金型・部品加工業専門コンサルティング

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コンサルティング

FAQ

マシニング加工の人的ミスのあるあると対策の考え方

不具合を起こしてショック

 

さて、今回は私のコンサルティング先で出くわす、「マシニング加工の人的ミスのあるある」と、その対策の考え方について見ていきます。

 

まずマシニング加工の人的ミスですが、ざっと挙げてみると次のようなものがあります。

  • 口頭の申し伝えの悪さによる受け手の勘違い
  • アキューセンターによる心出し作業の5ミリずらし忘れ
  • FAXで来た図面寸法のつぶれた数字を間違えて読んだ
  • 工具径補正を入れ忘れた
  • 加工するワークを取り違えた

などなど、挙げだしたらキリがありません。

 

これらの問題点について、新QC7つ道具の一つ、連関図を使って原因を分析してもらうと、途中で次のような要因が挙がってきます。

  • 慌てていた
  • 急いでいた
  • 思い込みがあった
  • 人に声をかけられて手順がとんだ
  • 電話に出たあと、戻ってきたら手順がとんだ
  • 体調が悪かった
  • むしゃくしゃしていた
  • 悩みがあった

これも挙げだしたら、本当にキリがありません。

 

さて、これらにどう対処していくかという話ですが、まずはチェックシートで、ということになります。

 

これにより、体調が悪かろうが、声を掛けられて手がいったん止まろうが、やるべき手順の目安ができます。

 

まず最低限、これは作るべきでしょう。

それと、クロスチェックも有効です。

クロスチェックとは、自分以外の別の人と一緒にチェックする手法を言います。

 

携帯ショップや銀行窓口などで見かける確認作業です。それだけ重要で絶対間違うことができないということでしょう。

 

我々製造業も同じではないでしょうか。

 

実際に、お客さんからお借りしたワークを加工したり、外国から輸入したワークで替えが効かないなど、絶対ミスができない加工現場では、段取り時に徹底したクロスチェックをルール化しているメーカーもあります。

 

それと、これは私がいつも思うことですが、もし加工する材料の値段が、1,000万円したらどうなるでしょうか。

 

私だったら、怖くてマシニングセンターのスタートボタンを押すことができなくなると思います。

それこそ、第3者にクロスチェックをお願いし、一緒に入念なチェックを行ってようやくボタンが押せるくらいだと思います。

 

おそらく、これを読んでいる誰もがそのような状態になるのではないでしょうか。

 

実は、その時点で無意識にさじ加減をしているということになります。

 

普段の仕事では、そのような恐怖を感じることなく自然に段取りをし、加工プログラムをセットしてスタートボタンを押しています。

 

1,000万円の材料ならボタンが押せず、普段の数千円から高くとも数万円の材料であれば、ためらいなく加工ができる。

これは悪い意味ではありませんが、自分の中で材料の金額によって、掛ける手間のさじ加減を無意識にしていることになります。

 

いまいち自分はミスが多くなかなか改善されないという方や、そういった部下を持つ上司の方は、もし1,000万円の材料だったらどんな手順を踏むだろうかという想定で、加工が完了するまでの手順を考えてみるのはいかがでしょうか。

 

特に、一品モノや小ロット品の加工は、試し加工の機会がなく、一発勝負の場合が多いので、本当に難しい作業だと思っています。

 

もしよろしければ、参考にしてみてください。

 

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マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?

 

さて今回は、私自身が普段のコンサルティングでよく感じる、マシニングセンターの精度についてオペレーターの方々に感じることを取り上げました。

題して「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」です。

 

テーブルの送り速度について

まずテーブル又は、主軸の送り速度についてです。

 

これは、マシニングセンターにて、CAMデータによる3次元加工を行う際に、感じることです。

 

最近の工具カタログには、ありがたいことにエンドミルの種類ごとほとんどの工具について加工条件が記載されています。

 

これにより、CAMオペレーターは、悩まずにCAMに主軸の回転と送り速度を入力することができます。

ここで私が感じることは、その条件を何の気なしに使っている点です。特に問題と感じるのは、狭いエリアでカクカクと曲がる軌跡で加工している場合です。

 

コーティング超硬エンドミルによる切削加工が主流になり、送り速度がF1,000やF3,000を超えるような高速な送り速度も当たり前になってきました。

しかし、3D加工における下図のような角部や狭い凹溝部を加工する場合、四角や円形状の狭い穴の内側を加工するような場合においては、最も早い送り速度が出せる、長い直線距離がほとんどありません。

狭小部位のパス

このような加工パスで、カタログの推奨条件値をそのまま使っても大丈夫でしょうか。

 

最近のマシニングセンターであれば、自動加減速機能が働くので、こうした部位を加工しているときは、プログラムの数行先読み機能により、曲がり角になる前にスピードを落としてくれます。

 

結果、こうした狭い部位は、ほとんどトップスピードが出ずに、機械が出せる送り速度に調整されながら加工されていると思います。これは加工中に、マシニングセンターの制御パネルに表示されている送り速度をながめているとわかります。

 

しかし、古いマシニングセンターでこうした機能がない場合は、速い設定の送り速度に追従できず、機械がガクガクと振動したこともありますし、そもそも自動車に例えると、急なヘアピンコーナーをトップスピードのまま走ろうとしているようなものです。

 

±0.02ミリを下回る公差など、高精度な3D加工を行う場合には、こういった狭い凹部位と、逆に緩やかな凸形状部位は分けて加工条件を考えるべきと考えます。

 

つまり、自動車レースのサーキットでいうところの、急なヘアピンコーナーを正確にトレースしていくには低速ギアを使い、トップスピードが出せる直線コースは高速ギアを使うといったように、加工エリアを分けて加工パスを作ると、非常に高精度な3D加工ができると思います。

 

ただし荒取り加工や、さほど精度が要求されない部品まで、こうした配慮をする必要はないと思っています。あくまで高精度な仕上げ加工で必要になる考えです。

 

一般的にマシニングセンターでは、パンフレットやPR資料などで、真円の輪郭精度などを紹介していますが、狭い部位を正確にトレースさせて高精度を狙いたい場合、私はこの送り速度を参考にしています。

 

実際、私が見てきた上手い加工パスを作るCAMオペレーターは、同じエンドミルを使っていても、加工部位によって加工条件を変えています。こうしたCAMオペレーターは、マシニングセンターの動作特性を良く知っている人だと思います。

 

逆にそうでない加工パスは、どのような加工であっても、同じエンドミルでは一律にカタログ推奨条件をそのまま使っています。

 

いかがでしょう、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますでしょうか?」

 

端面基準について

次は、マシニングセンターの加工原点の取り方についてです。

 

立形マシニングセンターであれば、加工原点の設定は、①平面的なXY基準と、②高さ方向のZ基準がありますが、今回はXY基準についてです。

 

先日、クライアント先企業でこのようなミスが発生しました。

 

金型の修正追加工で、すでに意匠面が削り出されているワークに、マシニングセンターで追加工を行うため、ワークの平行出しなどの段取りを行った後、CAMデータで設定したXY原点に合うよう、意匠面形状にタッチセンサーを当てて基準をとろうとしました。

 

そこで、段取り図面に意匠面形状の片側からの寸法が書かれていたので、いわゆる端面基準ということで、意匠面の片側からとった位置から、図面寸法分だけ移動し、それをX原点としました。

片側だけから基準をとろうとしたミス

※クライアント企業との守秘義務のため、図は別途、仮のモデルを使用しております。

 

