金型・部品加工業専門コンサルティング

金型・部品加工業専門コンサルティング(加工コンサル)は、金型メーカーや、マシニングなどの機械加工業を専門とする経営コンサルタント事務所です。

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FAQ

FAQ

「今さら聞けない」汎用フライスとマシニングセンターの使い分けについて

昨今の金型メーカーの課題

筆者が金型メーカーを無料診断させていただいたり、コンサルティングをさせていただく中で、まさにこの点について課題だと思うことが多々あります。

 

その課題とは、CAMデータ作成とマシニングセンターのオペレーション業務の分業化が進み、例えば、片手サイズのプレートにキリ穴を2、3か所加工するような内容のフライス加工についても、CAMオペレーターが加工プログラムと加工指示書の作成を行い、それを受け取ったマシニングオペレーターがワークとプログラムを機械にセットして加工を行うといった、コスト面からはやや過剰とも思える手順を踏んでいる点です。

 

こうしたプロセスはミスの発生防止には効果は高いですが、図面を見ながら汎用フライスで手早く済ませてしまう場合の工数と、CAMデータを作成し加工指示書まで作って加工者に渡す分業での工数とを比較すると、圧倒的に汎用フライスの方が早いと思われます。

 

もちろん汎用フライスはうっかりミス(ポカミス)のリスクがつきまといます。

しかし両者の工数の差を考慮すると、例えば片手サイズのプレートであれば、ミスした時のために材料を余分に買っておいたとしても、加工部品によっては汎用フライスの方が安くできるかもしれません。

 

そのくらい両者の工数には差があると考えています。

したがって加工コストの最適化のためには、CAMとマシニングオペレーターの分業について、その程度を少し抑えていくことが望ましいと思われます。

 

具体的には、マシニングセンターの手動機能を活用し汎用フライスのように利用する、簡単な穴加工や切削加工についてはハンドル送りで対応するなど、過度にCAMに依存しないことが、金型メーカーのフライス加工の工数削減につながると思われます。

 

もちろん、こうした作業を行うためには、これまでの段取りのみの作業には必要なかった、加工条件や工具選定に関する知識が必要になってくるため、教育によるオペレーターのスキルUPが必要になります。

 

汎用フライスとマシニングセンターのあるべき使い分け

では、汎用フライスとマシニングセンター、それぞれの持ち味を活かす使い分けとしてどのように考えれば良いのでしょうか。

 

そもそも、マシニングセンターの強みを発揮できる場面は、次のようなケースであると考えられます。

  • 同じものを複数個加工するとき。
  • 使用する工具の本数が多い加工のとき。
  • 荒取りの切削体積ボリュームが多い加工のとき。
  • 高送りカッターや超硬ドリル、チップ式ドリルなど、市販の高能率工具が使用できるとき。
  • 自由曲面など3次元の加工を行うとき。
  • 長時間の無人加工を行うとき。

 

逆に、上記のマシニングセンターの強みが発揮できるケース以外の加工では、汎用フライスの強みが発揮できると場面だと言えます。

例えば、次のようなケースです。

  • 試作品など、少量の加工のとき。
  • 多くても2、3本の工具で済む加工のとき。
  • 手動ハンドルによる手送りでエンドミル加工を行うとき。
  • 強くクランプできない異形ワークの加工などで、切削負荷を調整しながら加工したいようなとき。

 

これら汎用フライスの良さは、加工を始めるまでの時間がとても短いという点です。

 

ハンドル送りによる加工などは、段取りしてすぐに加工を始めることができます。

また手送りによるエンドミル加工では、とかくマシニングセンターでは送り速度やロードメーターなど数値でしか判断できない切削負荷について、実際に手に負荷としてかかってくる切削抵抗を肌で感じとりながら、送り速度の調整を行うことができます。

 

こうした点についても、汎用フライスの経験のない最近の若手加工者が加工条件の限界がわからないといった弊害につながっていると筆者は考えています。

 

未経験で入社した社員さんについては、いきなりマシニングセンターを担当させるのではなく、あえて汎用フライスから担当させることで、加工限界を肌で理解した伸びしろのある加工者に育つかもしれません。

 

製造現場では、エース級の社員さんばかりでもなく、個人差の発生しない分業体制でできるだけ生産性を上げなければいけない事情も、非常に理解できます。

しかしながら、現場診断やコンサルティングをさせていただく中で、むしろ大中規模のメーカーさんの加工現場で、過度に「CAM分業」に依存した状況を見かけます。

 

適宜、機械オペレーターさんのスキルUPと並行しながら、程度な汎用フライスとマシニングセンターの使い分けをしていただきたいと思います。

 

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング

代表:村上 英樹(中小企業診断士)

愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

 

※ 本コラムは、型技術2019年4月号の記事から抜粋・編集しました。

金型設計における3次元CADの選び方

金型設計における3次元CADの選び方

金型設計で使われている3次元CADの種類

今回は、金型の意匠面モデリングだけでなく構造部の設計に用いる3次元CADを対象として、その種類と選び方について見ていきたいと思います。

まず、金型の構造設計で用いる3次元CADには、大別して下記の2つの方式があります。

  1. ヒストリー型
  2. ノンヒストリー型

 

ヒストリー型CADの特徴とメリット

ヒストリー型のCADは、「パラメトリック方式」とも呼ばれ、設計していく過程が履歴として記録されます。

これにより、はじめは大雑把に設計し、徐々に履歴の中にある細部の寸法や位置を微調整していくという設計手法をとることができます。

 

これによるメリットとしては、まずはイメージから形にしていくといった自然な流れに沿った設計ができ、モデルを作り終えた後でも自由に編集ができ、またパーツや構造を微調整し、のちにモデルを使いまわすといったリピート設計にも寄与する点があります。

 

金型設計で使われている代表的なヒストリー型の3次元CADとしては、CATIAやNX、Creo、SolidWorks、シマトロンなどがあります。

 

ノンヒストリー型CADの特徴とメリット

一方、ノンヒストリー型は、ヒストリー型の逆のような機能を持ち、設計操作の履歴は持ちません。

そのため、部品のサイズや位置を後から寸法で動かすといった操作はせず、ダイレクトに位置や大きさを直接編集しながら部品をモデリングしていきます。

 

これにより、部品を構成する要素間の依存関係を意識することなく、自由な操作でサクサクとモデリングを進めることができます。

 

