術(アナログ)とデジタル技術の融合を急速に進める同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

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金型・部品加工業 専門コンサルティング

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株式会社 新美利一鉄工所のコンサルティング事例(2018年5月号掲載)

 

本号で紹介する加工メーカーは、以前登場した溶接製缶メーカーの(株)新美利一鉄工所(愛知県岡崎市 TEL0564-46-2955)である。

 

同社は、図面で書き表せないような抽象的な形状の製品であっても柔軟な対応ができ、また同業他社が受注を断るような短納期の依頼であっても対応ができるといった技術力に強みを持つ。

 

そのような同社がここ最近力を入れているのが、フライス加工を中心とする機械加工である。同社の扱う製品は、CO2アーク溶接で組み立てた後、他部品と組み合わせるなどの用途のため、フライス加工やキリ穴、ねじ穴などを追加工する。

 

これまで同社の機械加工は、そのほとんどが外注対応であったが、従来を超える短納期対応や品質確保を目指すため、2年ほど前からその内製化を強化している。

 

そのためのフライス加工設備の充実を進めているが、その導入設備が溶接製缶業界では非常にユニークであるため、本号ではそのあたりの戦略などについて紹介をしていきたいと思う。

 

同社の機械加工の強み

他の機械加工メーカーと比較した同社の強みとして、前工程から一貫して社内対応できる点がある。

 

溶接製缶メーカーから見ると、フライス加工は全く異なるノウハウであるため、簡単な追加工程度であれば自社で行うが、大きな製品やある程度の精度を要する製品のフライス加工まで自社対応しているメーカーは少ない。

 

また、機械加工メーカーから見ると、溶接作業そのものは技能資格もありOFF-JTなどで習得することも可能であるが、仮付けによる組み立てから、熱変形・収縮まで考慮した本溶接までといった作業は、経験に裏付けされた実績がなければ一朝一夕にできる作業ではない。

 

こうした事情から多くの中小メーカーでは、両方を高いレベルで行っている企業は少ない。

 

同社は、2年前のマシニング加工技術に長けた小坂 伊佐三氏の入社をきっかけに、急速にフライス加工の生産体制を整備、拡大している。

 

また、溶接製缶業での同社の強みである、5台のレーザー加工設備をフライスの前工程に活かし、特に、溶断後にフライス加工を行うような製品については、同業他社には真似できない短納期化と低コストを実現している。

 

同社ならではの特殊機械の導入

そもそも溶接製缶品のフライス加工には、次のような難しさがある。

  • 段取り:6面フライスした鋼材のように、溶接製缶品にはバイスでしっかり挟める製品が少ない。溶接製缶品は10ミリ前後の板を箱状に組み合わせた筐体であるため、油圧バイスなどの段取りが不可能であり、しかも、いびつな形状の製品が多いため、加工そのものよりも段取りや冶具製作の方が難しい。
  • 加工ビビリ:板を張り合わせた製品が多いためワーク剛性が弱く、加工ビビリが起こりやすい。また前述したように、いびつな形状が多いため、しっかりとクランプできない場合にはやはり加工ビビリが起こりやすい。
  • 突き出しの長い工具:いびつな製品のフライス加工は、ワーク上面から深く入りくんだ場所への加工を余儀なくされることが多く、細く突き出しの長い工具で加工することも多い。突き出しの長い工具のフライス削りは、工具たわみや振れなどが起こりやすく、加工精度や面粗さを確保することが難しい。

 

こうした難しさがある溶接製缶品のフライス加工であるが、被削材の硬さとしては、そもそも炭素の多い鋼材は溶接自体が厳しくなるため、業界として硬い高炭素鋼はほとんど使われてこなかった。

しかし昨今は、硬い高マンガン鋼も使われることもあり、切削抵抗の高さという点においても、従来よりも難しさは増している。

 

溶接製缶品のフライス加工の難しさに対応した機械選び

こうした加工上の背景から同社は、溶接製缶を扱う同業他社では持っていない、ユニークな機械を導入している。

 

元々、NCフライス盤は持っていた同社であるが、自動機としてまず、一般的な立形マシニングセンターを導入した。そして次に導入したのが、横幅6,050ミリの極めて横長なテーブルを持つイワシタ社製の長尺NC加工機である。

図1 同社が導入した長尺NC加工機

この設備は、同社が得意としている長い角パイプ材の溶接品への対応に強く、またニッチなテーブルサイズを持つため、ピンポイントでこの機械でしか加工できない加工需要も多くあるはずである。

 

また今年新たに導入したのが、ヤマザキマザック社の5軸マシニングである。 同社が扱う製品に多いいびつな加工品に対応しやすく、フレキシブルなクランプのやりやすさ、多方面からの切削・穴加工など、溶接製缶品の加工でこの機械を使えるメリットは非常に大きい。

図2 同社が今年導入した5軸マシニングセンター

 