しかし実は、その部品は、0.5ミリマイナスオフセットされて加工されていた部品でしたので、残念ながらX原点は、マイナスオフセットされていた分の0.5ミリずれてしまったというミスなのですが、今回取り上げたいことは、この0.5ミリのずれを見逃してしまったことではありません。

 

今回のテーマは、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」です。

 

問題は、このミスのことではなく、端面基準でX原点を決めようとした、その判断についてです。

 

片側から測定した位置から、図面に記載されている、ちょうど100ミリ分を移動し、そこをX原点にしようとしたということですが、そもそも、切削加工されているワークが、100ミリちょうどピッタリで加工されていると思っていること自体が問題です。

まさに、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」です。

 

切削加工には加工公差というものがあり、皆さん、その公差内に入るよう、限られた工数の中で努力していますが、1ミクロンの誤差もなく、100.000ミリの寸法で加工することは、全く不可能とは言いませんが現実的ではありません。

 

通常、金型のような硬い材料であれば、工具は逃げるものであり、0.01ミリや0.02~3ミリは大きくなることが多く、それを工具径補正機能など使って追い込んだりしていると思います。

 

したがって、加工誤差があるという認識があれば、片側から基準をとることはせずに、まず現状の実測値を測ったのち、センター振り分けなどで基準をとるのが一般的だと思います。

 

こうした認識不足のミスは、段取り作業だけを行う若手オペレーターに多く発生しております。

 

ぜひ、今後の製造現場を担う若手加工者に、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」を意識していただきたいと思います。

 

バイスの精度について

これも、クライアント先企業であった話です。

 

マシニングオペレーターの上司の方が、自社の仕事内容を紹介してくれた際、「うちのオペレーターは、極めて精密な部品を扱っているので倍以上の手間をかけて段取りをします」と紹介してくれました。

 

そこで、マシニングオペレーターが小物部品のワークをバイスにセットする際の作業の一部始終を見ていたのですが、少しおかしなことに気づきました。

 

樹脂製ハンマーで、前後左右、何度も何度もワークを叩き、平行直角になるよう調整していたのですが、その中で、下図にあるように、バイスの開閉方向にも叩いていることに気づきました。

バイスを開閉方向に叩く

当然バイスの構造上、このような叩き方はよくありません。

 

なぜ、このように叩くのか聞いてみたところ、これだけいろんな方向から時間をかけて叩かないと、平行直角が出ないとのことでした。

こうなると理由は次の2つです。

  • 元々のワークの6面フライスの状態が悪い
  • バイスの口金の直角が出ていない

ワーク素材の6面フライスの状態を確認したところ、問題が無かったので、バイスの口金をダイヤルゲージで確認したところ、バイスの口金及び、パラレルブロックを置くバイスの底面も、傾きが出ていました。

 

バイスの口金は研削加工で修正できますが、バイスの底面は長く使っているうちに、早送りで工具をぶつけるなどの事故により、歪みが出てしまったと思われます。

 

このように、高精度な段取りをしているつもりが、インフラ部分、そもそものツールや機械、冶具の状態が良くないということがあります。

 

これもまさに、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」です。

 

機械や道具自体に誤差があり得ることを認識したうえで、段取りをする必要があります。

 

テーブルの精度について

これも、前述のテーマと同様のケースですが、あるクライアント先企業にあった8番の立形マシニングセンターの加工精度が出ないとのことで、テーブル上面をダイヤルゲージで走ってもらいました。

 

そうしたところ、最大で、0.2ミリ(!)も、傾きが出ていました。

 

メンテナンス状況を確認してみたところ、水平器による機械自体の傾きの確認は、10年近くやっていないとのことでした。

 

これは、前述したバイスが歪んでいたという加工メーカーも同様で、やはり機械のレベル確認を10年近くやっていないとのことでした。

 

水平器により確認したところ、テーブル自体の平行度は大きく傾いていました。

 

こちらについても、確認だけでも年1回は行ったり、地震などの後は確認するなどの配慮が必要かと思います。

 

これもまさに、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」です。

 

機械は導入したら、永遠に精度が維持されるわけではありません。

 

ミーリングチャックと振れ精度

最後に、ミーリングチャックと振れ精度についてですが、高精度をうたっているミーリングチャックについても、傷んだコレットを使っていたり、長年使っていると精度が悪くなってきます。

 

主軸に工具のついたミーリングチャックを取り付けてみて、ゆっくりと主軸を回転させた状態で、ダイヤルゲージを使って振れを確認してみたことがありますでしょうか。

 

最近では機上でのレーザー計測による非接触で振れ精度を確認することもできますが、このようなアナログ式の方法でも確認ができます。

 

実際には、0.01や0.02ミリなど、振れが出ることがあります。

 

このとき、ミーリングチャックを緩めて再度締め直すか、主軸から取り外し、180度回して取り付けるなどを行うと、振れ傾向が変わることもあります。

 

もし振れ精度が良くない状態で、工具径補正を使って高精度に追い込み加工をする、直角精度を出す、などを行っても結構辛いと思います。

 

この点についても、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」です。

 

 

単調作業的に、ミーリングチャックに工具を締め付け、CAMデータを読み込んで加工すれば、その他の機械や工具、ツーリングなどの精度などは、勝手に保証されているわけではありません。

 

もちろん、全てが新品のとき管理は少なくても済むかもしれませんが、早送りでぶつけたことがあるなど、長くマシニングセンターを使っていれば、何らかの軽い事故はつきもので、こうしたことがあったりすると、色々な箇所で精度には気を配らないといけなくなってきます。

 

おわりに

今回のテーマは、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」でしたが、とかく短納期やコスト競争に追われている中で分業化も進み、加工オペレーターは段取りだけの単調な作業になりがちです。

 

そうした中でも加工技術者としては、加工精度や機械精度は勝手に保証されているものではなく、人間の管理の結果、どうとでも変わってくるものだと認識するべきだと思います。

 

 

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

 

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プレス金型設計者の人材育成手順と日程管理について

3つの設計工程

 

さて、今回のFAQコラムは相談を受ける機会がとても多い、プレス金型製造における設計人材の育成についてです。

 

その理由の一つに、既存のベテラン設計者と同等の能力を持った設計者をなかなか育てることができないと問題があります。

今回は、そんな悩みの多い「金型設計者の育成手順と日程管理の方法」についてみていきたいと思います。

 

まずは、育成の順番からみていきます。

これは、下図に示す(1)工程設計、(2)構造設計、(3)部品設計という設計工程のうち、最後の工程から順番をさかのぼっていく形で経験を積ませます。

3つの設計工程

 

つまり、設計人材の育成の手順としては、まず使用するCAD操作を習得したのち、設計工程の一番後である、(3)の部品設計から経験を積ませ、能力を向上させていくということになります。

 

具体的には、次のような対応が考えられます。

  • 2次元設計であれば、ベテラン設計者が作成した金型組図から部品バラシ図や、3D加工用の部品モデルをモデリングする。
  • 3次元設計であれば、ベテラン設計者の構想図面から、3D金型モデルをモデリングする。

 

なお、部品設計の経験を積む際には、心理学にある、①符号化、②貯蔵、③検索というモノを思い出すときの脳の思考プロセスを踏まえ、意識することが望ましいです。

 

人間の記憶には、短期記憶と長期記憶がありますが、特に長期記憶は、体系化した言語や図など、わかりやすくなった情報ほど頭の中に長く貯蔵され、また思い出しやすくなります(検索性)。

 

その記憶の中から必要なときに情報を取り出して(検索して)、目の前の行動に使われるということになります。

 