したがって、同じような形状を繰り返しリピート設計する金型よりも、新しい構造や形状の金型を新規に設計する際には、迅速かつ軽快に作業を進めていくことができるというメリットがあります。

 

金型メーカーによく用いられている代表的なノンヒストリー型の3次元CADとして、VisiやTopSolid、SpeedyMILLnextなどがあります。

 

金型メーカーにおける3次元CADの選び方

3次元設計をはじめる際のハードルとして、2次元設計では省略することができる部位についても、きちんとモデリングする必要があり、そのため作業負担が重たくなることが指摘されます。

 

そこで、市販部品など標準的に使う部品は、登録しておき呼び出して配置することはもちろん、長さやサイズなどを自動計算させて配置させるなど、定型作業については特に効率的に作業できる機能が求められています。

 

また最近では、部品配置を行うと同時に、ザグリ加工やタップ、リーマ加工などの加工属性まで合わせて付与する「フィーチャー設計」ができることも、3次元CADを使う際の必要要件となってきています。

 

前述した3次元CADの中には、ヒストリー型・ノンヒストリー型問わず、フィーチャー設計が出来るソフトがあります。

 

ではどのような視点で3次元CADを選ぶべきか、それについては自社で製作する金型が、ヒストリー型・ノンヒストリー型、いずれのシステムであればそのメリットが活かせるかで判断すべきです。

 

例えば、金型を用いて生産する製品が大方決まっており、寸法は微妙に変わりますが形状は大きく変わらず、製作する金型の構造やレイアウトは大きく変わらないとします。

その場合の金型設計は、部品サイズや配置、数量などを編集していく作業がメインになるため、こうしたケースは、リピート設計に強いヒストリー型の3次元CADが向くと思います。

 

逆に、全く新しい形状の製品の金型を設計する場合は、構造から新しく見直す必要があるため、以前作った構造レイアウトや、部品同士の位置関係を再利用することはかえって手間がかかり、設計工数が増加してしまうことも考えられます。

 

したがって、新しい構造をイチから構想していく設計が多いといった金型メーカーは、ノンヒストリー型の3次元CADの方が適していることも考えられます。

 

まとめ

以上、金型メーカーで使われている3次元CADの種類と、選び方の指針についてまとめてみました。

 

私は、ヒストリー型・ノンヒストリー型、それぞれの両方のCADを使って設計を行った経験がありますが、それぞれに長所・短所があると思っています。

 

自社の設計業務において、それぞれの長所をフル活用できるかどうかは、業績にも大いに影響してくると思いますので、ぜひ適切なCAD選びとその活用をしていただきたいと思います。

 

参考になれば幸いです。

 

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※ 本コラムは、型技術2018年6月号の記事から抜粋・編集しました。

 

「今さら聞けない」プレス金型の見積もりの効率性と精度について

プレス金型メーカーの抱える見積もりの悩み

金型の見積もりを取り巻く現状

近年、金型の受発注においては「事前見積もり」が当たり前になっており、かかった費用を後から請求する「後見積もり」はほとんど見られなくなっています。

 

そこで金型を受注する前、プレスの製品図を元に金型費を見積もりし、場合によっては同業他社との競合により受注を勝ち取ったうえで、ようやく金型の製作に入るという流れになることが多いと思います。

このため多くの金型メーカーが、煩雑な金型の見積もりにいつも悩まされています。

 

とり取り扱う金型のボリュームにもよりますが、週に何十件も見積もりをしなくてはいけない担当者もおります。

 

見積もり金額においては一定の精度が必要であり、企業収益のためには赤字受注にならない金額を見積もらなければなりません。過度に高い見積もりでは、競合他社とのコスト競争に負けてしまうといった事情もあります。

 

また、過去の類似金型との金額に乖離があってもいけません。そうした乖離は継続的な顧客との信頼関係にも影響が出てしまいます。

そこで計算した見積もり金額と過去の実績との入念な比較検証なども必要になります。

 

金型の見積もりのあり方

そもそも「金型の見積もり」とは、プレス製品からその生産ツールである金型になった状態を予測し、その金額を積算する作業を指します。

 

したがって、最も精度の良い「金型の見積もり」とは、完全に金型になった状態から、材料費・外注費・購入部品費・工賃などを合計した金額であると言え、逆に最も迅速な見積もりとは、プレス製品図だけの情報から金型状態を予測し、見積もり金額を出すことになります。

図2 見積もり精度と要する時間の関係

 

金型の見積もりで用いられている方法

金型の見積もりで用いられている方法を整理すると、次に挙げる3つがあります。

  1. 積算方式:材料費・外注費・購入部品費・工賃などを合計した金額になります。
    最も精度が高いですが、簡単に済ます場合は金型のポンチ図などを描き、精度良く見積もる場合は、CADを使ってストリップレイアウトを作図したり、金型構造をレイアウトして、材料サイズを割り出したりワイヤーカット周長を積算したりします。
  2. 類似比較方式:過去に製作した金型の中で類似したものを検索し、違いを加算または減算し補正して計算する方式です。
    実際には最も多く使われている手法になります。
    この方法では、実績の管理や補正などもポイントになります。
  3. 統計計算方式:重回帰分析という統計手法を使った計算方法です。
    プレス製品から読み取れる情報を変数として計算式を作ります。最も迅速な見積もり手法になりますが、精度を高めるには多くの金型サンプル数が必要になります。
    重回帰分析による計算の変数には、例えば抜き型であれば、プレス製品の板厚・材質、ピアス穴径・数量、製品輪郭の周長などを使います。

 

実際の実務では、全くの新規の形状の製品の受注の場合、形状は同じで寸法が少し変わる場合のリピート受注など、ケースバイケースで、上記の積算方式と類似比較方式を使い分ける方法が多くとられています。

しかし、さらなる効率性を図っている金型メーカーでは、統計計算で概算見積もりを行う仕組みを作ったり、積算・類似比較・統計計算方式、全てを併せ持った仕組みを作ったメーカーもあります。

 

いずれにおいても、自社が目的とする、見積もり作業の効率性・金額精度に応じて、適した見積もり手法を選択していくことが重要だと思います。

 

以上になります。もしよろしければ、参考にしてください。

 

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※ 本コラムは、型技術2018年8月号の記事から抜粋・編集しました。

「今さら聞けない」3次元データ加工の手順のセオリー

教科書がない3次元データ加工

当事務所が金型メーカーや部品加工メーカーを診断させていただく際、3次元データ加工の手順がうまくまとまっておらず、よく指摘をさせていただくことがあります。

 

