金型・部品加工業専門コンサルティング

金型・部品加工業専門コンサルティング(加工コンサル)は、金型メーカーや、マシニングなどの機械加工業を専門とする経営コンサルタント事務所です。

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FAQ

FAQ

金型メーカーのあるべき日程計画の方法について

 

こんにちは、金型・部品加工業専門コンサルティングの村上です。

 

今回は、これもコンサルティングの際、アドバイスとして取り上げることの多いテーマ、金型メーカーの日程計画のあるべき方法について見ていきたいと思います。

 

まず大前提として、①大日程計画、②中日程計画、③小日程計画の3段階に分け、それぞれを正しく機能させることが重要になります。

  1. 大日程計画(金型ごとの管理)
  2. 中日程計画(部品ごとの管理)
  3. 小日程計画(工程ごとの管理)

ポイントは、大日程から小日程計画まで、金型ごとの大きな括りから個人レベルのスケジュールまで段階的に管理していくことです。

 

では、まず大日程計画から見ていきたいと思います。

 

大日程計画のあり方

大日程計画は、下図の事例にあるように、金型ごと、納期までの日程をガントチャートなどを使って管理します。

大日程計画

(AB-12345、BC-56789などの記号+番号は、金型ごとの品番を表現しております)

 

図の例にあるように、金型ごとに設計、機械加工、組み立てなど、工程ごとに切り分けて、日程計画を立てるのが良いと思います。

 

ここでのポイントは、各工程の負荷を加味した日程計画にするかどうかの判断です。

もし負荷調整を加味した日程を立てるのであれば、例えば上図の設計日程のように、過度に重複しないよう意図的にずらすなど、負荷を調整した計画を立てることになります。

 

また、もし各工程の負荷まで考えないのであれば、金型の最終納期から各工程のリードタイムで逆算した工程納期ありきで日程計画を立てることになります。

そして、各工程の負荷は、後述する中日程計画もしくは、小日程計画で調整することになります。

 

どちらのパターンにするかは、大日程計画を作成する担当者が、どこまで現場の負荷状況を把握できるかによって決めれば良いと思います。

 

中日程計画のあり方

次に中日程計画のやり方を見ていきたいと思います。

中日程計画は、下図にあるように、大日程計画で扱った金型ごとの日程ではなく、金型を構成する部品ごとの日程計画になります。

中日程計画

 

上図の例のように、部品それぞれに工程納期を設定していくのがポイントになります。

 

こちらも大日程計画と同じように、部品ごと各工程の負荷を加味した日程計画にするか、または加味しないかの判断が分かれるところです。

 

もし負荷調整を盛り込むのであれば、工程ごとに想定しているリードタイム(標準工数)を基準として、特定の機械又は人に、負荷が集中しないよう適度に分散した日程計画を立てます。

したがって、着手日の設定を特に重視することになります。

 

逆に、負荷を考えずに中日程計画を立てるのであれば、各部品の工程納期から、材料手配やCAM、マシニング加工など各工程の想定工数から逆算した工程納期を立てていき、負荷調整は後述する小日程計画で行うことになります。

こちらは、工程ごとの完了予定日(工程納期)を重視することになります。

 

これもどちらにするかは、後述する小日程計画と、中日程計画、どちらの精度を高くするかで決めれば良いと思います。

 

小日程計画のやり方

最後は、小日程計画のやり方について見ていきます。

小日程計画は、下図のように、機械や人ごとの日程計画になります。これは「差し立て」とも呼ばれます。

小日程計画

(図は「マシニングA」の差し立て盤をイメージしております)

 

私は特に、マシニングセンターやワイヤー放電加工機については、夜間の無人運転の予定を事前に予約で埋めておく、新幹線の座席予約のような「座席予約方式」を推奨しています。

これは、夜間の無人加工で仕掛けられるような長時間の加工は、昼間の隙間時間に差し込めないので、事前にきっちり隙間なく予約して決めておくべきだと考えているためです。

 

この差し立て盤は、短ければ当日から三日目ぐらいまで、理想を言えば、2週間分くらいの事前スケジュールを立てられるのが望ましいです。

 

その理由として、そもそも差し立て盤は、現場作業者の責任負担を軽減するためにあり、「今日これだけやれば帰宅できる」という1日の作業目安を表しています。

また、中期的スケジュールとして管理者にとってみれば、「2週間、現場でこれだけのスケジュールはやってもらいたい。もしこれで金型の納期が間に合わなければ、管理者である自分が責任を持つ。だから最低限、差し立て盤どおりのノルマをこなして欲しい」という意思表示になります。

 

つまり、この差し立て盤どおりの日程計画で間に合わなければ、それは現場作業者の責任ではなく、管理者の責任というわけです。

私はそのつもりで差し立て盤の日程を立てていました。これなら、現場作業者の責任負担の軽減になります。

 

また現場作業者としても、2週間分のスケジュールが事前に決まっていれば、もし近々休みたい日ができたとき、残業などによる前倒し生産を行うなど、休みたい日に仕事が残らないよう自分の判断で調整することもできます。

これなら、管理者も急な作業者の欠勤で困ることが減り、また作業者も気兼ねなく休むことができ、お互いにWin-Winの関係で仕事ができます。

 

また、差し立て盤で小日程計画を作らずに、出たとこ勝負、やれるとこまでやろう方式で仕事を行うと、最後残った仕事を極めて短い納期で外注依頼することになり、注文単価が高くなります。

 

逆に差し立て盤による小日程計画で、事前にオーバーフローする部品がわかっていれば、多少なり余裕を持った納期で外注依頼することができ、単価交渉で対等に話をすることができます。

これにより、製造原価を抑えることができます。

 

ただし、2週間の予定の中で、急な仕事の飛びこみや、順番の繰り上げ等の予定変更は当然起こります。その際は、その都度予定をメンテナンスすることは仕方ありません。

現場作業者の方々にもその点だけは了承してもらっています。

 

 

以上、①大日程計画、②中日程計画、③小日程計画の3段階による、金型メーカーのあるべき日程計画を見てきましたが、多くの金型メーカーでは、①大日程計画と②中日程計画は機能していますが、③の小日程計画がうまく機能していない企業さんが圧倒的に多いです。

 

やはり緻密に小日程計画を立てることが難しいのだと思います。

 

この点について、もし自社だけで改善していくことが難しいということでしたら、そこは私のようなコンサルタントの活用を検討してみるのも一つの手かと思います。

 

もしよろしければ、参考にしてみてください。

 

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代表:村上 英樹(中小企業診断士、元・プレス金型技術者)

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効率が上がる冶具づくりのススメ

正直台の使い方

 

こんにちは、金型・部品加工業専門コンサルティングの村上です。

 

私が金型メーカーや機械加工業で働く若手の皆さんに感じることの一つが、「冶具づくりを会得しよう」です。

 

今でこそ、多くのメーカーから冶具や小道具が市販されており、それらを使うことで、仕事の効率の個人差を軽減することができる時代になりましたが、この冶具づくりこそ、かつての加工職人が得意とする技術でした。

 

この冶具づくりは、答えのない世界で、まさにアイデア次第でいくらでも仕事の効率性は上がっていきます。

 

ただし、マシニングセンターなどを使う同じ機械加工業においても、大ロット加工を行うメーカーと、一品モノなど小ロット加工を行うメーカーでは、冶具に求めるものも変わってきます。

 

例えば、ある程度大きなロットの加工を行うメーカーでは、クランプ作業がワンタッチで済むような段取り性などが重視されますが、金型メーカーなどの一品モノ加工においては、

  • 複数の機械加工工程を集約するための冶具
  • バイスなど通常の締め付け具ではクランプできない異形ワークを掴むための冶具
  • 傾斜面に加工を行うための冶具

などが、用いられています。

 

さて話を戻しますが、こうしたアイデア勝負になる冶具づくりこそ、最近の若手加工者が苦手としている分野だと感じています。

 

ですから、何か不自由があったり、前述したような複数の機械加工を集約できるような何かアイデアがあれば、ぜひ冶具を考案し、積極的に使ってもらいたいと思います。

 

私が現役でマシニング加工を行っていたときに重宝したのが、下の写真にある正直台です。

正直台の写真

(切り屑まみれの写真しかなく、すみません・・・)

 

これを使うことで、下図のように、ワーク上面の3D形状加工のついでに、側面外周の輪郭加工を行うことができます。

正直台の使い方

 

この方法を採用してから、ずいぶんとワイヤーカット加工を減らすことができました。

 

もちろん、自社部品であれば設計上で意図的に裏からのタップを配置しておくか、他社部品を加工受託するときで、ワーク裏面にタップがないときは、捨てタップの許可をもらうなどの配慮が必要になります。

 

この正直台を使う前は、プレートによる冶具板にワークを張り付けてクランプしていましたが、タップのピッチが変わるたびに、プレートの取付穴を加工し直す必要があったり、そもそも側面のプロファイル加工ができないなどの制約がありました。