つまり、物覚えの良い人とは、ズバリ!この①の符号化の効率が高い人ということが言えます。

 

例えば、一度見たこと・聞いたことを、後で思い出しやすい状態で記憶していくということです。

 

私は、これを中小企業診断士の勉強の際に意識しました。

 

具体的には、モノを記憶する際、必ず相対的に覚えるということです。

 

例えば、初めて見るタイプのエンドミルがあれば、これと対になるものを必ずイメージします。

従来使っていたエンドミルを思い浮かべ価格の違いをイメージしたり、刃数の違うエンドミルをイメージして加工効率の違いをイメージしたりなどです。

 

つまり、それ単体をシャカリキになって覚えようとせず(単なる暗記)、何と何の枠組みの中でそれが存在し、それぞれにどういった違いがあるのか、対になるものの違いと共に一緒に覚えていく。これがいわゆる体系的にモノを覚えるということです。

 

ちなみに、私は本を読むときには、他との比較や体系図などをメモしながら読んだりします。

 

したがって、設計者育成のスタートとしては、まず(3)の部品設計の見習いから始め、金型部品の必要な機能や形状、材質などを体系的に覚えることを意識しながら場数を踏み、いずれ担当する(2)の構造設計のための知識を、経験と共に蓄えていきます。

 

ちなみに、この体系化の考えは、金型設計標準書でも使う考え方です。

単純に、市販部品やプレート類の指定だけを記載するよりも、各部品や形状の選択肢とその選定基準が決められて記載されている設計標準書は、かなりレベルの高い標準書です。

 

このような標準書が整備されているメーカーは、ノウハウや情報の統一・共有化のレベルが高いです。

 

なお、こうした設計工程をさかのぼった経験を踏まず、①符号化、②貯蔵、③検索という思考プロセスが使えずに行う設計作業は、いわゆる試行錯誤による設計ということになります。

 

心理学にある試行錯誤とは、目の前に起きた問題解決のため、根拠のある無しは関係なく、思いつく方法を順番に試し、偶発的に問題が解決するまで続ける方法を指します。

 

いわゆる、なかなか満足のいく設計ができない、ベテラン設計者よりもかなり多く時間がかかってしまう、何度も手戻りを繰り返すといった、設計者の育成が進まない原因となります。

 

さて、設計者の育成手順に戻りますが、(3)の部品設計を一定期間担当した次は、(2)の構造設計の見習いから経験させます。

 

この工程での能力向上の狙いは、(1)の工程設計に必要となる、何工程のプレス加工によれば安定的に製品を作れるか、ブランク工程をどうすれば品質の良い製品が作れるかなど、プレス成形性・加工性などを考慮できる能力を養うということになります。

 

また、品質の良い製品ができる工程で設計できたとしても、量産がはじまると金型は何年にも渡り継続的に使うものであり、金型部品は摩耗・消耗するため、そのとき製品寸法はどうなるかなど、他にも考慮することが多くあります。

 

したがって、単純に、金型組図を製図するだけでなく、「なぜそういった構造にしているのか」「なぜそういったプレスの工程分割をしているのか」などを考えつつ、自分の頭の中のフローチャートに落とし込んでいく必要があります。

 

このフローチャート化が、①符号化、②貯蔵、③検索ができる脳への仕込みになります。

 

設計人材育成の最後の手順が、(1)の工程設計の見習いを始めるということになります。

 

この工程を担当するということは、社内の量産部門や顧客担当者など、自部門以外の関係者とも接することになり、このときには、プレス加工や後工程である機械加工、トライ作業の知識など、幅広い知識が必要になるため、やはり浅くとも体系的な知識が必要になることは言うまでもありません。

 

さて最後に、設計の日程管理についてですが、よく金型の大日程計画に記載されている設計工程そのものの進捗が、若手設計者ほど遅れていく傾向がありますが、これをどうするかという視点でみていきたいと思います。

 

設計工程の日程管理を遅れなく進めていくためには、設計工程をできる限り細分化して進捗管理することが重要です。

まず前述した、(1)工程設計、(2)構造設計、(3)部品設計の3つに分けて日程計画を立てることは最低限必要ですが、さらにそれぞれの工程で細分化します。

 

例えば、(1)工程設計であれば、①曲げ・絞り工程の分割、②工程ごとの製品図作成、③展開ブランク図作成、④順送であればストリップレイアウト図作成、⑤寸法を入れて工程図を完成させるなど、個々の工程に細分化し、それぞれに期限を付けます。

 

こうして細分化された個々の目標地点のことをマイルストーンと言います。

 

このマイルストーンの設定により、精度の高い工数の見積もりができます。作業をざっくりと大きくまとめるほど、日程計画は大まかになり、計画日数は安全をみて増えていきます。

 

逆に、②の「工程ごとの製品図作成」や、⑤の「寸法を入れて工程図を完成させる」など、クリエイティブ性は高くない作業を洗い出すほど、工数は正確に見積もりしやすくなります。

このように設計工程を細分化し、それぞれ期限を付けたマイルストーンで上司や先輩設計者がフォローをすれば、先ほど挙げた若手設計者が抱える「何度も手戻りを繰り返す」といった問題に対処することができます。

 

この問題の抱えるロスとして、間違った設計にわざわざ時間をかけて作図・モデリングをし、その時間をかけた図やモデルをまた時間をかけて修正するということがありますが、経営者が最も嫌がるこの悪循環を最小化することができます。

 

つまり、個々のマイルストーンに期限を付けることで、正しい設計の順番を踏みながら、大きな方向性の違いやミスによる大規模修正のリスクを避けた進捗管理ができるというわけです。

 

最後に、こうした人材育成を自社で行うか、私のようなコンサルタントを活用するかという視点ですが、そもそも人材に必要な知識・技能は、下図のような体系図になっていると考えています。

金型設計に必要なスキル

実務で使っている知識・技能は、実はそれぞれの専門分野が重ね合わさったうえの限定されたものであり、企業ごとにベテラン社員さんが積み重ねて作ってきたものです。

しかしながら、たまたま上の図では、均一に重なっていますが、私が多くの企業を見た経験から言いますと、大抵かたよっているケースが多いです。

 

設計実務で経験を積ませて育てるとこれまで書いてきましたが、上図の重なっているところ(実務で使っている知識)を何回も経験しなければならないため、よく一人前になるには最低3年かかるとか、5年はかかるなど、抽象的な表現がされますが、企業ごとに扱っている金型種類の数も影響します。

毎回大きく異なる構造の金型を扱っていると、金型設計者の育成の観点では、反復効果が薄くなり、前述した、①符号化、②貯蔵、③検索の中の、①符号化と②貯蔵はなかなか進みません。

 

さて、コンサルタントは、上図で言うところのそれぞれの分野を体系的に順序よく教育していくためのカリキュラムを作るプロということになります。

これにより、多品種に対応できる(振り幅がある)応用力を身に付けることができます。

もちろん自社でカリキュラムを作ることができれば申し分ありません。それが本来あるべき姿です。

 

私の金型基礎セミナーもそのように、各専門分野を習得していただくような内容で構成しております。

金型基礎セミナー内容

 

私も金型設計に携わる一人の技術者として、あるべき手順で教育された金型エンジニアが一人でも多く育っていくことを願ってやみません。

 

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継続的に更新していく図面を、複数設計者で管理していく方法

データベースの運用

 

金型メーカーに限らず、機械装置メーカーなど、社内で継続的に、同じかアレンジした図面を継続的に使いまわしていく場合の管理方法について、みていきたいと思います。

ただし、前提条件として、複数の設計者で、管理・更新していく場合に限定します。

 