このようになってしまう原因として、切削加工の基礎や理論に関する市販図書は多く存在するのですが、自由曲面などの金型意匠面を加工する、3次元データ加工については手引きとなる本は、筆者が知る限り存在しないためだと思っています。

 

したがって、企業それぞれ我流となっていることが多く、それ以外では、CAMを購入したベンダからの導入教育やサポートの際に、他社事例などを元にした手順を教えてもらうなどの手立てしかありません。

 

そこで、筆者が倣い加工機からスタートし、各種のCAMやマシニングセンターを操作してきた経験や、多くの企業事例を見てきた経験などを踏まえ、今回3次元データ加工の手順のセオリーをまとめてみました。

ぜひ参考にしていただければと思います。

 

実際の手順と根拠

形状の複雑さや狙いの加工精度により、手順は増えたり減ったり、入れ替わったりすることもありますが、大まかな手順は下の表のとおりです。

 

No. 加工名 目的 残りしろ 使用するCAM機能
1 大荒取り加工 出来るだけ大きな工具で、時間あたり切り屑排出量の大きな加工を行うこと 0.5~1ミリ 荒取り加工
2 中荒取り加工 No.1の大荒取り加工の取り残した狭小部位などの荒取りを行うこと 0.5~1ミリ 荒取り加工(ストックを使用)
3 全体中仕上げ加工 次の全体仕上げの加工負荷を均一にするため、取りしろを一定に残すこと 0.1~0.2ミリ 等高線&走査線加工
4 全体仕上げ加工 先端と直径部の周速差を許容できる、可能な限り大きな工具径のボールエンドミルを使って全体を仕上げ加工すること 0ミリ 等高線&走査線加工
5 削り残り部・中仕上げ加工 No.4の全体仕上げ工具では入りきれなかった、狭小部位を小径工具で加工する。その中仕上げを行うこと 0.1~0.2ミリ 等高線&走査線加工
6 削り残り部・仕上げ加工 No.5の狭小部位の仕上げ加工。最終的に使用する工具径が小さい場合、No.5と6は段階を踏むことになる 0ミリ 等高線&走査線加工

 

各工程の具体的なポイント

表に記載されている各工程について、具体的なポイントを見ていきたいと思います。

 

No.1 大荒取り加工

この加工の目的は何と言っても「効率性」になります。

 

この工程では、できるだけ大きな直径の工具を使うことを意識しますが、もし狭い凹部があるような形状で大き過ぎる径の工具を使いますと、次のNo.2の「中荒取り」工程に加工残りを多く残してしまうことになってしまうため、そこに配慮しつつ、できるだけ時間あたりの切りくず排出量を多くできる加工を心掛けます。

 

使用する工具はラジアス工具が中心となります。

ただし、大きな工具は加工負荷が高いため、クランプ状態や機械剛性を考慮する必要があります。

 

使用するCAMの機能では、「荒取り加工」機能を使うことになります。

年々進化するCAMにおいて、この荒取り加工パスは、軌跡や加工条件の調整・補正する機能が優れてきており、この優劣がCAM選定の決め手になる場合もあります。

 

No.2 中荒取り加工

この工程で使われる機能は「ストック」と呼ばれる、前工程が終わった後の素材形状に合わせて加工軌跡を計算する、追加の荒取り加工になります。

かつて昔は、この機能の有無がCAM選定の決め手になった頃もありましたが、現在ほとんどのCAMがこの機能を備えています。

 

逆にこの機能がないと、大規模な切削量を必要とワークであっても、狭小部位が一部存在するだけで、そこに侵入できる小さな工具で全体を荒取り加工しなくてはならなくなるため、そういった部品を加工することが多い場合には、この機能が無いCAMは選ばないことです。

 

なお、指定する残り代は、No.1の大荒取り加工より小さくすると、再度全体を削るような軌跡が計算されてしまうため、加工時間の冗長化につながる懸念もありますので、残り代は同じが望ましいと思います。

 

中荒取り加工のCAM作業でのポイント

中荒取り加工では、これ以降の加工で工具に過度な負荷をかけないため、狙いの残り代以上に取れ残っている部位が無いか、しっかりと確認する必要があります。

この手間をかけるかどうかが、加工後の食い込みキズや、ボッキリと工具が折れるといったトラブルを未然に防げるポイントになります。

 

具体的には、切削シミュレーションを使った確認を必ず行い、カラーマッピングの機能を使って必要以上に取れ残っている箇所がないか目視確認をします。

 

荒取り系のパスの機能は、狭い凹部や溝部を、工具に負荷をかけないで削ることに優れているので、「後の仕上げで取れればいいや」と考えるのではなく、できるだけ中荒取り工程できちんと除去しておくことが大切です。

 

No.3 中仕上げ加工

この工程の意義は、この後に来る最終仕上げの前に、全体の取れ残り代を均一にしておくことです。

これにより、最終仕上げでの切削負荷を均一にすることができ、加工精度や仕上がり品質を狙い通りに近づけることができます。

 

したがって、この中仕上げ加工で手を抜いてしまい、必要以上に多く取れ残っている部位があると、最終仕上げ加工の際、エンドミルがグビッと深く食い込むような場所が存在してしまい、そこで食い込みキズやビビリキズの発生確率が高くなります。

 

具体的なCAM作業としては、先に最終仕上げ加工のCLデータを作っておき、その設定を前工程にコピーして、残り代・工具条件・カスプハイトの設定を変更することが多いと思います。

 

中仕上げ加工のCAM作業でのポイント

この工程でのポイントは、中荒取り加工のときと同じく、切削シミュレーションを使って、最終仕上げの前に、しっかりと全体が狙いの残り代まで取れているかを確認をすることです。

方法としては、やはり切削シミュレーションのカラーマッピング機能などを使います。

 

No.4 全体仕上げ加工

この工程はまさに形状全体を、目的の寸法精度、表面粗さに仕上げる工程となります。使用する工具は、自由曲面に倣って加工できるボールエンドミルや、平面を仕上げるラジアスエンドミルが中心となります。

 

ポイントは、どの径の工具を使うかになりますが、形状内にある最小凹Rの大きさに合わせて工具径を選定すれば、実質この工程で加工は完了することになります。

 

しかし例えば、形状にある最小凹Rが1ミリなど小さいRである場合、それに合わせたφ2のボールエンドミルで形状全体を仕上げるかというと、それは現実的ではありません(加工するワークのサイズによります)。