同社は、こうした同業他社や協力メーカーにはない設備を導入することで、短納期、難加工品への対応で差別化を図り、競争力アップを図っている。

 

同社のコンサルティング前の課題

こうした取り組みを行う同社であるが、経営上の課題として、こうした新事業の採算性や、人事面での評価・育成をどのように進めるべきかよくわからないといった悩みがあった。

 

同社はこれまで溶接製缶一本で事業を行ってきており、溶接技術であれば、事業性や従業員の技能も評価ができるが、これまで自社で経験がない機械加工については、業界相場の利益率や、技術者の基準となる技術とそれに伴う給与相場などがわからなかったため、事業拡大当初はこのまま進めていって良いものか不安をぬぐえなかった。

 

同社のコンサルティング内容

そこで同社のコンサルティングを行っている筆者は、①事業の採算性評価、②従業員の評価・育成、③新事業のPR戦略について、アドバイスを行った。

 

  • 事業の採算性評価:部門別で損益を評価する案をアドバイスした。機械加工で発生する主な変動費は、材料費や治具費、消耗工具などがあり、固定費は人件費や電力費、ツールホルダーなどの工具費がある。これらを月次で管理し、事業単体での採算性を評価する。
  • 従業員の評価・育成:要素技術ごとに分解した項目を使ってスキルマップ表を作るアドバイスをした。また、1年後、3年後、5年後などを想定した中期スキルマップ表を合わせて作ることで、教育計画を作ることができる。
  • 新事業のPR戦略:同社のユニークな機械設備を外部に発信する方法として、動画によるわかりやすいPRを行うアドバイスをした。なお、同社のホームページは筆者の事務所がサポートさせていただいている。

 

今後の同社の取り組み

同社の経営上の課題として、溶接技術者の新陳代謝の促進がある。同社の強みである、柔軟性の高い溶接技術は、個人技能への依存が大きく、一人前の技術者に習熟するまでに時間がかかる。

 

そうした事情からこれまで経験者を中途採用することが多かった同社であるが、本年度から初めて工業高校を卒業した新卒者(中根 聖氏)を採用する。

 

代表取締役である新美 剛一氏から高い期待をかけられている中根 聖氏であるが、素質があるとはいえ一人前になるには、長い年月をかけ積み重ねた実績が必要になるのも、溶接技術の大変なところであり、面白いところでもある。

 

大正15年からはじまった同社の歴史に、新たな流れを作ろうと取り組む同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング

代表:村上 英樹(中小企業診断士)

愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

 

株式会社瑞木製作所のコンサルティング事例(2018年2月号掲載)

 

本号で紹介する機械加工メーカーは、以前にも登場していただいた株式会社瑞木製作所である(愛知県尾張旭市 TEL 052-771-8410)。

 

同社は、航空宇宙産業分野で高い実績があり、この分野の製品に多い、薄肉でありながら高い寸法精度を要するといった加工品を扱っており、加工技術については工具・加工法・材料・温度管理・品管技術など、様々な方面からの知見を持っている。

 

また、研究開発への意欲も高く、これまで経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)の認定も経験している。

 

昨年に引き続き、筆者は同社の技術者研修を担当させていただいた。前回は、HSMWorksを使った5名による3次元加工の研修であったが、今回はHSMWorksを使った5軸加工の若手技術者研修を行った。

 

同社の5軸加工

同社は、5軸加工が可能な工作機械として、DMG森精機のDMU50や、MAZAKのINTEGREX300-Ⅳといったマシンを設備しており、航空機部品の加工には欠かせない存在となっている。

 

同社が行っている5軸加工は、いわゆる「割り出し位置決め5軸加工(以下、割り出し5軸加工)」と呼ばれるものである。

 

一般的に5軸加工には、「割り出し5軸加工」と「同時5軸加工」と呼ばれるものがあり、どちらもX・Y・Zの3軸に加え、A・B・Cのうちいずれか2つの軸を加え、真上からしか加工できない3軸加工から、自由な角度で側面方向に傾斜・回転させて加工するようなものを言う。

 

その5軸加工の中で、「同時5軸加工」は、XYZの3軸だけでなく4軸目、5軸目まで動かしながら加工するものを指す。これにより、よく5軸加工でとりあげられるインペラの羽根部の加工など、工具中心軸の角度を可変しながら加工しなければならないような形状においても対応が可能になる。

 

ただし、マシニングセンターなど工作機械を動かすNCプログラムについては、工具軌跡があまりにも複雑になるため、5軸加工が可能なCAD/CAMに軌跡を計算させることになる。人間が直接手入力でプログラムを組むことはほとんどない。

 

逆に、「割り出し5軸加工」は、工作機械の4軸目、5軸目、例えば、立形トラニオンタイプであれば、旋回テーブル(C軸)とチルトテーブル(A軸)といった組み合わせがあるが、C軸とA軸の動きは止めたうえで、XYZの3軸を動かす3次元加工を行ったり、穴あけやポケット加工などの2次元加工を行ったりする。