というのは、1人で管理していくのでしたら、他者に申し伝えることは必要ないので、自分のメモやWordかEXCELで管理するなど、自己管理だけで済むためです。

 

今回ターゲットとしているのは、例えば、ある機械装置を、別々の顧客ユーザー向けに、さらに別々の設計者がアレンジして設計し、それをまた更にアレンジ設計して使いまわしていくようなケースです。

 

この場合、一見、アレンジ設計した図面は、それぞれ個人の管理のように見えますが、例えば、社内で締結方法を統一したいとか、市販部品の種類や購入先を統一し、購買部門の効率化・ムダ削減を図りたいなど、企業として本来考えていかなければならない統一ルールを共有していかなければならない場合において必要となる運用方法について今回は対象としています。

 

実際に運用していく方法としては、テンプレート方式と、データベース方式の2つがあります。

まずは、テンプレート方式からみていきたいと思います。

 

テンプレート方式の場合

テンプレート方式は、顧客ごとや、製品ごとで、図面の種類がさほど多くない場合に採用します。

 

逆に、後述するデータベース方式は、仕様により管理する図面の種類が多いときに採用します。

 

具体的には、金型や機械装置ごとに、アレンジ設計の基礎となる図面(これをテンプレートを言います)を定義し、サーバーなどに保存しておき、設計者はそこからコピーして再利用設計します。

 

運用上、必要となるルールとしては、新たに採用したサブアセンブリや市販部品などがあれば、テンプレートに盛り込んで更新します。

 

ただし、それは誰でも好き勝手にやっていいというものではなく、社内でその作業が許されるテンプレートの管理責任者を選任するなど、そのテンプレートを再利用する設計者全員に編集権限を管理していくことが必要になります。

 

具体的にテンプレートを使って再利用設計する状況を考えてみますと、下図のようになると思います。

テンプレート運用についてのフローチャート

まず、テンプレートどおりで、そのまま流用できるのであれば、そのまま使いますし、例えば、その金型や機械装置の中で、以前よりロット販売などで安くなった市販部品などがあれば、その時点で変更しテンプレートを更新します。

 

もちろん、テンプレート図面の更新作業は許可制とし、権限がある設計者だけが行います。

 

次に、テンプレートどおりでは設計できない場合ですが、この場合はテンプレート図面を元に、アレンジして設計を行うことになりますが、これも好き勝手にアレンジして良いというわけではありません。

 

例えば、市販部品の使い方や、サブアセンブリ部品の寸法の決め方についても、一定のルールを設けなければ、自己流図面が社内にどんどん出来ていってしまいます。

 

そこで、上図に記されているように、「派生のやり方にルールが必要」となるわけで、ここで社内で統一された設計基準が必要になります。

通常、こうしたルールは、設計企画書とか設計標準書といった名称で、100ページとか200ページといったボリュームのものを各社作っております。

 

また、この設計標準書には、部品形状だけではなく、なぜそういった仕様を採用したのかについて説明が記載されている必要があります。いわゆる「設計意図」です。

これにより、各設計者のアレンジする設計意思のベクトルを統一することができます。

 

また、もし自社が外注設計を使っている場合には、この設計標準書を外注先にも横展開する必要があります。

 

では次に、データベース方式の方を見ていきたいと思います。

 

データベース方式の場合

データベース方式は、前述したように、顧客ごとや、製品ごとの仕様により、管理・保存する図面の種類が多いときに採用します。

 

具体的には、下図の事例のような流れの中で、共有するべき情報を管理していく際に採用します。

データベース管理方式

 

具体的な運用方法としては、設計者が自分の設計が終った時点で、どの親品番の図面を使ったか、またどのような変更を行ったかをデータベースに登録していきます。

データベースの運用

例えば、上図では、新たに派生品Dから派生品Hの図面をアレンジ設計しています。

そのときに、派生品FやGなど他の派生品で発生した、不具合の修正や、顧客ユーザーや組立て現場から上がってきた仕様変更の要望などを、派生品Hの図面に盛り込まなければならない場合があります。

 

そうした情報を、残らず新規の設計に盛り込んでいくため、各設計者は自分の設計が終った時点で、どのような変更・修正を行ったかをデータベースに登録していきます。

 

また、新たにアレンジ設計を行う際には、設計者は、過去にさかのぼって親品番とする派生品図面を検索し、その子や孫となる派生品図面に登録されている情報(過去に修正・変更した内容)を参照しながら、修正が済んだ最新の情報を盛り込んだ設計を行っていきます。

 

データベースは、このように活用しながら、複数の設計者で情報を共有していくために利用します。

 

この方式のメリットとして、図の一番上位にあるテンプレートというべき「マスター」図面について、基本的には、最新の状態に更新し管理していく必要がありません。

 

顧客ごとや、製品ごとの仕様により、管理・保存する図面の種類が多い場合には、テンプレート(マスター)を作っても、管理するべきテンプレート図面が多くなるだけで、せっかく更新しても、それぞれのテンプレートは使う頻度は少なく、手間をかけて管理するほどメリットがありません。

 

そこで、どの世代の派生品図面を使っても、最新の状態の情報を、別途データベースから参照することで、設計者全員が最新の情報を参照できる方法を採用します。 それがデータベース方式です。

 

データベースのテーブル設計としては、次のような構成になると思います。

 

登録ID 品番 サブアセンブリ名称(番号) 部品名称(番号) 変更履歴番号 親図面名称(番号)

コピーor再利用

変更内容 変更内容の参照画像リンク先 図面ファイル保存先 担当者 更新日

 

留意すべき点としては、検索する設計者が正しい情報にたどり着けるなど、検索性の良いデータベース設計に配慮することでしょう。

 

実際に運用がはじまると、データベースへの登録など間接工数は増える傾向になりますが、後工程である加工や組立てで発見される設計ミスの未然防止など、導入効果は部分最適ではなく、会社の全体最適で考えていくべきでしょう。

 

以上、複数設計者により、継続的に更新していく図面を社内で共有管理していく方法についてでした。

 

社内で、複数の設計者による自己流図面が増えすぎてお困りの企業さまは、ぜひお気軽にお問合せください。

 

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型技術2018年3月臨時号コラム「金型加工用NCデータ作成における省力化のポイントと実例」

 

今回は金型製作における機械加工用NCデータ作成の省力化をテーマに執筆させていただいた。NCデータとは主に、NCフライス、マシニングセンター、ワイヤー放電加工機、型彫り放電加工機などを動かすための動作プログラムを指す。

 

このNCデータ作成作業においては、工作機械に直接人間が打ちこむ場合もあるが、近年CAD/CAMを使うことが多くなった。したがって今回、CAD/CAM作業を前提にした省力化を中心にまとめている。

 

今回、NCデータ作成の省力化にあたり、金型製作における様々なNCデータ作成の状況に応じ、どのようなアプローチで省力化を図っていくべきか、またそれを実現するソフトウェア技術にはどのようなものがあるかなど、実際に運用している企業の事例を織り交ぜながら紹介していきたい。

 

状況に応じたNCデータ作成作業のパターン

まずは、普段行われているNCデータ作成作業のパターンを整理してみよう。

 

パターン

ここ数年、多くの金型メーカーで取り組まれている3次元の金型設計も、かつては2次元設計であったことから、現場に提供されていたのは、紙仕様の金型図面や部品図であった。

 