 

あまりに小さい径のエンドミルを使い、目的のカスプハイトで仕上がる送りピッチで加工した場合、工数が無駄に増加します。

そのため、ワークのサイズにもよりますが、φ10~20のボールエンドミルが使われることが多いです。

 

また、この工程で使われるCAMの機能は、基本的に「等高線加工」と「走査線加工」になります。最近のCAMは、この2つを組み合わせ、一つの機能で出力できるものもあります。

 

どちらを先に使ったらよいかという質問をよく受けますが、まずは「等高線加工」を使うべきです。その理由は、工作機械の加工精度の問題です。

例えば、3軸マシニングであれば、XYZの3つの座標軸をもって可動しますが、同時に動かす軸の数が多ければ多いほど、その動作精度が落ちる要素が増えます。

 

3軸が同時に動く軌跡が多くなる「走査線加工」を行うとき、マシニングセンターは各軸の速さや加速度などを微小コントロールし、動作のタイミングを寸分たがわず一致させなければなりません。

 

そのため、同時に動作するのは、XY軸だけの「等高線加工」と比べると、「走査線加工」は動作精度が落ちることへの影響因子は増えることになります。

 

したがって例えば、山のような形状を加工する場合、登頂部やふもとなど平坦部や緩やかな傾斜部は「走査線加工」で行うとして、それ以外の傾斜部(角度90°から30°~40°くらいまで)は「等高線加工」を使うことになりますが、加工精度を優先する場合は、できるだけ多く「等高線加工」を使うことが望ましいということになります。

 

No.5、6 削り残り部加工

この工程は、No.4の全体仕上げ加工で、取りきれなかった凹R部があった場合、目的形状にある最小の凹Rを除去できるサイズの工具を使って加工を行います。

 

CAMの機能のうち、「削り残り部加工」や「隅取り加工」などと呼ばれる機能を使用すると、凹R部に限定した軌跡が出力されます。

そのため、前工程で使用した工具の形状とサイズを指定します。

 

それと、No.4の最終仕上げでR5のボールエンドミルを使って全体を仕上げ、さらに形状の中に最小凹RとしてR1の部位があった場合、この工程でいきなりR1のボールエンドミルを使うかというとそうではありません。

 

R5のボールエンドミルで取りきれなかった箇所を、一気に直径2ミリのボールエンドミルで削ることになり、この細い工具に対し非常に切削負荷が高くなってしまいます。

そこで段階を踏み、徐々にサイズダウンして加工していくことになります。

 

削り残り部加工のCAM作業でのポイント

ここでのポイントは、工具を段階的にサイズダウンしていくときの考え方についてです。

 

具体的には、「半分以下の径の工具を選ばない」ことです。

例えば、φ6のボールエンドミルの次に使う工具として、φ3はダメで、φ4であれば正解ということです。

 

なぜΦ3がダメかと言うと、もし中荒取り加工や最終仕上げで、パスが入っていないポケットや溝があった場合、半分より小さい径の工具を使用し、仕上げ系のパスを出力すると、ポケットや溝の真ん中に、リンゴの芯のような取れ残りが発生し、そのあとの加工が非常に危険な状態になってしまうためです。

 

もちろん、狭いポケットや溝が無い形状まで、こうした配慮をする必要はないかもしれませんが、ヒューマンエラーやうっかりミスを無くすのに最も効果があることは、普段からリスク回避ができる習慣をとっていることですので、いつもこうしたセオリーで工具径をサイズダウンしておけば、後々大きなトラブルが発生することを未然に防げます。

 

したがって、このようなサイズダウンの考え方を推奨しています。

 

 

以上になりますが、今回は皆さんもうすでに長年やられている、3次元データ加工の手順についてまとめてみました。

 

まさに「今さら聞けない」ことかもしれませんが、企業の現地診断をやらせていただくと、完璧にセオリーを押えられているとまでは言えない現場が多いのも、また事実です。

 

もしよろしければ、今回の内容を参考にしていただければと思います。

 

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※ 本コラムは、型技術2016年9月号掲載の記事から編集しました。

金型・機械加工メーカーにおける人のタイプ別、やる気のコントロール方法

【プロローグ】社員のやる気のコントロール方法

今回はこの業界の皆さんの関心が高い、従業員のタイプ別に見た、やる気のコントロール方法について書いてみたいと思います。

 

そもそも人のタイプは千差万別なのですが、大まかに私が長年見てきた中で、この業界で働く人は、下記の表の分類で整理できると思っています。

従業員のタイプ

この表では、そもそもこの業界での仕事自体が好きかどうか、また働くうえで、結婚しており家族を養っているとか、家のローンがある、趣味のためにお金を稼ぎたい、それらのために昇進して給与を上げたいといった、お金や評価がモチベーションとして存在するかによって、従業員を4つのタイプに分類しております。

 

それぞれのタイプ別に、金型メーカーや機械加工メーカーで働く人のやる気をどうコントロールしていくかの方法をみていきたいと思います。

なお、話しの都合上、順番はB・A・C・Dというタイプ別でいきます。

 

Bタイプ【仕事自体は好きだが、お金や評価のために働いていない】

例えば、設計でCADをいじったり、機械や溶接などによるモノづくりが好きなタイプです。

 

このタイプの人たちは、自分で成長していける要素を持っているのですが、注意しなくてはならないのが、モノづくりは好きなのですが、そこに「納期」という制約が付くと、とたんにモノづくりが面白くないものになってしまうことです。

 

当然、お客様と約束したQCD(品質・コスト・納期)を守ったうえで納品し、お金を頂戴するわけですから、この制約はどうすることもできません。

 

したがって私は、このタイプの人たちのやる気を伸ばすためには、ものづくりの「手段」の方で自由度を持たせ、改善や創意工夫を積極的にやってもらうことをアドバイスしています。

 

例えば、パソコンが得意であれば、VBAマクロなどで新しい仕組みを作ってもらうとか、工作機械であれば、新しい治具やマクロプログラムなどを作ってもらうなどです。

 

こうした前段取りの改善であれば、納期や精度などの制約がないため、伸び伸びと本来のモノづくりへの興味を活かしてもらうことができます。

 

Aタイプ【仕事自体が好きなうえに、お金や評価がモチベーションの源泉になっている】

このタイプは言わずもがな、入社後、最も伸びていくタイプです。

バブル前や、昭和の時代でしたら、独立して自分の会社を創業していくタイプの人でしょう。

 