 

これはほんの一例ですが、アイデア次第で、前述した「複数の機械加工を集約する」ことができる冶具を考案することができれば、その分の段取り時間を削減することができ、製造原価を下げ、リードタイムも削減することができます。

 

これこそ、社内で評価を受けるべき改善活動の一つだと思います。

 

ぜひ、効率の上がる冶具づくりを会得しましょう。

 

 

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金型の組み立てを効率的に行う方法について

 

さて、今回は金型の組み立て作業を効率的に行う方法についてです。

 

この工程は、確認することも多く、本来効率性よりも、確実性を求められる作業になります。

したがって、早く作業する方法という表現よりも、効率的に行う方法という視点で見ていきたいと思います。

 

大まかなポイントは次のとおりです。

  1. 出来る限り手戻りを無くす
  2. 環境を整える
  3. 設計面から配慮する

 

出来る限り手戻りを無くす

これは、当たり前と言えば当たり前の話ですが、組み立てに時間のかかる人の特徴として、何度も組んだりバラしたりといった手戻り作業が多いということがあります。

 

逆に、作業が早い人は手戻りが少ないのですが、この違いは、部品ごと、ユニット(サブアセンブリ)ごとに、組む前にやるべきことをきっちり済ませているという点があります。

 

組む前にやらなければいけない作業として、手仕上げ加工や、部品寸法の確認・修正、途中まで組み上げた状態での部品間の寸法確認などがあります。

これらの作業を、組み立てはじめる前にきっちりと済ませておくことが、結果的に効率性につながります。

 

また、私はこの作業をマシニングオペレーターが、機械稼働の待ち時間などにやる多能工化の形式もおススメしています。

この途中まで組み上げたユニットごとの寸法確認は、実は上手い人とそうでない人がおりまして、その原因として、金型の図面は2次元でも3次元設計であっても、個々の部品図や完成状態の組図は作りますが、途中まで部品を組み上げたユニット状態での寸法指示図はほとんど作られません。

 

ですので、ユニット状態での寸法確認については、出来る人とそうでない人が発生してしまいます。

この点については、部品図と完成組図のCAD図から自分で寸法を拾ったりして確認することになります。

 

設計者が、各ユニット状態の図面を作り、組み立て作業をサポートしているメーカーもありますが、これはこれでリードタイムが伸びたり、コストアップになるので考えものです。

 

やはり組み立て作業者のスキルで対応するべきかと思います。

 

環境を整える

これも当たり前と言えば当たり前のことになりますが、組み立て作業は周辺環境の整備が重要になってきます。

 

ひとつの基準として、4メートル四方の作業スペース内で作業が完結できるくらい、使う道具が手元化されているかどうかということがあります。

 

もしそこまで整備されていない場合は、作業者の動線距離が必要以上に長くなっていることも考えられますので、道具の購入コストとのバランスを考慮しながら、効率性の良い作業レイアウトを考えます。

 

それと、これはプレス機の段取り替えのとき、なるべくフォークリフトを使わず金型交換時間の短縮を図る考えと同じなのですが、クレーン待ちの時間をゼロに改善するという方向性もあります。

ぜひ検討してみてください。

 

設計面から配慮する

最後に、設計面から組み立て作業時間を減らす配慮をする視点があります。

 

これは、使用するキャップボルトやノックピンのサイズを、できるだけ統一するというものです。

 

入れ子やパンチなどサイズの問題で、どうしても制限される場合は別ですが、例えばノックピンの径や長さの種類がいくつもあったりするとそれだけで、準備が大変だったり、慎重に間違わないよう確認しながら組付けるので、どうしても時間が多くかかります。

 

可能な限り締結部品のサイズを統一することで、組み立てやメンテナンス時のバラシ作業も効率的になります。

 

こうした配慮が行き届いているメーカーは、外注設計に渡す設計標準にも、きちんとその点が明記されています。

 

もしよろしければ、取り入れてみてください。

 

まとめ

かつては職人作業でじっくり取り組めた組み立て作業も、たっぷりコストをかけてやれるような事業環境ではなくなってきました。

 

とはいえ、マシニング加工やワイヤーカット加工のようにプログラムによる自動運転という作業ではないので、打てる手は限られてきます。

 

また、非常に属人的な作業でもありますので、作業者間のスキルの差は出来る限り減らしたいですよね。

 

そういった点でも、部品ごと、ユニットごと、どこに作業時間の差が生まれているのか、因数分解の視点で原因を考えると良いかもしれません。

参考になれば幸いです。

 

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マシニング加工の人的ミスのあるあると対策の考え方

不具合を起こしてショック

 

さて、今回は私のコンサルティング先で出くわす、「マシニング加工の人的ミスのあるある」と、その対策の考え方について見ていきます。

 

まずマシニング加工の人的ミスですが、ざっと挙げてみると次のようなものがあります。

  • 口頭の申し伝えの悪さによる受け手の勘違い
  • アキューセンターによる心出し作業の5ミリずらし忘れ
  • FAXで来た図面寸法のつぶれた数字を間違えて読んだ
  • 工具径補正を入れ忘れた
  • 加工するワークを取り違えた

などなど、挙げだしたらキリがありません。

 

これらの問題点について、新QC7つ道具の一つ、連関図を使って原因を分析してもらうと、途中で次のような要因が挙がってきます。

  • 慌てていた
  • 急いでいた
  • 思い込みがあった
  • 人に声をかけられて手順がとんだ
  • 電話に出たあと、戻ってきたら手順がとんだ
  • 体調が悪かった
  • むしゃくしゃしていた
  • 悩みがあった

これも挙げだしたら、本当にキリがありません。

 

さて、これらにどう対処していくかという話ですが、まずはチェックシートで、ということになります。

 

これにより、体調が悪かろうが、声を掛けられて手がいったん止まろうが、やるべき手順の目安ができます。

 

まず最低限、これは作るべきでしょう。

それと、クロスチェックも有効です。

クロスチェックとは、自分以外の別の人と一緒にチェックする手法を言います。

 

携帯ショップや銀行窓口などで見かける確認作業です。それだけ重要で絶対間違うことができないということでしょう。

 

我々製造業も同じではないでしょうか。

 

実際に、お客さんからお借りしたワークを加工したり、外国から輸入したワークで替えが効かないなど、絶対ミスができない加工現場では、段取り時に徹底したクロスチェックをルール化しているメーカーもあります。

 

それと、これは私がいつも思うことですが、もし加工する材料の値段が、1,000万円したらどうなるでしょうか。

 

私だったら、怖くてマシニングセンターのスタートボタンを押すことができなくなると思います。

それこそ、第3者にクロスチェックをお願いし、一緒に入念なチェックを行ってようやくボタンが押せるくらいだと思います。

 

おそらく、これを読んでいる誰もがそのような状態になるのではないでしょうか。

 

実は、その時点で無意識にさじ加減をしているということになります。

 

普段の仕事では、そのような恐怖を感じることなく自然に段取りをし、加工プログラムをセットしてスタートボタンを押しています。

 

1,000万円の材料ならボタンが押せず、普段の数千円から高くとも数万円の材料であれば、ためらいなく加工ができる。

これは悪い意味ではありませんが、自分の中で材料の金額によって、掛ける手間のさじ加減を無意識にしていることになります。

 

いまいち自分はミスが多くなかなか改善されないという方や、そういった部下を持つ上司の方は、もし1,000万円の材料だったらどんな手順を踏むだろうかという想定で、加工が完了するまでの手順を考えてみるのはいかがでしょうか。

 

特に、一品モノや小ロット品の加工は、試し加工の機会がなく、一発勝負の場合が多いので、本当に難しい作業だと思っています。

 

もしよろしければ、参考にしてみてください。

 

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マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?