 

この使い分けとして、「同時5軸加工」は非常に複雑な形状の加工ができる反面、最大5つの軸を同時に動かすため、それぞれの軸の同期・タイミングが非常にシビアに要求され、工具軸が自由に動きながらその工具先端は位置精度を再現しなくてはならないため、どうしても加工精度の面では不利になる。

 

反面、「割り出し5軸加工」は、4軸目、5軸目を固定したまま、3軸加工を行うため、「同時5軸加工」に比べると、加工の自由度は減り、ホルダーの衝突を回避させながら最も工具突き出し長さが短くできる加工軌跡を探してくれるという利便性は出せなくなるが、加工精度を出すという点では、圧倒的に有利になる。

 

筆者も、自動車部品のプラスチック金型において、大型の傾斜コアやスライドコアの加工で、「割り出し5軸加工」を使った経験があるが、旋回テーブルとチルトテーブルを回転させ、多方向からの切削加工を行う際、球状の測定ゲージを使い、それぞれの方向での加工原点を測定し直すことで、10~20ミクロン単位の加工精度に対応できた経験がある。

 

まさしく同社の製品は、10ミクロン、製品によってはそれ以下の精度が要求される部品もあり、5軸加工については「割り出し5軸加工」が最適だと思われる。

 

使用しているCAM、HSMWorksについては、加工プロセスを定義(ジョブの定義)していく中で、常に途中でのワークの状態を認識させながら、加工パスを作成していけるため、色々な方面から5軸加工を行っても、加工パスを重複させずにデータ作成を行うことができる。まさしく同社の加工には適している。

 

5軸加工研修での課題

このように「割り出し5軸加工」は、真上(Z方向)からだけでなく、多方面からの工具軸の加工を高精度に行える反面、「同時5軸加工」とは違い、どの方向から加工を入れるかCAMオペレーターである人間が自分で考えなくてはならない。

 

また、同社が扱う薄肉形状の加工品は、途中プロセスにおいて、どこを残し、どこを先に削っていくかの判断が難しく、単に削れればよいということではなく、ワーク剛性が弱くなってくることでのビビリ発生などを考慮し、削り残り量のバランスをとりながら進めなくてはならない。

 

今回の研修課題は、CAMの操作よりもむしろ、加工順序を工夫しなければならないといった加工形状を採用している。

 

また、今回の5軸加工研修では、同社のDMU50を使った実加工までの実践を課題としているが、これはCAMデータを作成するだけでは、最も難しいテーマの一つである、期限内に要求品質を満たしつつ加工を終わらせるといった技術が身につかないためである。

 

加工時間を短くするためには、工具の送り速度を上げ、仕上げの送りピッチを粗くすればいい。荒取りについても、大きな工具を使い、送り速度を上げれば時間を短くすることは可能だ。

 

しかし今回の研修でも起こったが、送り速度を上げると加工ビビリが発生するし、送りピッチを粗くすれば仕上がり面も汚くなる。

5軸加工はそもそも高い剛性のワーククランプができない場合が多く、大きな荒取り工具を使用すると加工ビビリが発生したり、ひどければクランプが外れてしまう。

 

また、工具の突き出し長さをできるだけ短くするため、細かく多方面から加工を入れるようCAMデータを定義したが、やり過ぎるとCAMデータ作成時間がどんどん伸びる。確認しなければならない項目も増え、ミスのリスクも高くなる。

 

今回受講した入社2年目の小木曽 圭氏は、限られたCAMデータの作成時間と、DMU50を使った加工時間の制約に悩み苦しみながら課題を進めていった。

図1 CAM操作実習を行っている様子

図2 5軸加工機の操作実習を行っている様子

 

今回、小木曽氏の5軸加工の研修日数は、のべ5日である(日あたり7時間)。

 

彼はその日数の中で、課題形状の3DモデリングからCAMデータの作成、そのデータを使った5軸加工機の実加工まで期限内で見事課題をクリアすることができた。

 

まとめ

今回、若手社員の5軸研修と並行してベテラン社員の研修も行ったが、カリキュラムの一部として、HSMWorksと同じCAMエンジンを持つFUSION360を使ったモデリングとCAMデータ作成演習を行った。

 

クラウド型の3次元CAD/CAMであるFUSION360は、同社が扱うSOLIDWORKSと同じパラメトリック式のCADモデリングができ、割り出し5軸加工のデータ作成も可能であり、各種工作機械に対応したポスト処理もできる。

 

年間使用料4万円以下で使用できるCADとして注目されているが、同社においては慣れ親しんできたHSMWorksを扱う5軸エンジニアを増やすことに寄与すると思われる。

 

筆者はこれまで2年、同社をサポートさせていただいたが、高度なエンジニアを増やすことへの教育投資を惜しまない同社に筆者は大きな期待をしている。

 

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング

代表:村上 英樹(中小企業診断士)

愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054