この人たちも、Bタイプと同じように、モノづくりやパソコンが好きな人たちですから、自分で伸びていく要素を持っているのですが、一つ注意したいのが、お金や評価といった明確な「目的」がなければ、やる気が最大限に発揮されないことがある点です。

 

経営者タイプの人に、目的の無い会話や遊びが好きでない人が多かったりしますが、まさにこれにあたります。

 

ですので、私はこのタイプの人は、仕事の受注段階から参画させ、その仕事全体をマネジメントできる立場に育て、そういった立場で仕事を切り盛りするフィールドで仕事をしてもらうことが良いと思っています。

 

例えば、見積もり段階から参画させたり、仕事が完了した後は、採算性の検証、フィードバックなどにも参画させるといったことがあります。

 

もちろん、CADや加工など、オペレーションのみが好きという職人タイプの方もおりますので、そういった方にまで無理にマネジメント業務をさせることはなく、望む範囲でお仕事をしてもらうのが良いと思います。

 

経営用語では、仕事を縦方向に伸ばし、与える権限を増やすことを「職務充実」と言い、仕事を横方向に広げ、担当する工程を増やすことを「職務拡大」と言います。

前述の例では、マネジメントまで仕事の権限を増やすことが「職務充実」で、職人タイプの人に与えるオペレーションを増やすことが「職務拡大」になると考えられます。

 

いずれも、Aタイプの人の目的である、お金や評価の対象になることですから、積極的にそのチャンスを検討してあげるべきかと思われます。

 

そうした中でも、やはり仕事のやり方の改善には、自由度を持たせ、自分で改善できる余地を与えた方がやる気は出ます。

例えば、Bタイプの人のところで挙げた、仕事のやり方・方法について、自分で自由に改善しても良いとさせるということです。

 

ただし、社内や部門でルールを標準化させていくということも、もちろん必要になりますのでご注意ください。

 

もう一つAタイプには、一定の評価を得たいという目的があるために、本業での難しい仕事にチャレンジしてくれるという傾向があります。

逆にBタイプは、本業以外の管理面や実験、創意工夫などはやりたがる傾向にありますが、本業での難易度の高い仕事にはあまり手を出したがらない傾向があります。

 

ここが、AタイプとBタイプの大きな違いです。

 

したがってAタイプの人には、新しい受注案件の担当者や、新たなプロジェクトのリーダーなどを任命すると、やりがいを持って頑張ってくれると思います。

 

ただし、いずれのタイプにおいても、新しいことにチャレンジできるかどうか、力量の見極めは重要です。

充分に力量が足りてないにもかかわらず、うかつに難しい仕事に手を出して、いわゆる「火傷」をしやすいのも、このAタイプです。

 

Cタイプ【仕事自体は好きではないが、お金や評価がモチベーションの源泉になっている】

元々、この業界の仕事が好きで入社したわけではないが、生活のためにお金を稼ぎたいといったタイプの方がおられます。

 

私が見てきた中では、このタイプの人たちは、あまり創意工夫や改善などに意欲を燃やすことは少なく、逆に日程計画をきちんと立て、1日や1週間単位でノルマを決めてあげる方が、よく動いてもらえます。

 

よく現場で働く外国人社員さんには、命令口調できっちりと指示を与えた方がよく動いてもらえるという意見をお聞きしますが、Cタイプの社員さん対象については、それが当てはまるかもしれません。

 

時間をかけて、この業界の仕事を好きになってもらうという発想もありますが、このタイプの人たちは、教育を行っても、どちらかというと、必要最低限で習得を済ませようとする傾向があります。

 

このタイプの人たちの「目的」は、お金や評価ということですから、モラルサーベイなどによって、本人が何を望むのか事前に聴き取り、その目的に向かって、できるだけ気持ちよく仕事をしてもらうよう仕組みを整えることが肝要だと思います。

 

例えば、仕事のやり方の改善リーダーにしたり、全く新しく導入する機械のオペレーターに任命しても、あまり率先してやってくれたり、新たな仕組みを作ってくれるということは少ないと思いますので、会社としては本人が能力を発揮できる仕組みの中、適材適所で役割を決めた方が良いと思います。

 

Dタイプ【仕事自体は好きではないし、お金や評価が動機付けにもならない】

最も扱いが難しいタイプですが、私が見る限り、最近製造業では多く入社してきているタイプの人たちです。

 

この人たちのやる気を伸ばす方法としては、私は最低限、これだけは誰にでもあると思っている「承認欲求」をくすぐるしかないと思っています。

 

そもそもこの業界の仕事が好きでもなく、お金や評価といった今の生活の向上や将来への備えのために必要なものを求めていない、ある種「甘えている」人ほど、他人や親に自分を認めて欲しいという欲求が強いと思っています。

 

そこで、マイルストーンとも言える、小さな目標を少しずつクリアさせて「承認欲求」を満たしてあげることで、少しずつやる気を起こさせていくわけですが、一つ注意点があります。

 

元々、動機付けの要素が非常に弱いので(無いと言ってもいい)、一気に大きな課題をクリアさせようとすると、すぐに心が折れてしまいます。

また強制的な指示を与え、それをやらせようとすると、すぐに反発します。元々、評価にも関心がありませんので。

 

そこで根気よく、少し、ほんの少しだけ背伸びしてできる、本人の能力の120%程度を見極めた課題(仕事)を与えながら、心が折れないように仕事をさせることが肝要です。

 

言うまでもなく、最も離職率が高いのは、このタイプになりますので、この人手不足の折、どうしても辞めて欲しくない場合には、上記のことに充分留意しながら、マネジメントしていきたいところです。

 

アメとムチというのがありますが、これも使いどころに注意したいところです。そもそもアメとなるものの見極めが重要になります。

お金や評価ではないのですから。

 

したがって、私は「承認欲求」をいかにくすぐるか、短期的にはこれによって、このタイプの人をコントロールしていき、長く定着してくれれば、ゆくゆくは、CタイプやBタイプとなってくれることを気を長くして期待してゆくことが望ましいと思っています。

 

例えば、若いころは横着だった若手社員が、結婚や子供ができたことをきっかけに、仕事に打ち込むようになったといった事例が多くあります。

これはDタイプが、Cタイプになる事例と言えます。

 

社内研修のススメ

最後に、Bタイプ、Cタイプ、もちろんAタイプの人の教育に、私のような外部のコンサルタントを活用した、社内研修をオススメしております。

 