 

さて今回は、私自身が普段のコンサルティングでよく感じる、マシニングセンターの精度についてオペレーターの方々に感じることを取り上げました。

題して「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」です。

 

テーブルの送り速度について

まずテーブル又は、主軸の送り速度についてです。

 

これは、マシニングセンターにて、CAMデータによる3次元加工を行う際に、感じることです。

 

最近の工具カタログには、ありがたいことにエンドミルの種類ごとほとんどの工具について加工条件が記載されています。

 

これにより、CAMオペレーターは、悩まずにCAMに主軸の回転と送り速度を入力することができます。

ここで私が感じることは、その条件を何の気なしに使っている点です。特に問題と感じるのは、狭いエリアでカクカクと曲がる軌跡で加工している場合です。

 

コーティング超硬エンドミルによる切削加工が主流になり、送り速度がF1,000やF3,000を超えるような高速な送り速度も当たり前になってきました。

しかし、3D加工における下図のような角部や狭い凹溝部を加工する場合、四角や円形状の狭い穴の内側を加工するような場合においては、最も早い送り速度が出せる、長い直線距離がほとんどありません。

狭小部位のパス

このような加工パスで、カタログの推奨条件値をそのまま使っても大丈夫でしょうか。

 

最近のマシニングセンターであれば、自動加減速機能が働くので、こうした部位を加工しているときは、プログラムの数行先読み機能により、曲がり角になる前にスピードを落としてくれます。

 

結果、こうした狭い部位は、ほとんどトップスピードが出ずに、機械が出せる送り速度に調整されながら加工されていると思います。これは加工中に、マシニングセンターの制御パネルに表示されている送り速度をながめているとわかります。

 

しかし、古いマシニングセンターでこうした機能がない場合は、速い設定の送り速度に追従できず、機械がガクガクと振動したこともありますし、そもそも自動車に例えると、急なヘアピンコーナーをトップスピードのまま走ろうとしているようなものです。

 

±0.02ミリを下回る公差など、高精度な3D加工を行う場合には、こういった狭い凹部位と、逆に緩やかな凸形状部位は分けて加工条件を考えるべきと考えます。

 

つまり、自動車レースのサーキットでいうところの、急なヘアピンコーナーを正確にトレースしていくには低速ギアを使い、トップスピードが出せる直線コースは高速ギアを使うといったように、加工エリアを分けて加工パスを作ると、非常に高精度な3D加工ができると思います。

 

ただし荒取り加工や、さほど精度が要求されない部品まで、こうした配慮をする必要はないと思っています。あくまで高精度な仕上げ加工で必要になる考えです。

 

一般的にマシニングセンターでは、パンフレットやPR資料などで、真円の輪郭精度などを紹介していますが、狭い部位を正確にトレースさせて高精度を狙いたい場合、私はこの送り速度を参考にしています。

 

実際、私が見てきた上手い加工パスを作るCAMオペレーターは、同じエンドミルを使っていても、加工部位によって加工条件を変えています。こうしたCAMオペレーターは、マシニングセンターの動作特性を良く知っている人だと思います。

 

逆にそうでない加工パスは、どのような加工であっても、同じエンドミルでは一律にカタログ推奨条件をそのまま使っています。

 

いかがでしょう、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますでしょうか?」

 

端面基準について

次は、マシニングセンターの加工原点の取り方についてです。

 

立形マシニングセンターであれば、加工原点の設定は、①平面的なXY基準と、②高さ方向のZ基準がありますが、今回はXY基準についてです。

 

先日、クライアント先企業でこのようなミスが発生しました。

 

金型の修正追加工で、すでに意匠面が削り出されているワークに、マシニングセンターで追加工を行うため、ワークの平行出しなどの段取りを行った後、CAMデータで設定したXY原点に合うよう、意匠面形状にタッチセンサーを当てて基準をとろうとしました。

 

そこで、段取り図面に意匠面形状の片側からの寸法が書かれていたので、いわゆる端面基準ということで、意匠面の片側からとった位置から、図面寸法分だけ移動し、それをX原点としました。

片側だけから基準をとろうとしたミス

※クライアント企業との守秘義務のため、図は別途、仮のモデルを使用しております。

 

しかし実は、その部品は、0.5ミリマイナスオフセットされて加工されていた部品でしたので、残念ながらX原点は、マイナスオフセットされていた分の0.5ミリずれてしまったというミスなのですが、今回取り上げたいことは、この0.5ミリのずれを見逃してしまったことではありません。

 

今回のテーマは、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」です。

 

問題は、このミスのことではなく、端面基準でX原点を決めようとした、その判断についてです。

 

片側から測定した位置から、図面に記載されている、ちょうど100ミリ分を移動し、そこをX原点にしようとしたということですが、そもそも、切削加工されているワークが、100ミリちょうどピッタリで加工されていると思っていること自体が問題です。

まさに、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」です。

 

切削加工には加工公差というものがあり、皆さん、その公差内に入るよう、限られた工数の中で努力していますが、1ミクロンの誤差もなく、100.000ミリの寸法で加工することは、全く不可能とは言いませんが現実的ではありません。

 

通常、金型のような硬い材料であれば、工具は逃げるものであり、0.01ミリや0.02~3ミリは大きくなることが多く、それを工具径補正機能など使って追い込んだりしていると思います。

 

したがって、加工誤差があるという認識があれば、片側から基準をとることはせずに、まず現状の実測値を測ったのち、センター振り分けなどで基準をとるのが一般的だと思います。

 

こうした認識不足のミスは、段取り作業だけを行う若手オペレーターに多く発生しております。

 

ぜひ、今後の製造現場を担う若手加工者に、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」を意識していただきたいと思います。

 

バイスの精度について

これも、クライアント先企業であった話です。

 

マシニングオペレーターの上司の方が、自社の仕事内容を紹介してくれた際、「うちのオペレーターは、極めて精密な部品を扱っているので倍以上の手間をかけて段取りをします」と紹介してくれました。

 

そこで、マシニングオペレーターが小物部品のワークをバイスにセットする際の作業の一部始終を見ていたのですが、少しおかしなことに気づきました。

 

樹脂製ハンマーで、前後左右、何度も何度もワークを叩き、平行直角になるよう調整していたのですが、その中で、下図にあるように、バイスの開閉方向にも叩いていることに気づきました。

バイスを開閉方向に叩く

当然バイスの構造上、このような叩き方はよくありません。

 

なぜ、このように叩くのか聞いてみたところ、これだけいろんな方向から時間をかけて叩かないと、平行直角が出ないとのことでした。

こうなると理由は次の2つです。

  • 元々のワークの6面フライスの状態が悪い
  • バイスの口金の直角が出ていない

ワーク素材の6面フライスの状態を確認したところ、問題が無かったので、バイスの口金をダイヤルゲージで確認したところ、バイスの口金及び、パラレルブロックを置くバイスの底面も、傾きが出ていました。

 

バイスの口金は研削加工で修正できますが、バイスの底面は長く使っているうちに、早送りで工具をぶつけるなどの事故により、歪みが出てしまったと思われます。

 

このように、高精度な段取りをしているつもりが、インフラ部分、そもそものツールや機械、冶具の状態が良くないということがあります。

 

これもまさに、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」です。

 

機械や道具自体に誤差があり得ることを認識したうえで、段取りをする必要があります。

 

テーブルの精度について

これも、前述のテーマと同様のケースですが、あるクライアント先企業にあった8番の立形マシニングセンターの加工精度が出ないとのことで、テーブル上面をダイヤルゲージで走ってもらいました。

 

そうしたところ、最大で、0.2ミリ(!)も、傾きが出ていました。

 

メンテナンス状況を確認してみたところ、水平器による機械自体の傾きの確認は、10年近くやっていないとのことでした。

 

これは、前述したバイスが歪んでいたという加工メーカーも同様で、やはり機械のレベル確認を10年近くやっていないとのことでした。

 

水平器により確認したところ、テーブル自体の平行度は大きく傾いていました。

 

こちらについても、確認だけでも年1回は行ったり、地震などの後は確認するなどの配慮が必要かと思います。

 

これもまさに、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」です。

 

機械は導入したら、永遠に精度が維持されるわけではありません。

 

ミーリングチャックと振れ精度

最後に、ミーリングチャックと振れ精度についてですが、高精度をうたっているミーリングチャックについても、傷んだコレットを使っていたり、長年使っていると精度が悪くなってきます。

 

主軸に工具のついたミーリングチャックを取り付けてみて、ゆっくりと主軸を回転させた状態で、ダイヤルゲージを使って振れを確認してみたことがありますでしょうか。

 

最近では機上でのレーザー計測による非接触で振れ精度を確認することもできますが、このようなアナログ式の方法でも確認ができます。

 

実際には、0.01や0.02ミリなど、振れが出ることがあります。

 

このとき、ミーリングチャックを緩めて再度締め直すか、主軸から取り外し、180度回して取り付けるなどを行うと、振れ傾向が変わることもあります。

 

もし振れ精度が良くない状態で、工具径補正を使って高精度に追い込み加工をする、直角精度を出す、などを行っても結構辛いと思います。

 

この点についても、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」です。

 

 

単調作業的に、ミーリングチャックに工具を締め付け、CAMデータを読み込んで加工すれば、その他の機械や工具、ツーリングなどの精度などは、勝手に保証されているわけではありません。

 

もちろん、全てが新品のとき管理は少なくても済むかもしれませんが、早送りでぶつけたことがあるなど、長くマシニングセンターを使っていれば、何らかの軽い事故はつきもので、こうしたことがあったりすると、色々な箇所で精度には気を配らないといけなくなってきます。

 

おわりに

今回のテーマは、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」でしたが、とかく短納期やコスト競争に追われている中で分業化も進み、加工オペレーターは段取りだけの単調な作業になりがちです。

 

そうした中でも加工技術者としては、加工精度や機械精度は勝手に保証されているものではなく、人間の管理の結果、どうとでも変わってくるものだと認識するべきだと思います。

 

 

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

 

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【今さら聞けない】部品加工メーカーのチャージ計算について

部品加工メーカーのチャージ計算について

 