これにより現場では、金型構造部を構成するプレート類の加工について、紙の図面を見ながら工作機械に直接プログラムを打つか、2次元用のCADデータであるDXFデータを設計担当からもらい、2次元用CAD/CAMにそのデータを取り込み、NCデータを作成していた。今も2次元設計が主体の金型メーカーは、このパターンで作業している。

 

パターン

また、金型構造部は2次元設計であっても、例えばプラスチック成形金型やダイカスト金型における製品意匠面の機械加工においては、立体的な自由曲面に対応できる3次元加工が必要になるため、意匠面のあるキャビ・コアの3Dモデリングを行い、3次元CAD/CAMを使ったNCデータ作成を行う。それ以外の構造部(主にプレート類や小物部品)は、紙図面や2次元CAD/CAMを使ったNCデータ作成を行っている。

 

パターン③

近年、金型構造部においても設計の3次元化が普及してきたため、上記パターン①②とは異なり以下のような方法がとられている。

 

  • 金型全体設計は3次元で行うが、各部品については、加工現場で従来の手順が踏めるように2次元図面を作図するパターン。金型全体図は3次元データで現場に提供するか、もしくは紙図面で作図する。NCデータ作成作業については、前述したパターン①②とほとんど手順は変わらない。プレート類や小物部品については、従来の2次元加工の手順で行い、自由曲面が存在する金型意匠面についてのみ、3次元CAD/CAMを使ってNCデータを作成する。
  • 金型全体設計は3次元で行い、加工現場に対しても3次元データで提供するパターン。この場合、現場で扱うCAD/CAMは3次元に対応している必要がある。このパターンは、主に金型メーカーから、他の機械加工業者に加工依頼する場合にとられることが多い。この場合のNCデータ作成作業において加工現場は、2次元図面に変換するか、3次元モデルのまま扱うかで手順は異なる。2次元図面に変換した後の手順は、前述したパターン①②と同じである。しかし、3次元モデルのままNCデータを作成する場合では、Z方向の情報を人間が手入力しなくて済む。
  • 金型構造部の設計を行う際、設計者がボルトやノックピンなど標準部品を配置する場合に、穴加工や切削加工などの加工属性まで割り付ける「フィーチャー設計」を行うパターン。
    このパターンは、金型メーカーの社内プロセスにおいて、設計と加工現場で同じCAD/CAMを使用している場合にとられることが多い。

 

省力化で取り組むべきこと

ここまで色々なNCデータ作成のパターンをみてきたが、それぞれの作業パターンにおいて、省力化のために取り組むべきことを見ていこう。

 

パターン①(2次元の紙図面もしくは、2次元CADデータでNCデータ作成する場合)

このケースにおいては、目新しいソフトウェアの機能開発も少なくなってきているが、パターン③に出てきた3次元のフィーチャー設計は、2次元設計でも行うことができる。

具体的には金型構造設計の際に、キャップボルトやノックピンなどの標準部品を平面図に配置すると、例えばプレス金型であれば、ストリッパー、パンチプレート、バッキングプレートなど、各階層のプレートそれぞれに加工定義(タップやキリ穴、ザグリ穴など)が付与される。またその部品と加工に対応した断面図が、側面図や正面図などに自動作図される。

 

こうした機能を使うことで、改めて加工現場にてゼロからCAM定義を行うことなく、加工担当者は加工ワークの向き、加工原点の設定、加工定義の調整などで済む。

 

CAM上の加工定義においては、従来手作業で行っていた操作を可能な限りマクロ化することが望ましい。また、操作マクロや加工条件を担当者間でシェアすることで、全体の効率化につながる。

 

パターン②(プレートや小物部品は2次元加工、金型意匠面のみに3次元加工を行う場合)

プレートや小物部品に対する2次元加工の省力化の方向性は、上記のパターン①と同じである。

 

金型意匠面に行う3次元加工のCAM作業省力化については、まずはやはりマクロ化は必要である。

例えば、荒取り→部分荒取り→中仕上げ→仕上げ加工→狭小部の削り残り加工といったプロセス・使用工具・加工条件は、標準化できることが多く、データ作成の都度定義するのは時間の無駄と言える。

それぞれのCAMが実装している加工プロセスの保存と呼び出し機能をフル活用すると共に、最も安定したプロセス・条件を社内でシェアするべきである。

 

また、かつては3次元加工のCAM作業において、前工程で仕上がっている面に工具軌跡を触れさせたくない、凸のピン角形状にダレを発生させたくないといった理由から、本来の加工形状にはない、工具軌跡を制限するためだけの、通称ダミー面と呼ばれる一種の蓋のような役目をする形状を作成しながらNCデータ作成することもある。しかし近年、CAMによってはダミー面と同等の機能もあり、活用したいところである。

 

パターンケース(イ)(金型設計から3次元設計を行い、加工現場に3Dモデルで渡す場合)

この場合において、2次元CAMを使ってデータ作成を行う場合は、3次元モデルを一旦2次元の状態に変換しなければならない。NCデータ作成省力化のためには、こうした事前準備を迅速に行うことも重要である。

 

3次元に対応できるCAMを使って2次元加工を行う場合、CADモデルをCAMに取り込む際、フィーチャー設計に近い状態で取り込むことができれば、人の操作で行う加工定義を省力化することができる。

例えば、モデル上の各面の色で加工種類を認識する機能がある。穴であれば、タップ穴やリーマ穴の認識などがあり、ポケット加工などのエンドミル加工においては、▽の粗い加工面で良いのか、▽▽や▽▽▽の仕上がり面まで必要なのかの認識がある。

 

パターンケース(ウ)(金型設計で3次元のフィーチャー設計を行う場合)

この場合のプレート類の加工においては、最も省力化できる余地が大きい。

 

フィーチャー設計された部品のCADモデルを受け取った加工現場のCAM上では、各プレートをフィーチャー認識させると、例えば穴加工であれば、タップ穴やリーマ穴など穴種類をモデルから認識させることができ、センター穴→ドリル穴→タップ加工といった、連続した加工プロセスが自動で定義される。

こうした機能を使うことで工数削減はもちろん、現場での加工ミスや漏れを減らすことも可能になる。

 

取り組み指針に沿ったCAM機能の選び方

では、先ほどまで挙げてきた「省力化で取り組むべきこと」を実現するCAD/CAMの機能にはどのようなものがあるのか、具体的にみていこう。

 

2次元設計でのフィーチャー設計機能(パターン①での対応)

2次元設計の効率性と3次元モデルの利便性を合わせ持ったシステムとして、(株)C&Gシステムズ社のEXCESS-HYBRIDⅡが知られている。こちらのCAD/CAMを使用することで2次元ベースのフィーチャー設計が可能になる。

その他には、キャムタス(株)社のSpeedy mill/winの「プレート分解」機能などが使われている。

 

フィーチャー設計の導入にあたり使用するCAD/CAMを選ぶ際には、運用までの立ち上がり期間をできる限り短縮できるソフトを選ぶべきである。

筆者が聞く限り、フィーチャー設計に取り組んだ全ての企業がうまくいっているわけではない。うまく立ち上がらずに、従来の方法に戻ってしまうことも少なくない。

失敗する理由の多くが、運用前のデータベース登録作業の大変さがあり、普段の金型業務と並行しながら行わなければならない場合が多い。

 

そこで、CAD/CAM選定にあたっては、①販売ベンダが深い金型の知見をもっていること、②ミスミ部品など初期設定で大半のデータベース登録が済んでいるといった要件を満たすシステムを選ぶべきである。

 