よく「本業のお仕事をやりながら、その緊張感の中で仕事は覚えてゆくもの」と考えられている企業さまも多いのですが、先ほど書いた通り、本業の仕事は「納期」という制約があるため、教育でありながら、どうしてもつまらないものになってしまいます。

 

そもそも、製造業でモノづくりを楽しみながら働いてくれる人が減ってきた今、せめて人材教育だけは、やりがいがあり、有意義に楽しめるものでなくてはならないと、私は思っています。

 

本業以外の研修課題は、どうしても勿体ないと思われるかもしれませんが、ゆくゆくはその人材が成長してくれれば利益を還元してくれると考え、一定期間、本業の仕事とは切り離した中での社内研修を取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

もちろん、まったく一定期間、本業の仕事をしないというわけではありません。

 

私がお手伝いしているクライアント企業では、毎週1日のうち4時間を社内研修にあてて、私から提案した本業に活かせる課題をクリアしていくという社内教育を行っております。

 

もちろん、Dタイプと思われる方の教育も対応いたします。

 

もしよろしければ、ご検討されてはいかがでしょうか。

 

以上、タイプ別、従業員のやる気のコントロール方法でした。

 

 

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【3次元設計】ペーパーレス時代において組み立て・保全担当者に求められるスキル

 

今回は、3次元設計を実現している金型メーカーの組み立てや保全担当者の作業方法についてのコラムです。

 

2次元設計を行っている金型メーカーでは、組み立て担当者に、集まってきた部品を組み立てるための組み立て図面や部品図などが渡されます。

 

では、3次元設計を行っている金型メーカーでも同じように、組み立て担当者のために、2次元の組み立て図面を作図して渡すべきでしょうか。

 

この点について私のクライアント企業は、以下の3つのうち、いずれかの方法をとっています。

  1. 3次元設計データから三角法の2次元組み立て用図面を作図し、組み立て担当者に渡している。
  2. 組み立て図面は作成せず、組み立てや保全担当者は、3次元設計データをビューワーソフトで閲覧し、必要な寸法はそのビューワーソフトで確認している。
  3. 組み立て図面は作成せず、組み立てや保全担当者は、3次元CADからデータを閲覧し、必要があれば3次元データの編集まで行う。

 

1.のやり方は、3次元設計を行っている多くの金型メーカーでとられている方法ですが、2.や3.の方法と比べると、2次元図面を作図する時間とコストが余分にかかります。

ただし、最初から2次元設計する方法とは異なり、3次元モデルから自動で投影図を作成する機能を使ったりしますが、寸法は手作業で入れるケースが多いです。

 

また、2.の方法に比べると、3.の方法は組み立てや保全の担当者に、3次元CADを扱うスキルが必要になりますが、組み立て工程に入ってからは迅速な対応がとれ、またトライ後の調整のための部品モデル修正の際、一番最初の工程を担う金型設計者に負担を強いることがありません。

 

昨今、厳しくなった金型費や金型納期のことを考えると、3次元設計を行うメーカーとしては、最低限、2.の方法をとりたいところですが、さらにリードタイムで他社よりも一歩先をいくためには、3.の方法をとれる体制をとるべきだと思っています。

 

実際に、3.の方法をとっている金型メーカーでは、設計→加工→組み立て→トライの工程において、2次元設計に比べると作業負担の重い3次元設計を行う設計者から少しでも余分な負担を取り除くことで、1.や2.の方法をとっている金型メーカーよりも、設計工程のリードタイムは短くなっています。

 

また人事の面でも、設計やCAMデータの担当者、工作機械オペレーターは、新しい機械やソフトウェア、それに付随する機能を習得するというスイッチングコストの負担が定期的にありますが、組み立てやトライの担当者は比較的少ない傾向にあります。

 

会社で働くうえで、新しい知識や技能を習得することは、その後慣れるまで、一定の苦労と心的負担があり、この点については、ある程度の公平性が必要だと思っています。

 

そうした意義も踏まえ、3次元設計を行う金型メーカーでは、さらなるペーパーレス体制をとるために、従来はデジタル機器には若干疎遠だった組み立てや保全担当者に、3次元ビューワーソフト、もしくは3次元CADの操作スキルを持ってもらうことは、今後ますます必要になってくると思います。

 

3次元設計を行っている金型メーカーの皆さまに参考になれば幸いです。もしよろしければ、ご検討ください。

 

 

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【金型加工の原点】当事務所のコンサルタントが29年前初めて入った担当作業

私が29年前(平成31年4月現在)、あるプレス金型メーカーに入社して、初めて担当した作業が、図にあるような倣い加工機です。

 

先日、あるプレス金型メーカーを訪問させていただいた際に話題に出たので、このことについて書いてみたくなりました。

 

当時勤めていた会社では、まだ3次元データ加工というものはまだ無くて、下図の右側にある木型モデル、またはそこからとった反転モデルである石膏を使い、左側にある金型素材となる鋼材を同じ形に削り出す、倣い加工によって、製品形状を削り出しておりました。

 

倣い加工機の図

 

この倣いの仕組みはとても面白くて、セッティングに結構悩まされます。

 

というのは、右側のモデルをなぞるスタイラスと呼んでいた棒状のピンですが、このピンは一定の力でモデルに触れ続けないといけません。

ですから、自分が設定する分だけ、このスタイラスがわざと倒れるように設定します。

 

例えば、0.1ミリとか0.2ミリとか。

 

そのレンジの分だけスタイラスが倒れ、左側の切削工具は、その分だけ余分に多く切削することになります。

当時、その概念を理解するのに少し苦労しました。

 

さらにプレス金型は、「板抜き」という考えがあって、上型と下型で素形材をプレスする際、製品の板厚分が、隙間として目的形状の形で上下の金型の間に空いてなければいけません。

 

ですから、上型か下型のどちらかに板厚の分だけ、余分に大きく削り込まないといけない。

 

そこで、右側のモデルに触れるスタイラスと、左側の切削側に取り付ける切削工具(エンドミル)の直径に違いをつければ、モデルよりも指定した分だけ大きさをオフセットした金型形状が出来上がります。

 

なんと素晴らしい機械でしょうか。

 

現在、倣い加工機は、リバースエンジニアリング、古い金型を復元する用途で使われているようです。

たしかに木型も図面も無くなってしまった古い金型は、3次元CADによるモデリングでは再現することができませんから。

 

この倣い加工機は、プレス金型の考え方を踏襲した素晴らしい機械だったと改めて思いだしました。

 