さて今回は、こちらも企業規模に関係なく当事務所に相談の多い、部品加工メーカーにおけるチャージ計算についてまとめてみました。

 

まずチャージとは、時間あたりの加工賃を指します。

 

まず大前提として、加工メーカーで扱うチャージには、①原価ベースの原価チャージと、②見積もりで使う売値チャージの2つがあります。

 

  • 原価ベースの原価チャージ
  • 見積もりで使う売値チャージ

 

良く使われるのは、売値チャージの方です。

 

切削加工の業界では、4,000円とか5,000円のチャージが使われますが、5軸マシニングや大型の門型マシニングなどを使う加工では、1万円と設定しているメーカーもあります。

 

では、この売値チャージはどのように計算するべきでしょうか。

 

よく原価管理の教科書では、材料費や外注費とは異なり個別に製品に直接配賦できない費用は、労務費や減価償却費にその他の経費を加えたものを稼働時間で除算し、時間(工数)を基準に配賦するとありますが、これで計算されたチャージは、売値チャージではなく原価チャージになります。

 

正しい売値チャージの計算方法は、年度ごとに目標とする売上額から計算します。

 

具体的な手順は、下図のように、まず目標とする年間の売上額から、材料費や外注費などを除き、加工賃のみによる売上額を算定します。

加工賃だけを算出する

この計算は、材料費と外注費には中間マージンを乗せて計算しておくことがポイントです。

 

この加工賃のみによる売上額を、実際の稼働時間で割ることで、自社が請求するべき売値チャージが計算できます。

 

実際の稼働時間とは、タイムカード時間に稼働率を乗じたものです。

 

  • 実際の稼働時間=タイムカード時間×稼働率

 

ここで稼働率は、直近の実績を使います。

 

段取り作業や仕上げ・検査などのハンドワークは作業者の稼働率を使い、マシニングやワイヤーカット放電加工機などは工作機械の稼働率を使います。

 

さて、売値チャージを計算することができたら、次にその評価を行います。

 

評価のポイントは「実際にその売値チャージで本当に顧客に請求できるのか?」です。

 

例えば、年間の機械加工による加工賃のみの来年度の目標売上額を2億円とした場合、自社のマシニング台数が15台、1台あたり最大の年間稼働時間を3,500時間として、昨年のマシニングの平均稼働率は60%だったとします。

この事例の実績稼働時間は、15台×3,500時間×0.6となりますので、31,500時間です。

 

これを、来年度の目標加工賃売上の2億円から除算しますと、必要となる売値チャージは約6,349円となり、機械のサイズによりますが、業界相場で考えるとやや高い金額だと思います。

 

そこで、この計算された売値チャージの金額に対し、2つの視点で補正します。

  • 目標とする来年度の加工賃売上の2億円は妥当か?目標として高過ぎるのではないか?
  • 昨年のマシニングの平均稼働率60%を、来年度は改善によって70%にできないか?

 

実際もしマシニングの平均稼働率を来年度70%にできれば、15台×3,500時間×0.7となりますので、想定稼働時間は36,750時間となり、売値チャージを再計算しますと、約5,442円となり、業界相場の金額に近づいてきます。

また、設備投資により機械台数を増やすことで、可能な最大稼働時間を増やすことも考えられます。

(ただし、後述する損益分岐点が高くなることに注意が必要です)

 

さてここで、最初に挙がった原価チャージはどのように使うべきでしょうか。

 

計算は、作業者と工作機械の2つがあります。

 

  • 作業者の原価チャージ=労務費+製造経費÷タイムカード時間×作業者の稼働率
  • 機械の原価チャージ=減価償却費÷タイムカード時間×稼働率

 

この原価チャージは、加工案件ごとの採算性評価に使います。

 

例えば、ある製品の原価構成はシンプルに、材料費・外注費・加工賃であったとすると、粗利益(限界利益)は、売価から材料費と外注費を差し引いたものになります。

 

  • 粗利益(限界利益)=売価-(材料費+外注費)

 

この粗利益(限界利益)を、実際にかかった工数で除算すると、実績のチャージが計算できます。

 

  • 実績チャージ=粗利益(限界利益)÷実際にかかった工数

 

この実績チャージと原価チャージを比較したとき、原価チャージは実績チャージの採算ライン(下限)と言え、もし実績チャージが原価チャージを下回っていたら原価割れという事になります。

 

利益管理をしっかりと行っている加工メーカーは、この実績チャージの評価を必ず行っています。

 

逆に、見積もり時に使った売値チャージを実績チャージが超えていることが理想で、そのときは見積もり時の工数よりも早く加工が終ったことを意味します。

 

これが、担当者や加工部門の評価になります。

 

(ただし、通常見積もり時に使う工数はゲタをはかせるのが一般的なので、売値チャージが実績チャージを超えているのは、ある意味当たり前と考えることもできます)

 

この実績チャージを、加工案件ごと、担当者がいつでも誰でも見えるようにしている加工メーカーもあります。

 

最後に今回、見積もりで使う売値チャージは、教科書どおりの製造原価からではなく、実は年間の目標売上額から計算するというお話しでしたが、そもそもの年間の労務費・減価償却費が適正かどうかは、年間の総額の変動費と固定費を使った損益分岐点分析によってチェックしておくことは言うまでもありません。

 

ぜひ加工メーカーの皆さんが儲かるご商売を続けていただくことを願ってやみません。

 

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プレス金型設計者の人材育成手順と日程管理について

3つの設計工程

 

さて、今回のFAQコラムは相談を受ける機会がとても多い、プレス金型製造における設計人材の育成についてです。

 

その理由の一つに、既存のベテラン設計者と同等の能力を持った設計者をなかなか育てることができないと問題があります。

今回は、そんな悩みの多い「金型設計者の育成手順と日程管理の方法」についてみていきたいと思います。

 

まずは、育成の順番からみていきます。

これは、下図に示す(1)工程設計、(2)構造設計、(3)部品設計という設計工程のうち、最後の工程から順番をさかのぼっていく形で経験を積ませます。

3つの設計工程

 

つまり、設計人材の育成の手順としては、まず使用するCAD操作を習得したのち、設計工程の一番後である、(3)の部品設計から経験を積ませ、能力を向上させていくということになります。

 

具体的には、次のような対応が考えられます。

  • 2次元設計であれば、ベテラン設計者が作成した金型組図から部品バラシ図や、3D加工用の部品モデルをモデリングする。
  • 3次元設計であれば、ベテラン設計者の構想図面から、3D金型モデルをモデリングする。

 

なお、部品設計の経験を積む際には、心理学にある、①符号化、②貯蔵、③検索というモノを思い出すときの脳の思考プロセスを踏まえ、意識することが望ましいです。

 

人間の記憶には、短期記憶と長期記憶がありますが、特に長期記憶は、体系化した言語や図など、わかりやすくなった情報ほど頭の中に長く貯蔵され、また思い出しやすくなります(検索性)。

 

その記憶の中から必要なときに情報を取り出して(検索して)、目の前の行動に使われるということになります。

 

つまり、物覚えの良い人とは、ズバリ!この①の符号化の効率が高い人ということが言えます。

 

例えば、一度見たこと・聞いたことを、後で思い出しやすい状態で記憶していくということです。

 

私は、これを中小企業診断士の勉強の際に意識しました。

 

具体的には、モノを記憶する際、必ず相対的に覚えるということです。

 

例えば、初めて見るタイプのエンドミルがあれば、これと対になるものを必ずイメージします。

従来使っていたエンドミルを思い浮かべ価格の違いをイメージしたり、刃数の違うエンドミルをイメージして加工効率の違いをイメージしたりなどです。

 

つまり、それ単体をシャカリキになって覚えようとせず(単なる暗記)、何と何の枠組みの中でそれが存在し、それぞれにどういった違いがあるのか、対になるものの違いと共に一緒に覚えていく。これがいわゆる体系的にモノを覚えるということです。

 

ちなみに、私は本を読むときには、他との比較や体系図などをメモしながら読んだりします。

 

したがって、設計者育成のスタートとしては、まず(3)の部品設計の見習いから始め、金型部品の必要な機能や形状、材質などを体系的に覚えることを意識しながら場数を踏み、いずれ担当する(2)の構造設計のための知識を、経験と共に蓄えていきます。

 

ちなみに、この体系化の考えは、金型設計標準書でも使う考え方です。

単純に、市販部品やプレート類の指定だけを記載するよりも、各部品や形状の選択肢とその選定基準が決められて記載されている設計標準書は、かなりレベルの高い標準書です。

 

このような標準書が整備されているメーカーは、ノウハウや情報の統一・共有化のレベルが高いです。

 

なお、こうした設計工程をさかのぼった経験を踏まず、①符号化、②貯蔵、③検索という思考プロセスが使えずに行う設計作業は、いわゆる試行錯誤による設計ということになります。

 