試作板金と量産用プレス金型の外販を両立し事業を行っているユーアイ精機株式会社(愛知県尾張旭市 TEL0561-53-7159)では、EXCESS-HYBRIDⅡを駆使し、3次元でモデリングする製品意匠面と、2次元で加工する金型構造部をそれぞれ切り分け、効率的なNCデータ作成を行っている。協力メーカーに設計を外注する際も、同じEXCESS-HYBRIDⅡを持つ金型メーカーに依頼しデータベースを共有することで、フィーチャー設計システムを活かせる外注政策をとっている。

 

3次元CAMでの省力化(パターン②での対応)

  • 加工プロセスの保存・呼び出し

3次元CAMでの省力化においては、まず加工プロセスの保存・呼び出し機能は活用したいところである。筆者が使っているOPEN MIND社のhyperMILLにおいては保存した加工プロセスを呼び出すことで、加工対象のモデルを変えても、使用工具・加工条件・加工定義(等高線荒取り・走査線仕上げ加工など)を使いまわすことができ、迅速なCAM作業を行うことができる。

こうした機能を使い、被削材種、ワークサイズ・特徴、部品種類によって、保存プロセスを多数用意しておき、CAM作業者間でシェアすることが望ましい。

 

筆者がサポートさせていただいた(株)瑞木製作所(愛知県尾張旭市 TEL 052-771-8410)では、AUTODESK社のHSMWorksを使用しているが、このCAMは荒取り加工パスに定評があり、加工に関する細かなパラメーター調整ができる点も特徴である。

 

半面、部品によって細かく定義されたパラメーターや、同社が扱う航空機部品に多い薄肉形状の加工においては、膨大な数の加工プロセスになることも多いが、CAM作業の都度、新たに定義していては、加工条件のばらつきリスクはもちろん、作業時間のロスも大きい。

そこで同社は、HSMWorksのプロセス保存機能を活用し、効率的なNCデータ作成作業を行っている。

 

  • ダミー面作成作業を無くす

ダミー面の作成については、古くから当たり前の作業として行われてきたが、その作業を不要にできる機能がCAMに実装されている。 筆者の経験では、(株)牧野フライス製作所のFFCAMが持つ「パス作成補助機能」が便利であった。

 

例えば、加工するワークと同じサイズでモデリングされた3Dモデルを加工現場が受け取った場合、加工軌跡を若干はみ出させたいときがあり、こうした際に使えるパスの「延長」機能や、3Dマシニング加工の前工程、例えば研削加工などで仕上がっている面に触れさせないパスを「面から離す」機能などがある。

 

また、モデル上は凸のピン角になっていても、工具の加工軌跡が円を描き、ダレができてしまう部位においても、きれいなピン角が出せる加工軌跡が出力できる「等高線角だし・投影角だし」機能がある。

 

3次元設計データを他システムで扱う場合の省力化(パターン③ケース(イ)での対応)

2次元CAMを使用する加工現場において、3次元CADデータを受け取った場合、(A)三角法による2次元図面に変換する、(B)2次元図面に変換することなくCAMに取り込みデータ作成作業を行うといった方法があるが、やはり(B)の方法が省力化には望ましい。

 

筆者も使用している(株)エリジオン社の2次元CAD/CAMキャメストには、「3D活用エンジン」という機能があり、3次元CADモデルをDXFデータなど2次元用のCADデータに変換することなくそのまま取り込むことができ、CADモデルが持つ面の色情報、Z深さ情報などをダイレクトに加工定義に反映させ、CAM作業の大部分を省力化することができる。

 

また設計からのCADデータを、加工現場が3次元データで受け取り、3次元のCAMでNCデータ作成を行う場合、キャメストの3D活用エンジンのように、モデルの面の色情報、穴やポケットなどの深さ情報を、ダイレクトにCAMに反映させることができれば、作業の省人化につながる。

 

hyperMILLには、フィーチャー認識機能があり、マクロ機能と併用することで、3Dモデルを取り込んだ状態から、プレートに必要な加工定義を一気に自動で作らせることができる。現状の機能では、ポケット加工などエンドミル切削については、狙いの表面粗さに応じた加工手順まで完全に自動で反映させることは難しいが、穴加工については設定次第で、かなりの自動化を行うことができる。

図 hyperMILLによるフィーチャー機能を使用したところ

 

3次元設計でのフィーチャー設計機能(パターン③ケース(ウ)での対応)

3次元設計の本来のメリットを出すことは、設計作業単体だけでは難しく、後工程、特にデータ作成やトライ作業を設計段階に取り組むことで効果を発揮できる。

 

3次元のフィーチャー設計を行うことの加工現場でのメリットは、2次元のフィーチャー設計と同様に、加工定義が済んだ状態でCAM作業に入れる点である。残る加工現場の作業としては、実際に加工するワークの向き、加工原点、実際に使用する機械に応じた工具設定・加工定義の調整などで済む。

 

筆者がコンサルティングを行っている株式会社 建和(愛知県安城市 TEL 0566-92-6295)では、ペーパーレスの3次元設計のメリットを最大限に活かしたフィーチャー設計を行っており、プレス金型において、特にリードタイム短縮にこだわった取り組みを行っている。

 

まとめ

ここまでNCデータ作成における省力化の例をみてきたが、CAM作業はいかに効率化できても、実際に加工した金型自体が必要品質を確保できてようやく要件を満たすことができる。

そのためには、被削材の種類や使用工具、加工に使う工作機械、加工形状・クランプ状態など、様々な要因がからみ、従来は加工技術者の判断なくしては対応ができなかった。

 

しかし一気に全部ではないが、それらのノウハウは徐々にデータ化され、標準化されてきている。例えば、Mashining cloudやcim sourceといったインターネットを介したサービスでは、加工形状、被削材、加工プロセスに応じた推奨工具と条件をダウンロードできる。

 

こうしたサービスによって、従来技術者の経験によって蓄積されてきた「引き出し」も、公開された情報として標準化されていくのかもしれない。

 

こうした知識・情報の標準化やCAMの機能向上によるNCデータ作成の省力化が進んでも、筆者も含め、加工技術者の個性は発揮できるよう切磋琢磨していきたいところである。

 

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金型・部品加工業 専門コンサルティング【加工コンサル】

代表:村上 英樹(中小企業診断士、元・プレス金型技術者)

愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

 

CAMを使った3D加工における工数に配慮したパスの作り方

 

今回は、CAMを使い、ボールエンドミルを使って自由曲面などの3次元加工を行う際に、工数を少なくすることに配慮したパスの作り方についてみていきたいと思います。

 

なお、自由曲面などの3次元加工というのは、例えば、下図のようなボールエンドミルでないと加工できない形状を指します。

 

では、さっそく手順をみていきたいと思いますが、当事務所のクライアント先には、5軸マシニングを使っている事業者もみえるので、下記のそれぞれに分けてみていきたいと思います。

  • 3軸加工の場合
  • 5軸加工の場合

 

ポイントは、次の2点です。

  1. 形状に深い部位があり、ホルダー干渉を避けるため、工具突き出し長さが長くなっても、1本で全ての部位を加工しない。1本で加工すると、工具のカタログ加工条件よりも何割か下げた送り速度で加工せざるを得なくなる。
  2. 工具突き出し長さが長くなる場合は、工具のカタログ加工条件が出せる突き出し長さまでの工具と、送り速度を下げざるを得ない長い突き出し長さの工具とを分けること。

 