※ 本コラムは、旧サイトより移転したものです。

 

 

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古い加工技術にこそ今使えるノウハウがある

 

私のクライアント企業の中には、加工寸法公差がプラスマイナス0.01ミリといった高精度の部品加工を要求される製造現場があり、それに対応しなくてはならない若手の皆さんは大変苦しんでいます。

 

ワイヤーカットによるセカンドカット、サードカットが使えれば、0.02ミリのレンジへの対応は難しくはないと思いますが(加工歪みの問題は別として)、エンドミルによる切削加工、さらに焼入れ処理された高硬度材が対象となると、非常に厳しいものがあります。

 

使用されている機械や、そもそもの加工形状にもよりますので、一概にバチッと「この手順で」というアドバイスが難しいのが現実なのですが、私のような今主流の超硬エンドミルではなく、ハイス製のエンドミルばかりで加工してた時代も長く経験しているという人間からしますと、それらの工具で泣く泣く加工してきた方法の中に、今こそ使えるノウハウがあると思っています。

 

例えば、先ほど話しに挙がったワイヤーカットですが、熱補正機能なども完備されている最近のマシンにおいては、放電ギャップや径補正、カット回数など、メーカー指定の条件を用いれば、0.02ミリレンジなどの高精度加工はユーザーの技術としてはさほど難易度は高くないものになりました。

 

しかし10年、20年を超える以前からワイヤーカットをやられている加工者の中には、下図にあるように、スタート穴から本来欲しい形状を切り出す反対側に、10ミリ角などのテストピースを切り出し、それをマイクロで測定し、その日の気温や機械の調子などによる精度誤差を確認したうえで、その誤差を補正して高精度の加工に対応するなどの手順を踏んでいました。

(もちろん今でも、厚板加工のタイコ形状確認などで使われています)

ワイヤーカットの事例

これは、ハイスのエンドミルを使った切削加工も同様で、超硬エンドミルが主流になった今でこそ、仕上げ代0.1や0.2ミリを付けた中仕上げ加工の状態から一気に仕上げ寸法を狙う手順が当たり前になっていますが、ハイスのエンドミルを使っていた加工では、どうしても下図のような倒れが出るため、一発で狙い寸法になることはほとんどありませんでした(もちろん狙いの寸法公差によります)。

細いエンドミルで深い立壁を切削加工

しかも、加工ビビリも出やすいため、突き出し長さが長いなど厳しい条件で一発仕上げを狙うと、食い込み寸法になることもありました。

 

そこで、仮で一旦仕上げてみて、その日、その時の傾向を掴み、それを加味したうえで仕上げるという手堅い手順を踏むわけです。

 

具体的には、0.1ミリなど仕上げ代と同じくらいの寸法を残したうえで、一旦「中仕上げ加工→仕上げ加工」のプロセスを踏み、仮の状態で仕上げます。

 

形状や深さによる加工負荷、機械の調子、エンドミルの径・摩耗具合など、そのとき出せる加工精度を認識し、エンドミルの倒れなどで余分に残る取り代を加味したうえで、再度「中仕上げ→仕上げ加工」の手順で仕上げます。

 

この手順は、現在においても、高硬度材をプラスマイナス0.01ミリ精度で仕上げるなど、一発で公差内に仕上げるには厳しいときに使えると思います。

 

こうした厳しい公差の加工は、切り込み深さやゼロカット回数などをパターン化しようとしても、その都度、加工形状や深さ、機械剛性、そのときのエンドミルの状態などにより、加工後寸法の傾向は変わってくるためです。

 

どの方法がベストだと一概には決められませんが、一発で公差内まで狙えない厳しい加工においては、こうした手順もあるということです。

 

もちろん、プラスマイナス0.02ミリの加工公差のときなど、0.04ミリ以上のレンジがあるという加工であれば、剛性のある超硬エンドミルのメリットをフルに活かし、一発で公差内に入れる工程を考えても良いと思います。

 

私も含め、かつて今ほど良くない工具や機械を使っていた現場加工者の皆さんは、何とかあるもので精度を出そうと創意工夫していました。

今の高度になったツールでは必要が無くなったノウハウもあると思いますが、今の若手の皆さんにおいては、こうした経験ができなくなったのも、応用力を育てる観点からは少し物足りない感もあります。

 

社内で加工者の育成カリキュラムを作られている企業におかれましては、あえて整い過ぎた最新の環境ではなく、少し古く精度の出しにくい道具や機械で加工に取り組んでみるというカリキュラムを一部取り入れてみるのはいかがでしょうか。

応用力や危機対応能力の育成につながると思います。

 

もしよろしければ、参考にしてみてください。

 

 

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差し立て板が機能するようになった、その次は?

「差し立て板が機能するようになった」その次に考えることは?

以前お伝えした「金型メーカーのあるべき日程計画の方法について」では、大日程・中日程・小日程の3段階に分け、金型や部品の日程管理をすることをご紹介しましたが、最後の小日程計画では、現場で差し立て板を使った日程の見える化をご紹介しました。

 

この差し立て板は、工数の見積もりと、それを計画に落とし込むという、やや高度なスキルを要する管理でしたが、これが機能するようになれば、いよいよ次に考えなければいけないことがあります。

 

それは、その差し立て板の前提になっている個々の部品の加工工数の合計が、金型の受注金額に照らし合わせ、採算がとれているか?ということです。

これは、中日程計画で考慮することも考えられます。

 

以前ご紹介した中日程計画の例は、下図のようなものでした。

 

中日程計画

 

こちらの例では、「AB-12345」という金型工番について、パンチやダイ、パンチプレートやバッキングプレートなどの部品が、材料手配やCAMデータ作成、マシニング加工など、それぞれのリードタイムに応じて、工程納期をカレンダーの日程に当てはめるというものでした。

 

このカレンダーへ、個々の工程で必要となるリードタイムをそのまま当てはめているという場合は、これらの工数を合計したとき、金型の受注金額の中にある工賃分の金額と照らし合わせ、採算がとれているか、これが重要になるということです。

 

また、実際の機械や人の空き状況も踏まえたカレンダー日程にしている場合には、実際に掛かる工数は、下図の例のような差し立て板の方で管理していると思います(例えば、加工は半日で終わるのに、中日程計画の工程納期としては10日後とかにしている場合)。

小日程計画

 

その場合は、差し立て板にある部品の加工工数を合計した場合、金型ごとの受注金額の工賃分の予算内に収まっているか?この管理が必要だということです。

 