心理学にある試行錯誤とは、目の前に起きた問題解決のため、根拠のある無しは関係なく、思いつく方法を順番に試し、偶発的に問題が解決するまで続ける方法を指します。

 

いわゆる、なかなか満足のいく設計ができない、ベテラン設計者よりもかなり多く時間がかかってしまう、何度も手戻りを繰り返すといった、設計者の育成が進まない原因となります。

 

さて、設計者の育成手順に戻りますが、(3)の部品設計を一定期間担当した次は、(2)の構造設計の見習いから経験させます。

 

この工程での能力向上の狙いは、(1)の工程設計に必要となる、何工程のプレス加工によれば安定的に製品を作れるか、ブランク工程をどうすれば品質の良い製品が作れるかなど、プレス成形性・加工性などを考慮できる能力を養うということになります。

 

また、品質の良い製品ができる工程で設計できたとしても、量産がはじまると金型は何年にも渡り継続的に使うものであり、金型部品は摩耗・消耗するため、そのとき製品寸法はどうなるかなど、他にも考慮することが多くあります。

 

したがって、単純に、金型組図を製図するだけでなく、「なぜそういった構造にしているのか」「なぜそういったプレスの工程分割をしているのか」などを考えつつ、自分の頭の中のフローチャートに落とし込んでいく必要があります。

 

このフローチャート化が、①符号化、②貯蔵、③検索ができる脳への仕込みになります。

 

設計人材育成の最後の手順が、(1)の工程設計の見習いを始めるということになります。

 

この工程を担当するということは、社内の量産部門や顧客担当者など、自部門以外の関係者とも接することになり、このときには、プレス加工や後工程である機械加工、トライ作業の知識など、幅広い知識が必要になるため、やはり浅くとも体系的な知識が必要になることは言うまでもありません。

 

さて最後に、設計の日程管理についてですが、よく金型の大日程計画に記載されている設計工程そのものの進捗が、若手設計者ほど遅れていく傾向がありますが、これをどうするかという視点でみていきたいと思います。

 

設計工程の日程管理を遅れなく進めていくためには、設計工程をできる限り細分化して進捗管理することが重要です。

まず前述した、(1)工程設計、(2)構造設計、(3)部品設計の3つに分けて日程計画を立てることは最低限必要ですが、さらにそれぞれの工程で細分化します。

 

例えば、(1)工程設計であれば、①曲げ・絞り工程の分割、②工程ごとの製品図作成、③展開ブランク図作成、④順送であればストリップレイアウト図作成、⑤寸法を入れて工程図を完成させるなど、個々の工程に細分化し、それぞれに期限を付けます。

 

こうして細分化された個々の目標地点のことをマイルストーンと言います。

 

このマイルストーンの設定により、精度の高い工数の見積もりができます。作業をざっくりと大きくまとめるほど、日程計画は大まかになり、計画日数は安全をみて増えていきます。

 

逆に、②の「工程ごとの製品図作成」や、⑤の「寸法を入れて工程図を完成させる」など、クリエイティブ性は高くない作業を洗い出すほど、工数は正確に見積もりしやすくなります。

このように設計工程を細分化し、それぞれ期限を付けたマイルストーンで上司や先輩設計者がフォローをすれば、先ほど挙げた若手設計者が抱える「何度も手戻りを繰り返す」といった問題に対処することができます。

 

この問題の抱えるロスとして、間違った設計にわざわざ時間をかけて作図・モデリングをし、その時間をかけた図やモデルをまた時間をかけて修正するということがありますが、経営者が最も嫌がるこの悪循環を最小化することができます。

 

つまり、個々のマイルストーンに期限を付けることで、正しい設計の順番を踏みながら、大きな方向性の違いやミスによる大規模修正のリスクを避けた進捗管理ができるというわけです。

 

最後に、こうした人材育成を自社で行うか、私のようなコンサルタントを活用するかという視点ですが、そもそも人材に必要な知識・技能は、下図のような体系図になっていると考えています。

金型設計に必要なスキル

実務で使っている知識・技能は、実はそれぞれの専門分野が重ね合わさったうえの限定されたものであり、企業ごとにベテラン社員さんが積み重ねて作ってきたものです。

しかしながら、たまたま上の図では、均一に重なっていますが、私が多くの企業を見た経験から言いますと、大抵かたよっているケースが多いです。

 

設計実務で経験を積ませて育てるとこれまで書いてきましたが、上図の重なっているところ(実務で使っている知識)を何回も経験しなければならないため、よく一人前になるには最低3年かかるとか、5年はかかるなど、抽象的な表現がされますが、企業ごとに扱っている金型種類の数も影響します。

毎回大きく異なる構造の金型を扱っていると、金型設計者の育成の観点では、反復効果が薄くなり、前述した、①符号化、②貯蔵、③検索の中の、①符号化と②貯蔵はなかなか進みません。

 

さて、コンサルタントは、上図で言うところのそれぞれの分野を体系的に順序よく教育していくためのカリキュラムを作るプロということになります。

これにより、多品種に対応できる(振り幅がある)応用力を身に付けることができます。

もちろん自社でカリキュラムを作ることができれば申し分ありません。それが本来あるべき姿です。

 

私の金型基礎セミナーもそのように、各専門分野を習得していただくような内容で構成しております。

金型基礎セミナー内容

 

私も金型設計に携わる一人の技術者として、あるべき手順で教育された金型エンジニアが一人でも多く育っていくことを願ってやみません。

 

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継続的に更新していく図面を、複数設計者で管理していく方法

データベースの運用

 

金型メーカーに限らず、機械装置メーカーなど、社内で継続的に、同じかアレンジした図面を継続的に使いまわしていく場合の管理方法について、みていきたいと思います。

ただし、前提条件として、複数の設計者で、管理・更新していく場合に限定します。

 

というのは、1人で管理していくのでしたら、他者に申し伝えることは必要ないので、自分のメモやWordかEXCELで管理するなど、自己管理だけで済むためです。

 

今回ターゲットとしているのは、例えば、ある機械装置を、別々の顧客ユーザー向けに、さらに別々の設計者がアレンジして設計し、それをまた更にアレンジ設計して使いまわしていくようなケースです。

 

この場合、一見、アレンジ設計した図面は、それぞれ個人の管理のように見えますが、例えば、社内で締結方法を統一したいとか、市販部品の種類や購入先を統一し、購買部門の効率化・ムダ削減を図りたいなど、企業として本来考えていかなければならない統一ルールを共有していかなければならない場合において必要となる運用方法について今回は対象としています。

 

実際に運用していく方法としては、テンプレート方式と、データベース方式の2つがあります。

まずは、テンプレート方式からみていきたいと思います。

 

テンプレート方式の場合

テンプレート方式は、顧客ごとや、製品ごとで、図面の種類がさほど多くない場合に採用します。

 

逆に、後述するデータベース方式は、仕様により管理する図面の種類が多いときに採用します。

 

具体的には、金型や機械装置ごとに、アレンジ設計の基礎となる図面(これをテンプレートを言います)を定義し、サーバーなどに保存しておき、設計者はそこからコピーして再利用設計します。

 

運用上、必要となるルールとしては、新たに採用したサブアセンブリや市販部品などがあれば、テンプレートに盛り込んで更新します。

 

ただし、それは誰でも好き勝手にやっていいというものではなく、社内でその作業が許されるテンプレートの管理責任者を選任するなど、そのテンプレートを再利用する設計者全員に編集権限を管理していくことが必要になります。

 

具体的にテンプレートを使って再利用設計する状況を考えてみますと、下図のようになると思います。

テンプレート運用についてのフローチャート

まず、テンプレートどおりで、そのまま流用できるのであれば、そのまま使いますし、例えば、その金型や機械装置の中で、以前よりロット販売などで安くなった市販部品などがあれば、その時点で変更しテンプレートを更新します。

 

もちろん、テンプレート図面の更新作業は許可制とし、権限がある設計者だけが行います。

 

次に、テンプレートどおりでは設計できない場合ですが、この場合はテンプレート図面を元に、アレンジして設計を行うことになりますが、これも好き勝手にアレンジして良いというわけではありません。

 

例えば、市販部品の使い方や、サブアセンブリ部品の寸法の決め方についても、一定のルールを設けなければ、自己流図面が社内にどんどん出来ていってしまいます。

 

そこで、上図に記されているように、「派生のやり方にルールが必要」となるわけで、ここで社内で統一された設計基準が必要になります。

通常、こうしたルールは、設計企画書とか設計標準書といった名称で、100ページとか200ページといったボリュームのものを各社作っております。

 

また、この設計標準書には、部品形状だけではなく、なぜそういった仕様を採用したのかについて説明が記載されている必要があります。いわゆる「設計意図」です。

これにより、各設計者のアレンジする設計意思のベクトルを統一することができます。

 

また、もし自社が外注設計を使っている場合には、この設計標準書を外注先にも横展開する必要があります。

 

では次に、データベース方式の方を見ていきたいと思います。

 