① 3軸加工の場合

  1. 目安として突き出し長さ4D以内で加工できる部位・エリアを抽出して加工する。

    理由:最もカタログ値に近い送り速度が出せるため。
    φ10ボールエンドミルにおける工具突き出し長さ等高線加工における加工エリア

  2. 次に、突き出し長さ6Dを目安に、この長さで加工できる部位・エリアを抽出して加工する。

    理由:ステップ1.の送り速度の10~20%減ていどで加工できるエリアを確保するため。
    工具突き出し長さ6Dの様子突き出し長さ6Dの加工エリア

  3. 突き出し長さ8D以上で加工する部位を抽出する。

    理由:残った部位を、やむなくステップ1.の30~50%以上減の速度で加工するため、出来る限り少ない範囲にしたい。
    工具突き出し長さ8Dの様子

 

② 5軸加工の場合

  1. 3軸加工と同じく突き出し長さ4D以内で加工できる部位を抽出し、まず5軸機能は使わず、3軸加工における「等高線加工」を行う。

    理由①:5軸加工は便利である反面、主軸やテーブルなど、精度や各軸同期速度のベースとなる旋回軸・傾斜軸が同時駆動する加工であるため、寸法確保・加工時間への影響が大きい。そこでまずは、出来る限り動かす軸が少ない加工を行い、加工品質・送り速度の安定を優先する(特に金型部品など)。

     

    理由②:3軸加工の仕上げ工法については、一般的に「等高線加工」と「走査線加工」があるが、品質優先のために「等高線加工」をまずは採用する。

     

    「走査線加工」はXYZ、3つの軸が同時に動くことが多いが、「等高線加工」は基本的にZ軸位置を固定したあと、XY軸のみで軌跡をつくる。そのため「走査線加工」よりも「等高線加工」の方が寸法精度を確保しやすいため。
    理由③:突き出し長さ4Dまでであれば、最もカタログ値に近い送り速度が出せるため。

  2. 突き出し長さ4Dで加工できる部位を抽出し、5軸機能は使わず、3軸加工における「走査線加工」を行う。

    なお、「等高線加工」と「走査線加工」では、「等高線加工」が先で「走査線加工」は後に行う。これは「走査線加工」における壁面付近に接近した際の安全を確保するためであり、必ず「等高線加工」を先に行っておく。

  3. 突き出し長さ4Dと同じ工具のまま、5軸機能を使って干渉回避機能を使った加工を行う。

    5軸加工よりも3軸加工の方が加工精度を出しやすいため、まず4D以内の工具突き出し長さで加工できるエリアを3軸加工で先に加工しておき、次にその工具で届かないエリアを5軸加工で行う。
    5軸加工を使った加工エリア

  4. 突き出し長さ4D以内の同じ工具で加工できても、狭い凹部が存在すれば、そこを抽出し、広く開けたエリアを加工する際の1/3くらいの送り速度まで下げた加工を行う。

    3次元加工の狭小部位
    なおそれにあたり、前述した手順①~手順③において、当該エリアの加工パスは除外しておくことで、手順①~手順③ではカタログ値の送り速度を出せるようにする。

    理由①:最もカタログ値に近い送り速度が出せるエリアを出来るだけ多く確保するため(あらかじめ狭い凹部を除外しておく)。

    理由②:狭い凹部は加工負荷が高く、ゼロカットによる再仕上げ加工の頻度が高くなる。そういった部位の加工パスをあらかじめ分けておくため。

 

以上、CAMを使った3D加工における工数に配慮したパスの作り方をまとめてみました。

加工目に配慮した加工パスの演算ができるようになった次は、やはりビジネスとして、加工時間に配慮したパスが出せるようステップアップしてみてはいかがでしょうか。

 

もし実際の加工モデルを見ながら、具体的なアドバイスが欲しいという場合は、お気軽にお問い合わせください。

 

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

 

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マシニング加工における荒取り加工条件の標準化の重要性

 

当事務所のコンサルティングにおいては、特に標準化という点を重要視しております。

 

その標準化を行ううえで、特に多いのが、マシニング加工における荒取り加工条件の設定があります。

 

なぜ、このテーマにおいて、標準化が必要になるかというと、例えば、スローアウェイの工具を使って荒取りを行う際、そこで必要になるS値・F値について、多くの方が使用する工具カタログに記載されている推奨条件をそのまま使用しているという理由があるからです。

 

しかし、この推奨条件は万能でしょうか?

 

 

例えば、下図のように、荒取りする前提が異なる場合、それでも、推奨値としてS値・F値は同じでしょうか?

マシニングの荒取り加工の断面積

 

実際のところ、変えることはなく毎回同じ設定にしているオペレーターも多いと思います。

 

しかしながら「削り屋」としては、下図のように、少なくとも「送り速度」については、変えたいところです。

マシニング切削の断面積の小さいとき

マシニング切削の断面積の大きいとき

その目安は何になるのでしょうか。

これは、上の2つの図に記載されている面積×工具の進行距離(長さ)、つまり切削する体積になります。具体的には、工具が1回転するときに切削する体積です。

 

マシニング加工における切削体積

 

この考え方を使って、切削体積から工具の送り速度に換算する条件式に当てはめるといった標準化を行うと、効率的かつオペレーターごとの個人差がない荒取り加工ができるようになります。

 

当事務所では、そのベースとなる計算式をご提供して、マシニング加工条件の標準化をサポートしております。

 

ご興味がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

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【ドリルの適正な加工条件】CAD/CAMの罠に陥っていませんか?

ドリル加工後の切りくず

 

たいへん便利なCAD/CAMですが、その反面、罠に陥りやすい面もあります。御社はその罠にはまっていませんか?

 

例えば、ドリル加工です。

 

私が加工屋さんの技術・経営診断をさせていただくと、CAMを使っているものの、そこに登録されている加工条件について、しばらく変更していない、また初期登録のまま変更したことがない、といった状況をよく見かけます。

 

また、「マシニングで使っているドリルは変えていませんか?」と質問すると、従来からの黒ドリルだけではなく、コーティングハイスドリルや、超硬ドリルなど、新しい工具が使われていたりします。

 

そうなると当然、エンドミルと同様、それぞれCAMの設定の中で、加工条件を使い分けなければいけないということになるのですが、その設定を使い分けるのは結構面倒くさいところもあります。

 

そうしたところもあり、黒ドリルと比較して、目立って加工条件が遅いわけではないと、初期登録のまま使っている現場も多いです。

 

しかし、そもそも黒ドリルの加工条件からして、適切でないことに気付いていますでしょうか。

 

ここで質問です。下記の事例において、どちらの切りくずが良好でしょうか。

  • 2本の切りくずが同じ長さで出てきて、きれいにつながって均等に出ている。
  • プチプチと短く切れながら、出てくる。

 

どうでしょうか。最近はドリルを手で研ぐことが少なくなりましたが、私と同じ世代の方々、特にベテランの先輩から手研ぎを教えてもらったとき、①が正しいと教えてもらった方が多いと思います。

 

切りくずが2本同じ長さで、しかも長くつながって出てくるのは、うまく研げた証拠だ、と言った具合です。

 

しかし、これは逆で、②の方が正解です。

 

①の状態は、送り条件が遅いため、切りくずの厚さが薄いため、長くつながった切りくずになりますが、特にマシニング加工において、こうした切りくずは、ドリルに絡まりやすく、トラブルが起こりやすくなります。

 

逆に、②の状態は、①の状態よりも送り条件を上げているために、切りくずが厚く、カールしたとき折れやすくなっています。

 

そのため、プチプチとつながらずにすぐに切れるのですが、実はこの状態の切りくずの方が、穴からの排出は良くなります。

 

最近、プラスチック金型の冷却穴の加工などでよく使われている、ノンステップドリルもこうした切りくずの排出性の良さを利用しています。

 