さてその際、一点注意が必要です。

というのは、金型に含む工賃の金額は、一般的には工数に下駄をはかせることが多く、実際にかかるであろうそのままの工数どおりで見積もり金額を出すことは少ないと思います。

 

したがって、その下駄をはかせた工数を目標に予実管理を行っても、会社や部門を成長させる有益な取り組みにはならないということです。

 

また、厳しい金型単価を指値で受注している場合も同様です。

最初から負け戦と分かっている工数を目標に、日程管理を行っても、当然現実は合わなくなって予定は狂ってきますし、現場のモチベーションも上がりません。

 

そこで、実際の受注金額に使われている見積もり工数ではなく、「標準工数」というものに置き換えます。

これは、現場の現状のスキルなども考慮し、何とかこれくらいの工数であれば出来るであろうという数値に調整した工数になります。

 

差し立て板や中日程計画の工数を合計したとき、この標準工数内に収まるよう日程計画を立てます。

 

したがって、金型メーカーの予実管理では、次の3つの工数を扱うことになります。

  1. 見積もり工数・・・引き合いがあった時、提出する見積もり金額の工賃を計算するときに使う工数
  2. 標準工数・・・できるだけ採算が合うように配慮しながら、現場が目標とする金型ごとの工数
  3. 実績工数・・・実際に加工してかかった工数

 

厳しく予実管理をされるのであれば、標準工数を使わず、見積もり工数と実績工数だけの比較評価を行うのも良いかもしれません。

 

実際に、ある加工メーカーさんでは、受発注システムのデータベースから、現場の作業者が自由に実績結果を見て、自分が担当した案件がどれだけの粗利益率があったのか閲覧できる仕組みをとっているところもあります。

 

最後になりますが、段階に応じた日程計画とその進捗管理、収益性管理までを併せ持った完璧な生産管理をぜひ目指していただきたいと思います。

 

 

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設計のあるべき進捗管理の方法について

設計のあるべき進捗管理の方法について

 

今回は、設計の進捗管理の方法についてみていきます。

 

設計の進捗管理は、どの企業においても難しいという意見をお聞きします。

その理由としては、機械加工工程などとは異なり、加工部品数のようにボリュームを定量的に表現することが難しく、また構想設計のように必要工数がなかなか予測できない点などがあります。

 

そういった点を考慮した中で、私がベストと考える設計工程の進捗管理の方法をご紹介します。

 

まず、よく行われている下図のようなガントチャート、これによる進捗管理から見ていきたいと思います。

 

良くない事例

 

これは本当に多くの企業でとられている方法で、上図の例では、緑色の線で示す計画日程と、日々の進捗を赤色線で埋めていく方法です。

 

実はこれは良くない方法で、計画に対しどれだけ先行しているのか、また遅れているのかわかりません。

赤色線を日々更新して伸ばしていくうちに、結果的に緑色の計画線を追い越してしまい、工程納期直前になって何の対策も取られないまま、工程納期を過ぎてしまうパターンです。

 

また、赤い円グラフによる進度管理についても、現状どれだけの割合が完成しているのか一応わかりますが、日程とリンクしておらず、やはりあと何日遅れているのか、逆に余裕があるのかがわかりません。

 

あるべき進捗管理の方法

そこで私が推奨する進捗管理が下図の形式です。

遅れの場合

まず、オレンジ色で示すマスが、計画日程です。これは先ほど見てきた事例と方法は変わりません。

 

違うのは、進捗状況を表す青色のマスの日程です。これは、先ほどの良くない事例のように日にちで更新してもほとんど意味がありません。

達成率で更新することが重要です。

 

青色のマスは、母数である計画日数に対し、今日現在の設計工程の完成度の割合を日数に換算して表現しています。

 

上図の例では、組図設計は着手日が2/25、完了予定が3/8ですので、土日を除いた実質稼働日数は10日となります。

 

設計担当者は毎日の進捗報告として、現状の設計の完成度割合を達成率のところへパーセント数値で入力していきます。

上の例では、達成率は30%と入力されています。

 

したがって、計画日数10日のうちの30%ということで、3日分の完成度割合ということになり、着手日の2/25から2/27までが青いマスで埋められるということになります。

 

今日現在の位置は、赤く太い縦線で表現します。この赤い線は、毎日横に移動していきます。

 

したがって、今日現在を表す赤い太線と、青いマスとの差が、現状との進み・遅れを表す差異となります。

 

上の例では、今日現在を示す赤い線は3/1となっており、着手日の2/25から5日が経過しているので、本来50%完成していなければいけませんが、進捗報告では30%しか完成していませんので、2日分の遅れが出ております(オレンジの両側矢印)。

 

逆に下図のように、先行する場合もあります。

先行している場合

この例では、同じく3/1の時点で、本来50%の完成度で良いところが、70%の達成率が報告されているので、完成度で換算した青いマスの日数は、実質稼働日数ベースで3/5まで進んでおり、土日を除くと、2日分先行できています(オレンジ色の両側矢印)。

 

このように本来、進捗管理というものは、締め切り日が到来して、間に合った・間に合わなかったという結果論ではなく、日々の管理の中でどれだけ早く対策(アクション)が取れるかが重要なポイントになります。

 

例えば、遅れを未然に察知した時点で、残業や休日出勤の手続きをとる、受応援の手続きをとる、工程納期を見直すなどの対策をとります。

 

また、顧客による設計変更や仕様追加などにより、設計ボリュームに変更があれば、計画日程を増やすか、別途、新たな設計工程として追加するなどの調整を行います。

重要なのは、ボリュームが増えたことを放置するのではなく、改めて達成率による進捗管理ができる状態に更新することです。

 

最後に、こうした機能を何のソフトで行うかですが、ファイル共有の問題がなければ、エクセルにマクロなどを若干加えて実現できると思いますが、ある程度の企業規模で、複数名の設計者で共有した管理表を作るのであれば、自前でシステムを作るよりは、長期間付き合えるシステムベンダに依頼して作った方が良いかもしれません。

 

私が多くの企業を見てきた経験では、特定のパソコンに詳しい社内人材にシステムを作らせると、その人の異動・退社・欠勤などにより、いずれトラブルを抱えることになります。

目先のコストにとらわれると、もっと大きなロスコストに足を引っ張られることになるかもしれません。

 

以上になります。

ぜひ「管理(コントロール)」ができる、正しい進捗管理を行ってください。

 

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