データベース方式の場合

データベース方式は、前述したように、顧客ごとや、製品ごとの仕様により、管理・保存する図面の種類が多いときに採用します。

 

具体的には、下図の事例のような流れの中で、共有するべき情報を管理していく際に採用します。

データベース管理方式

 

具体的な運用方法としては、設計者が自分の設計が終った時点で、どの親品番の図面を使ったか、またどのような変更を行ったかをデータベースに登録していきます。

データベースの運用

例えば、上図では、新たに派生品Dから派生品Hの図面をアレンジ設計しています。

そのときに、派生品FやGなど他の派生品で発生した、不具合の修正や、顧客ユーザーや組立て現場から上がってきた仕様変更の要望などを、派生品Hの図面に盛り込まなければならない場合があります。

 

そうした情報を、残らず新規の設計に盛り込んでいくため、各設計者は自分の設計が終った時点で、どのような変更・修正を行ったかをデータベースに登録していきます。

 

また、新たにアレンジ設計を行う際には、設計者は、過去にさかのぼって親品番とする派生品図面を検索し、その子や孫となる派生品図面に登録されている情報(過去に修正・変更した内容)を参照しながら、修正が済んだ最新の情報を盛り込んだ設計を行っていきます。

 

データベースは、このように活用しながら、複数の設計者で情報を共有していくために利用します。

 

この方式のメリットとして、図の一番上位にあるテンプレートというべき「マスター」図面について、基本的には、最新の状態に更新し管理していく必要がありません。

 

顧客ごとや、製品ごとの仕様により、管理・保存する図面の種類が多い場合には、テンプレート(マスター)を作っても、管理するべきテンプレート図面が多くなるだけで、せっかく更新しても、それぞれのテンプレートは使う頻度は少なく、手間をかけて管理するほどメリットがありません。

 

そこで、どの世代の派生品図面を使っても、最新の状態の情報を、別途データベースから参照することで、設計者全員が最新の情報を参照できる方法を採用します。 それがデータベース方式です。

 

データベースのテーブル設計としては、次のような構成になると思います。

 

登録ID 品番 サブアセンブリ名称(番号) 部品名称(番号) 変更履歴番号 親図面名称(番号)

コピーor再利用

変更内容 変更内容の参照画像リンク先 図面ファイル保存先 担当者 更新日

 

留意すべき点としては、検索する設計者が正しい情報にたどり着けるなど、検索性の良いデータベース設計に配慮することでしょう。

 

実際に運用がはじまると、データベースへの登録など間接工数は増える傾向になりますが、後工程である加工や組立てで発見される設計ミスの未然防止など、導入効果は部分最適ではなく、会社の全体最適で考えていくべきでしょう。

 

以上、複数設計者により、継続的に更新していく図面を社内で共有管理していく方法についてでした。

 

社内で、複数の設計者による自己流図面が増えすぎてお困りの企業さまは、ぜひお気軽にお問合せください。

 

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【業態別】金型設計における2次元設計、3次元設計、どちらが良いのか?

金型設計における2次元設計、3次元設計、どちらが良いのか?

 

こんにちは、金型・部品加工業専門コンサルティング代表の村上です。

 

私のクライアント先の金型メーカーさんでは、2次元で設計しているメーカーさんもあれば、3次元で設計しているメーカーもあり様々です。

 

そこで一体どちらがQCD(製造品質・コスト・納期)の視点で有利なのか、また金型を扱うメーカーさんにも様々な業態があり、どちらの設計方式が、どの業態に適しているのかまとめてみたいと思います。

 

まずそもそも、3次元設計のシステムが普及する前は、もちろん2次元設計で行われていたわけで、古くは手書きのドラフターの設計からになります。

ただし25年以上前、私が金型業界に入ったときには、すでに2次元のCAD設計は行われており、ドラフターの手書きとCAD設計の優劣の議論はあまり意味がないと思われますので、ここでは割愛したいと思います。

 

さて、2次元設計は、今でも多くの金型メーカーで行われており、自動車部品をはじめとして、3次元曲面の意匠面を有する金型においても、3次元加工のためのモデリングは行いますが、構造部は2次元設計という手法は、まだまだ多く使われております。

2次元設計の事例

 

この方式のメリットは、やはり作図自体の早さにあると思います。コンサルタントとなった私自身、今現在も金型メーカーさんのお手伝いということで、設計実務を行うこともあり、2次元設計も3次元設計いずれもやっておりますが、組図を作るところまでは、圧倒的に2次元設計の方が早いです。

2次元設計の組図の事例

 

あくまで組図の作成までだけなら感覚的に、3倍以上早いイメージがあります。

 

また、上死点の状態や、可動部品の動き方、言語によるコメント注記が入ることで、設計意図を相手に伝えやすいといった利点もあります。

 

企業の事業として、例えばプレスメーカーや成形メーカーに製造した金型を納める金型メーカーの場合、金型図面の承認をとらなければならない場合が多く、その際はやはり3DデータよりもDXFデータや紙図面など2次元図面が使われる場合が多いです。

 

そのため、もし3次元で設計すると、承認のため、その3Dデータを投影して作成した2次元図を作成し、寸法や注記などを記入する作業が余分に発生するため、プレスメーカーや成形メーカーの内製金型の製造ではなく、顧客が使う金型を作って納める純然たる金型メーカーでは、まだまだ2次元設計が採用されているという理由の一つがここにあります。

 

ただし、2次元設計のウィークポイントは、構造設計後の後工程にあります。

そもそも、2次元図は、平面図や側面図、正面図等から成っており、これを見て、立体的な形状をイメージできなければいけません。

 

これは、昨今の技術者に必要なレベルとしては、初級~中級くらいに相当する技能だと私は思っており、金型製造に携わるスタッフ全員がこの能力を備えるには厳しいと思います。

そうなると、2次元図面を読み解ける人しか作業できなくなるうえ、図面レビューや後工程の機械加工や組立工程にも支障をきたすかもしれません。

 

その点、3次元で設計された金型モデルは、立体的に回したり拡大して見ることで、ほぼ全ての人が構造や部品形状を理解することができます。

3次元設計の事例

 

また、コンカレントエンジニアリング(全ての工程を同時進行させる手法)の一貫として、金型構造設計が完了した時点で、個々の部品もモデリングが完了しているので、そのまま加工データの作成及び、機械加工に入ることができます。

2次元設計の欠点がここにありまして、組図からそのまま加工データ作成及び、機械加工に入ることが難しいです。

 

多くの金型メーカーでは、プレート分解という、一点一点個々のプレート部品や、構成部品を作図する作業を行ったのち、CAM作業に入っています。

 

ですから、まず2次元設計と3次元設計の優劣を語るうえで、承認のための組図作成までのリードタイムについては、2次元設計の方が圧倒的に早いことが挙げられます。

 

また、2次元設計後のプレート分解作業を助けるツールとして、個々のプレート図を作らなくても、組図からそのまま、一つ一つのプレートのCAMデータを作成できるソフトが市販されていますので、2次元設計を行っている金型メーカーでしたら積極的に使っていくべきかと思います。

 

これにより、2次元設計と3次元設計の優劣を語るうえで重要となる、最も早いリードタイムで、加工データ作成工程に渡すまでの設計作業を行うことができると思われます。

 

それともう一つ重要な視点があります。設計ミスへの防止策です。

3次元設計は、部品同士のつながりや重なりを立体的に確認できますので、複雑な構造の金型ほどミスの事前発見の確率は高くなります。

 

特に、ヒストリー型と呼ばれるパラメトリック方式の3次元CADでは、干渉チェックという部品同士の重なりや穴のあけ忘れなどを発見する機能があるため、ミスの未然防止効果は高いです。

 

こうしたミスの発見は、後工程の効率性に影響します。

 

また、金型設計において、今となっては無くてはならないくらい使用頻度が上がっているCAEソフトについても、そもそも3次元の型モデルがなくてはできません。これも3次元設計の大きなメリットの一つと言えます。

 

先ほども言いましたように、2次元設計と3次元設計の優劣においては、QCDのうちCDに影響するリードタイムについて2次元設計に分があると思います。

しかしながら前述したように、3次元設計は立体で表現できることでミスの未然予防・CAEの活用などができ、Qの視点では圧倒的に分があると言えます。結果的にCの視点での優劣はつけ難いと言えます。

 

したがって、顧客承認のための2次元図面が不要なプレスメーカーや成形メーカーの内製金型においては、3次元設計の方が大いにメリットを発揮できるかもしれません。

 

また、設計そのものの作業では、どうしても2次元設計の方が早いと思われますが、3次元設計の真髄は、後工程でいかにメリットを発揮するかという点にあります。

 

CAEの活用もその一つです。従来は手離れの悪い作業であった、トライ作業での金型修正を、設計段階のCAD内でやってしまおうという取り組みです。

 

更に、3次元設計のメリットとしてフィーチャー設計があります。これは個々の部品モデリングの際、機械加工を行う部位に加工属性を付与しておくことで、CAMデータ作成負担を減らす機能のことです。