長く絡まる切りくずを出てしまっては、100ミリを超えるような細穴を、ノンステップで加工することは厳しいです。

 

大変よく使われているコーティングハイスドリルも同様のメカニズムで、こうした排出性の良い切りくずをプチプチと出せることで、ドリル溝を浅くし、芯厚と呼ばれるドリル本体の断面積を多くして剛性を高め、従来の黒ドリルよりも高い送り速度が出せるようにしています。

 

これを、従来の黒ドリルのままの条件で使い、良い切りくずは長くつながるものだとして、本来とは違う使い方をしていては、むしろドリルの寿命を縮めることもあります。(ドリル摩耗は、被削材との接触時間に比例します)

 

よくベテランの先輩から教えてもらう時には、「10ミリのドリルなら、回転あたりの送りは0.15ミリだ」とか、「8.6ミリのドリルなら0.12だ」といった、固定的な数値で「手順の引継ぎ」を受けることが多いです。

 

しかし、「技術者を育成する」の観点からは、適正な加工状態を伝え、それを自分で実践しながら習得していく方が、その先の技術力・応用力を育てていくには有効です。

 

標準化された条件値を「丸暗記」することが、物覚えの良し悪しではありません。

 

日々の加工は、仮説と検証の繰り返しです。

「この条件で削ればこうなるはずだ」と思っても、

「よし、その通りになった」という結果もあれば、「あれ?違う結果になったぞ」となれば、また別の仮説を考え、検証を行います。

 

それができる技術者を育てるには、標準値の暗記能力の育成ではなく、仮説と検証の考えを教え、その前段となる知識を教えていくことの方が有益です。

 

そうした点で、加工条件が固定されたままのCAMの活用は、ある程度の効率化にはつながりますが、良い技術者を育てる点では、副作用になり兼ねない一面も持っています。

ご注意ください。

 

※ 実際の加工においては、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の対処については、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

 

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【プレス金型の抜きパンチ折れの対処方法】間違った対処をしていませんか?

 

「抜きの金型で、ダイス鋼で作ったパンチがどうしても折れてしまうので、ハイスか超硬のパンチに変えたけど、なかなか良い結果が出ません」

 

このように、クライアントさんから相談を受けました。

 

まず重要になるのが、折れたパンチが、引っ張られて折れたのか、それとも、つぶれて折れた、どちらなのか、という点です。

 

もし、引っ張られて折れた場合、それは、板材を抜いた後、板材の中に入り込んだパンチを引き剥がすときに折れた可能性が高いです。ちなみに、そのときにパンチにかかる荷重のことを、「かす取り力」と言います。

 

このかす取り力にパンチの強さが負けて、折れてしまった可能性が高いです。

 

ということは・・・

 

この「引っ張り」の荷重に苦手な金型材料を使うと裏目にでることがあります。

 

例えば、一般的に耐摩耗性に対し、非常に強いといわれる超微粒子系の超硬合金ですが、引っ張りの荷重に対して、苦手な種類のものもあります。

 

むしろ、微粒子系でない超硬合金の方が、引っ張りの荷重に強いものもあります。

 

ですから、「パンチが折れた→もっと硬い金型材料を使う」については、その金型材料が、ただ硬ければ良いというわけではありません。その種類について慎重に選定したほうが良いということです。

 

また、パンチがつぶれて折れた場合については、これは「降伏強さ」の高い金型材料を使いましょう、ということになります。

 

ただ、なぜ折れるほど抜き抵抗が高くなってしまったのか、という問題はありますよね。

 

よく折れたパンチをルーペを使って、しげしげと眺めてみましょう。

側面が痛んだ抜きパンチの様子

 

いや、できれば、折れる前に見ておきたいですよね。10倍に拡大できるルーペで充分です。

 

抜きパンチが折れてしまった場合、まずは「どういう原因で折れたのか」そこから調べましょう。

 

それによって、取るべき対策が変わってきます。

 

とは言いましても、短納期、短納期対応で、なかなかゆっくり調べてる時間もないですよね(^ ^;)

 

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※ 実際の加工においては、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の対処については、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

 

 

金型材の焼き戻しを2回行う必要性について

 

まず、炭素鋼や合金鋼の焼き入れ処理のプロセスを見ていくと、
生材とか、なまくら材などと呼ばれる、焼き入れ前の状態は、フェライト素地と呼ばれ、炭素鋼や合金鋼であれば、素材に所定の炭素量が含まれています。

 

この材料を、材料種類に応じた温度で加熱すると、素地のフェライトは、オーステナイトと呼ばれる組織に変化します(この変化は「変態」と呼ばれます)。このとき、フェライト素地に含まれていた炭素は、オーステナイトに変態するときに微小化され、硬い炭化物として溶け出します。この炭化物が、焼き入れ後の材料硬度に影響します。

 

この後、焼き入れ処理として冷却すると、いわゆる「焼き」が入った状態になり、さきほどのオーステナイト組織は、硬いマルテンサイト組織に変態します。このとき、冷却する速さが速いことがポイントで、硬い炭化物もそのまま残ります(逆に遅いと、オーステナイトほど硬くないベイナイトという組織が出てきてしまったり、炭化物も組織内で適正に分布しなくなります。

 

炭化物の輪廻
炭化物の輪廻
田部博輔 著 (2006/07)「金型技術者のための型材入門」より

 

通常、材料種類・特性に応じ、780~1200℃までの温度で加熱し焼き入れ処理を行い、目的に応じた硬度・特性に変化させるために120~700℃までの間で、焼き戻し処理を行います。

このとき、材料体積のうち、30%くらいまでの割合で、軟らかいまま硬化しない部分があります。この適正に焼入れ硬化されない部分、つまり適正なマルテンサイト化されない部分が「残留オーステナイト」です。

 

焼入れ鋼の顕微鏡組織
焼入れ鋼の顕微鏡組織
田部博輔 著 (2006/07)「金型技術者のための型材入門」より

 

 

この残留オーステナイトを減少させるためには、2回の焼き戻しを行うか、サブゼロ処理と呼ばれる冷却処理を行います。

 

2回の焼き戻しを行う理由として、1回目の焼き戻しでは、実質、前述した残留オーステナイトをマルテンサイト化、つまり硬化させる処理になり、2回目の焼き戻しでようやく、その材料の応力除去や靭性の改善が行われます。つまり、2回目の焼き戻しで、本来の焼き戻しの効果がでます。

 

なお、サブゼロ処理とは、マイナス温度まで材料を冷却させることで、残留オーステナイトを分解させる処理のことです。冷却には、ドライアイス(約-78.5℃)や、液体窒素(約-196℃)が使われます。焼入れ加熱から急冷による焼入れ処理を行い、その後、サブゼロ処理を行ったあと、焼き戻し処理を行います。

 

残留オーステナイトの分解処理により、適正な焼入れ硬化と、下記のグラフに示すよう、材料の経年寸法変化を抑制することができます(完全ではない点に注意)。

SKD11の熱処理条件による経時寸法変化
SKD11の熱処理条件による経時寸法変化
田部博輔 著 (2006/07)「金型技術者のための型材入門」より

 

なお、ワイヤーカット放電加工を行う材料については、500℃前後の高温戻しが必須です。以前は、冷間で使われるダイス鋼は特に、金型として使用する温度により、当たり前のように150℃前後の低温戻しが行われていましたが、ワイヤーカット加工後に、変形トラブルが多発しました。

 

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参考文献
田部博輔 著 (2006/07)「金型技術者のための型材入門」日刊工業新聞社