 

例えばプレートの穴に、タップやリーマなどの加工属性を付与することで、後工程であるCAM作業では、わざわざオペレーターが操作しなくても、自動で加工プロセスや工具種類まで設定してくれます。

 

このように3次元設計は、①CAE活用、②フィーチャー設計、③コンカレントエンジニアリングといった3つの仕組みを行うことで、主に後工程の方でリードタイムを削減することができます。

 

これに取り組むことができるのであれば、積極的に3次元設計を採用すべきかと思います。

 

そうでない場合、いくらミスの未然防止などにより金型製作上の品質が高くても、リードタイムや金型の価格面で、2次元設計を行うメーカーに負けてしまうかもしれません。

 

最後に、プレスメーカーや成形メーカーとして内製金型も製作するが、他メーカーで使われる外部販売用の金型も製作するといった、内製・外製、両方の事業を行うメーカーの場合では、2次元設計と3次元設計、どちらがよいかという視点ですが、

 

外部販売用の金型は特に、同業他社や海外メーカーとの価格勝負になることが多いため、社内工程でのQの視点よりも、CDの視点を重視すべきかと思います。

 

したがって、社内の金型スタッフが職人揃いであって、3角法による2次元の組図を理解できるのであれば、2次元設計及び、プレート分解機能を持ったCAM活用のパターンが最も有利かもしれません。

 

ただし、内製金型の製作においては、進化を続ける3次元CADの恩恵を活かした3次元設計の方が将来的にもメリットを発揮していけると思われます。

 

したがって私の見解としては、外部販売用の金型と内製用の金型、それぞれによって、2次元設計と3次元設計を使い分けられるメーカーが最も競争力が高いと思われますが、私の知る限りではそういったメーカーは限りなく少ないと思います。

 

したがって、2次元設計と3次元設計いずれにおいても、それぞれのメリットを最大限発揮できるところまで、お持ちのCAD/CAMを使いこなすことが最善の策かと思われます。

 

また、それぞれの設計方法の短所についても、真摯に向き合い、つぶしていく改善の取り組みが必要です。

 

例えば、2次元設計ではあれば、3次元設計に比べてどうしてもミスの発生確率が高くなります。

ミスの多くなるところとして例えば、平面図・正面図・側面図で共通して表現する部品や形状の干渉や矛盾などがあります。こういったところを重点的に、デザインレビュー工程ではチェックすべきでしょう。

 

3次元設計の短所としては、2次元設計では省略・簡略できる部位も、全て表現してモデリングしなくてはいけないなど、どうしても2次元設計よりも工数は多く掛かります。

 

そこで、市販部品の自動配置といった自動モデリング機能を積極的に活用するなど、後工程でのリードタイム削減のみならず、設計作業の中で工数削減を図る改善は、継続的に行っていくべきでしょう。

 

こうした日々の取り組みが、昨今ますます厳しくなる金型業界で、勝ち抜いていく競争力の源泉になります。

参考になれば幸いです。

 

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型技術2018年3月臨時号コラム「金型加工用NCデータ作成における省力化のポイントと実例」

 

今回は金型製作における機械加工用NCデータ作成の省力化をテーマに執筆させていただいた。NCデータとは主に、NCフライス、マシニングセンター、ワイヤー放電加工機、型彫り放電加工機などを動かすための動作プログラムを指す。

 

このNCデータ作成作業においては、工作機械に直接人間が打ちこむ場合もあるが、近年CAD/CAMを使うことが多くなった。したがって今回、CAD/CAM作業を前提にした省力化を中心にまとめている。

 

今回、NCデータ作成の省力化にあたり、金型製作における様々なNCデータ作成の状況に応じ、どのようなアプローチで省力化を図っていくべきか、またそれを実現するソフトウェア技術にはどのようなものがあるかなど、実際に運用している企業の事例を織り交ぜながら紹介していきたい。

 

状況に応じたNCデータ作成作業のパターン

まずは、普段行われているNCデータ作成作業のパターンを整理してみよう。

 

パターン

ここ数年、多くの金型メーカーで取り組まれている3次元の金型設計も、かつては2次元設計であったことから、現場に提供されていたのは、紙仕様の金型図面や部品図であった。

 

これにより現場では、金型構造部を構成するプレート類の加工について、紙の図面を見ながら工作機械に直接プログラムを打つか、2次元用のCADデータであるDXFデータを設計担当からもらい、2次元用CAD/CAMにそのデータを取り込み、NCデータを作成していた。今も2次元設計が主体の金型メーカーは、このパターンで作業している。

 

パターン

また、金型構造部は2次元設計であっても、例えばプラスチック成形金型やダイカスト金型における製品意匠面の機械加工においては、立体的な自由曲面に対応できる3次元加工が必要になるため、意匠面のあるキャビ・コアの3Dモデリングを行い、3次元CAD/CAMを使ったNCデータ作成を行う。それ以外の構造部(主にプレート類や小物部品)は、紙図面や2次元CAD/CAMを使ったNCデータ作成を行っている。

 

パターン③

近年、金型構造部においても設計の3次元化が普及してきたため、上記パターン①②とは異なり以下のような方法がとられている。

 

  • 金型全体設計は3次元で行うが、各部品については、加工現場で従来の手順が踏めるように2次元図面を作図するパターン。金型全体図は3次元データで現場に提供するか、もしくは紙図面で作図する。NCデータ作成作業については、前述したパターン①②とほとんど手順は変わらない。プレート類や小物部品については、従来の2次元加工の手順で行い、自由曲面が存在する金型意匠面についてのみ、3次元CAD/CAMを使ってNCデータを作成する。
  • 金型全体設計は3次元で行い、加工現場に対しても3次元データで提供するパターン。この場合、現場で扱うCAD/CAMは3次元に対応している必要がある。このパターンは、主に金型メーカーから、他の機械加工業者に加工依頼する場合にとられることが多い。この場合のNCデータ作成作業において加工現場は、2次元図面に変換するか、3次元モデルのまま扱うかで手順は異なる。2次元図面に変換した後の手順は、前述したパターン①②と同じである。しかし、3次元モデルのままNCデータを作成する場合では、Z方向の情報を人間が手入力しなくて済む。
  • 金型構造部の設計を行う際、設計者がボルトやノックピンなど標準部品を配置する場合に、穴加工や切削加工などの加工属性まで割り付ける「フィーチャー設計」を行うパターン。
    このパターンは、金型メーカーの社内プロセスにおいて、設計と加工現場で同じCAD/CAMを使用している場合にとられることが多い。

 

省力化で取り組むべきこと

ここまで色々なNCデータ作成のパターンをみてきたが、それぞれの作業パターンにおいて、省力化のために取り組むべきことを見ていこう。

 

パターン①(2次元の紙図面もしくは、2次元CADデータでNCデータ作成する場合)

このケースにおいては、目新しいソフトウェアの機能開発も少なくなってきているが、パターン③に出てきた3次元のフィーチャー設計は、2次元設計でも行うことができる。

具体的には金型構造設計の際に、キャップボルトやノックピンなどの標準部品を平面図に配置すると、例えばプレス金型であれば、ストリッパー、パンチプレート、バッキングプレートなど、各階層のプレートそれぞれに加工定義(タップやキリ穴、ザグリ穴など)が付与される。またその部品と加工に対応した断面図が、側面図や正面図などに自動作図される。

 

こうした機能を使うことで、改めて加工現場にてゼロからCAM定義を行うことなく、加工担当者は加工ワークの向き、加工原点の設定、加工定義の調整などで済む。

 

CAM上の加工定義においては、従来手作業で行っていた操作を可能な限りマクロ化することが望ましい。また、操作マクロや加工条件を担当者間でシェアすることで、全体の効率化につながる。

 

パターン②(プレートや小物部品は2次元加工、金型意匠面のみに3次元加工を行う場合)

プレートや小物部品に対する2次元加工の省力化の方向性は、上記のパターン①と同じである。

 

金型意匠面に行う3次元加工のCAM作業省力化については、まずはやはりマクロ化は必要である。

例えば、荒取り→部分荒取り→中仕上げ→仕上げ加工→狭小部の削り残り加工といったプロセス・使用工具・加工条件は、標準化できることが多く、データ作成の都度定義するのは時間の無駄と言える。

それぞれのCAMが実装している加工プロセスの保存と呼び出し機能をフル活用すると共に、最も安定したプロセス・条件を社内でシェアするべきである。

 

また、かつては3次元加工のCAM作業において、前工程で仕上がっている面に工具軌跡を触れさせたくない、凸のピン角形状にダレを発生させたくないといった理由から、本来の加工形状にはない、工具軌跡を制限するためだけの、通称ダミー面と呼ばれる一種の蓋のような役目をする形状を作成しながらNCデータ作成することもある。しかし近年、CAMによってはダミー面と同等の機能もあり、活用したいところである。

 

パターンケース(イ)(金型設計から3次元設計を行い、加工現場に3Dモデルで渡す場合)

この場合において、2次元CAMを使ってデータ作成を行う場合は、3次元モデルを一旦2次元の状態に変換しなければならない。NCデータ作成省力化のためには、こうした事前準備を迅速に行うことも重要である。

 

3次元に対応できるCAMを使って2次元加工を行う場合、CADモデルをCAMに取り込む際、フィーチャー設計に近い状態で取り込むことができれば、人の操作で行う加工定義を省力化することができる。

例えば、モデル上の各面の色で加工種類を認識する機能がある。穴であれば、タップ穴やリーマ穴の認識などがあり、ポケット加工などのエンドミル加工においては、▽の粗い加工面で良いのか、▽▽や▽▽▽の仕上がり面まで必要なのかの認識がある。

 

パターンケース(ウ)(金型設計で3次元のフィーチャー設計を行う場合)

この場合のプレート類の加工においては、最も省力化できる余地が大きい。

 

フィーチャー設計された部品のCADモデルを受け取った加工現場のCAM上では、各プレートをフィーチャー認識させると、例えば穴加工であれば、タップ穴やリーマ穴など穴種類をモデルから認識させることができ、センター穴→ドリル穴→タップ加工といった、連続した加工プロセスが自動で定義される。

こうした機能を使うことで工数削減はもちろん、現場での加工ミスや漏れを減らすことも可能になる。

 

取り組み指針に沿ったCAM機能の選び方

では、先ほどまで挙げてきた「省力化で取り組むべきこと」を実現するCAD/CAMの機能にはどのようなものがあるのか、具体的にみていこう。

 

2次元設計でのフィーチャー設計機能(パターン①での対応)

2次元設計の効率性と3次元モデルの利便性を合わせ持ったシステムとして、(株)C&Gシステムズ社のEXCESS-HYBRIDⅡが知られている。こちらのCAD/CAMを使用することで2次元ベースのフィーチャー設計が可能になる。

その他には、キャムタス(株)社のSpeedy mill/winの「プレート分解」機能などが使われている。

 

フィーチャー設計の導入にあたり使用するCAD/CAMを選ぶ際には、運用までの立ち上がり期間をできる限り短縮できるソフトを選ぶべきである。

筆者が聞く限り、フィーチャー設計に取り組んだ全ての企業がうまくいっているわけではない。うまく立ち上がらずに、従来の方法に戻ってしまうことも少なくない。

失敗する理由の多くが、運用前のデータベース登録作業の大変さがあり、普段の金型業務と並行しながら行わなければならない場合が多い。

 

そこで、CAD/CAM選定にあたっては、①販売ベンダが深い金型の知見をもっていること、②ミスミ部品など初期設定で大半のデータベース登録が済んでいるといった要件を満たすシステムを選ぶべきである。

 

試作板金と量産用プレス金型の外販を両立し事業を行っているユーアイ精機株式会社(愛知県尾張旭市 TEL0561-53-7159)では、EXCESS-HYBRIDⅡを駆使し、3次元でモデリングする製品意匠面と、2次元で加工する金型構造部をそれぞれ切り分け、効率的なNCデータ作成を行っている。協力メーカーに設計を外注する際も、同じEXCESS-HYBRIDⅡを持つ金型メーカーに依頼しデータベースを共有することで、フィーチャー設計システムを活かせる外注政策をとっている。

 

3次元CAMでの省力化(パターン②での対応)

  • 加工プロセスの保存・呼び出し

3次元CAMでの省力化においては、まず加工プロセスの保存・呼び出し機能は活用したいところである。筆者が使っているOPEN MIND社のhyperMILLにおいては保存した加工プロセスを呼び出すことで、加工対象のモデルを変えても、使用工具・加工条件・加工定義(等高線荒取り・走査線仕上げ加工など)を使いまわすことができ、迅速なCAM作業を行うことができる。

こうした機能を使い、被削材種、ワークサイズ・特徴、部品種類によって、保存プロセスを多数用意しておき、CAM作業者間でシェアすることが望ましい。

 

筆者がサポートさせていただいた(株)瑞木製作所(愛知県尾張旭市 TEL 052-771-8410)では、AUTODESK社のHSMWorksを使用しているが、このCAMは荒取り加工パスに定評があり、加工に関する細かなパラメーター調整ができる点も特徴である。

 

半面、部品によって細かく定義されたパラメーターや、同社が扱う航空機部品に多い薄肉形状の加工においては、膨大な数の加工プロセスになることも多いが、CAM作業の都度、新たに定義していては、加工条件のばらつきリスクはもちろん、作業時間のロスも大きい。

そこで同社は、HSMWorksのプロセス保存機能を活用し、効率的なNCデータ作成作業を行っている。

 

  • ダミー面作成作業を無くす

ダミー面の作成については、古くから当たり前の作業として行われてきたが、その作業を不要にできる機能がCAMに実装されている。 筆者の経験では、(株)牧野フライス製作所のFFCAMが持つ「パス作成補助機能」が便利であった。

 

例えば、加工するワークと同じサイズでモデリングされた3Dモデルを加工現場が受け取った場合、加工軌跡を若干はみ出させたいときがあり、こうした際に使えるパスの「延長」機能や、3Dマシニング加工の前工程、例えば研削加工などで仕上がっている面に触れさせないパスを「面から離す」機能などがある。

 

また、モデル上は凸のピン角になっていても、工具の加工軌跡が円を描き、ダレができてしまう部位においても、きれいなピン角が出せる加工軌跡が出力できる「等高線角だし・投影角だし」機能がある。

 

3次元設計データを他システムで扱う場合の省力化(パターン③ケース(イ)での対応)

2次元CAMを使用する加工現場において、3次元CADデータを受け取った場合、(A)三角法による2次元図面に変換する、(B)2次元図面に変換することなくCAMに取り込みデータ作成作業を行うといった方法があるが、やはり(B)の方法が省力化には望ましい。

 

筆者も使用している(株)エリジオン社の2次元CAD/CAMキャメストには、「3D活用エンジン」という機能があり、3次元CADモデルをDXFデータなど2次元用のCADデータに変換することなくそのまま取り込むことができ、CADモデルが持つ面の色情報、Z深さ情報などをダイレクトに加工定義に反映させ、CAM作業の大部分を省力化することができる。

 

また設計からのCADデータを、加工現場が3次元データで受け取り、3次元のCAMでNCデータ作成を行う場合、キャメストの3D活用エンジンのように、モデルの面の色情報、穴やポケットなどの深さ情報を、ダイレクトにCAMに反映させることができれば、作業の省人化につながる。

 

hyperMILLには、フィーチャー認識機能があり、マクロ機能と併用することで、3Dモデルを取り込んだ状態から、プレートに必要な加工定義を一気に自動で作らせることができる。現状の機能では、ポケット加工などエンドミル切削については、狙いの表面粗さに応じた加工手順まで完全に自動で反映させることは難しいが、穴加工については設定次第で、かなりの自動化を行うことができる。

図 hyperMILLによるフィーチャー機能を使用したところ

 

3次元設計でのフィーチャー設計機能(パターン③ケース(ウ)での対応)

3次元設計の本来のメリットを出すことは、設計作業単体だけでは難しく、後工程、特にデータ作成やトライ作業を設計段階に取り組むことで効果を発揮できる。

 

3次元のフィーチャー設計を行うことの加工現場でのメリットは、2次元のフィーチャー設計と同様に、加工定義が済んだ状態でCAM作業に入れる点である。残る加工現場の作業としては、実際に加工するワークの向き、加工原点、実際に使用する機械に応じた工具設定・加工定義の調整などで済む。

 

筆者がコンサルティングを行っている株式会社 建和(愛知県安城市 TEL 0566-92-6295)では、ペーパーレスの3次元設計のメリットを最大限に活かしたフィーチャー設計を行っており、プレス金型において、特にリードタイム短縮にこだわった取り組みを行っている。

 

まとめ

ここまでNCデータ作成における省力化の例をみてきたが、CAM作業はいかに効率化できても、実際に加工した金型自体が必要品質を確保できてようやく要件を満たすことができる。

そのためには、被削材の種類や使用工具、加工に使う工作機械、加工形状・クランプ状態など、様々な要因がからみ、従来は加工技術者の判断なくしては対応ができなかった。

 

しかし一気に全部ではないが、それらのノウハウは徐々にデータ化され、標準化されてきている。例えば、Mashining cloudやcim sourceといったインターネットを介したサービスでは、加工形状、被削材、加工プロセスに応じた推奨工具と条件をダウンロードできる。

 

こうしたサービスによって、従来技術者の経験によって蓄積されてきた「引き出し」も、公開された情報として標準化されていくのかもしれない。

 

こうした知識・情報の標準化やCAMの機能向上によるNCデータ作成の省力化が進んでも、筆者も含め、加工技術者の個性は発揮できるよう切磋琢磨していきたいところである。

 

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